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8-5(夏樹視点)
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19時。
旅館の部屋で晩ご飯を食べているところだ。畳の部屋で広いテーブルの前に腰かけている。この和風のスタイルが好きだ。おまけに運んでもらえて、片付けまでしてもらえるという贅沢が味わえる。外食でも同じだが、家の中にいるように感じるから気持ちが違う。
お風呂に入っている時は、黒崎のイヤらしさが発揮されて呆れ返った。せっかくの旅行だからと、早めに機嫌を直してやった。
テーブルには、伊勢エビ、鯛のお造り、ハマグリと筍料理、たくさんの小鉢が並んでいる。海産物が好物だから、幸せな時間を過ごしている。
「山椒ジャコが美味しいよ。ご飯と合うよ」
「そうか」
「あっさりしてるよ。どれも美味しいなあ。タケノコが一緒だと食感が変わるから、飽きなくていいね。出汁も染みているよ。この甘鯛が……、伊勢エビも……」
「喜んでもらえてよかった」
「もう酔っているの?」
「いや……」
「そうかな?」
黒崎の目が熱っぽい。イヤらしいことを考えているのだろう。さっきから浴衣の襟元にばかり、視線が向けられている。動くたびに視線も動いている。
黒崎のそばにはビール瓶が並んでいる。あっという間に何本も飲んでしまった。これ以上は飲まないと言っている。食べた後は出かけるからだ。
(お風呂であんなエロ発言がなかったらなあ……。黒崎さんらしいけど。元気な証拠だよね……)
俺の理想はこうだ。温かな照明の部屋のなかで、寄り添って庭を眺める。ヒラヒラと雪が降ってくるものいい。シンと静まり返った中、何も語らずにいる。自然と見つめ合い、唇を重ねる。しかし、現実はこうだ。黒崎が隣に座った。そして、ビールを飲みながら、浴衣の襟元に触れてきた。
「また機嫌を損ねるよー?」
「浴衣が似合っている」
「さっきまでショゲていたよね~?」
「お前が言うところの『諸行無常』だ」
「人は常に移り変わる。あの時の俺はあの時の俺であって、今の俺じゃないってことだよね?」
「出会ったばかりの頃にお前から教えてもらった。可愛らしかった」
「ブレないオジさんだね。……黒崎さんっ。変なところに触るなよ~っ」
「……圭一だ」
「少しずつだよ~~」
「黒崎さんは居なくならない。圭一と呼んでくれ」
「黒崎さん……」
「練習をしていこう。食べ終わったか?少し休んでから出かけよう」
「うんっ。ああ、もう……っ」
黒崎がスケベじじいを消して、素敵な笑顔を浮かべた。胸をキュンとさせていると、腰を撫でてきたから蹴ってやった。そこへ、仲居さんが次の料理を運んできた。
黒崎が料理の感想を話しながら、さり気なく気遣う言葉を出したものだから、向こうが嬉しそうにした。こういうところを見ると、凄いなと思う。とても優しい。調子に乗られるから黒崎の方は見ないようにして、自分もお礼を伝えた。
旅館の部屋で晩ご飯を食べているところだ。畳の部屋で広いテーブルの前に腰かけている。この和風のスタイルが好きだ。おまけに運んでもらえて、片付けまでしてもらえるという贅沢が味わえる。外食でも同じだが、家の中にいるように感じるから気持ちが違う。
お風呂に入っている時は、黒崎のイヤらしさが発揮されて呆れ返った。せっかくの旅行だからと、早めに機嫌を直してやった。
テーブルには、伊勢エビ、鯛のお造り、ハマグリと筍料理、たくさんの小鉢が並んでいる。海産物が好物だから、幸せな時間を過ごしている。
「山椒ジャコが美味しいよ。ご飯と合うよ」
「そうか」
「あっさりしてるよ。どれも美味しいなあ。タケノコが一緒だと食感が変わるから、飽きなくていいね。出汁も染みているよ。この甘鯛が……、伊勢エビも……」
「喜んでもらえてよかった」
「もう酔っているの?」
「いや……」
「そうかな?」
黒崎の目が熱っぽい。イヤらしいことを考えているのだろう。さっきから浴衣の襟元にばかり、視線が向けられている。動くたびに視線も動いている。
黒崎のそばにはビール瓶が並んでいる。あっという間に何本も飲んでしまった。これ以上は飲まないと言っている。食べた後は出かけるからだ。
(お風呂であんなエロ発言がなかったらなあ……。黒崎さんらしいけど。元気な証拠だよね……)
俺の理想はこうだ。温かな照明の部屋のなかで、寄り添って庭を眺める。ヒラヒラと雪が降ってくるものいい。シンと静まり返った中、何も語らずにいる。自然と見つめ合い、唇を重ねる。しかし、現実はこうだ。黒崎が隣に座った。そして、ビールを飲みながら、浴衣の襟元に触れてきた。
「また機嫌を損ねるよー?」
「浴衣が似合っている」
「さっきまでショゲていたよね~?」
「お前が言うところの『諸行無常』だ」
「人は常に移り変わる。あの時の俺はあの時の俺であって、今の俺じゃないってことだよね?」
「出会ったばかりの頃にお前から教えてもらった。可愛らしかった」
「ブレないオジさんだね。……黒崎さんっ。変なところに触るなよ~っ」
「……圭一だ」
「少しずつだよ~~」
「黒崎さんは居なくならない。圭一と呼んでくれ」
「黒崎さん……」
「練習をしていこう。食べ終わったか?少し休んでから出かけよう」
「うんっ。ああ、もう……っ」
黒崎がスケベじじいを消して、素敵な笑顔を浮かべた。胸をキュンとさせていると、腰を撫でてきたから蹴ってやった。そこへ、仲居さんが次の料理を運んできた。
黒崎が料理の感想を話しながら、さり気なく気遣う言葉を出したものだから、向こうが嬉しそうにした。こういうところを見ると、凄いなと思う。とても優しい。調子に乗られるから黒崎の方は見ないようにして、自分もお礼を伝えた。
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