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14時。
IKUの会議室にいる。今、バンドのプロジェクトの打ち合わせが進められている。長方形のデスクが配置されて、俺と悠人、佐久弥が並んで座っている。
遠藤さんが向かいに座り、長谷部さんが俺達のそばにいる。統括マネージャーの飯野さんをはじめ、高宮プロデューサー、ヘアメイクのマネージャーも席に着いている。大勢の人がいるのに閉塞感も緊張感もない。リラックスした空気だ。
悠人には早瀬さんが付き添っている。まだ10代だから、保護者の同伴が欲しいとIKUから要望されて、両親よりも適任だからと、久田さんから頼まれたそうだ。俺の方は20歳になっているが、保護者が2人も同席した。黒崎はメモを取りながら静かにしている。お義父さんからは笑顔で見守られている。スタジオ練習や今回の打ち合わせ等、初日は必ず同席すると言われた。お義父さんからは、事前に事情を聞かされた。
(……IKUのことは信頼している。ただし、君たちに悪意を持って声をかけてくる者が、必ず出てくる。ライバル側の関係かもしれないし、事件に関係するものかもしれない。私は付き添っていれば、周りが君たちを囲む。ビジネスの世界のネットワークは広い。……嫌な面を見せたね?)
(ありがとう。お礼しか言えないよ。……本音では遠慮があるよ?いつもそうしてもらうわけにはいかないって)
どこへ行っても黒崎家の息子として接される。チヤホヤされる一面もあるだろうと言うことだ。しかし、いったん表に出ると、反対のことが起きる。良くないことだそうだ。それも言い聞かされた。
さっそく、周りの人がこんなことを話しているのを聞いた。ディアドロップを担当していた制作会社の人達だった。
(黒崎家の息子さんがデビューする。どこまでやれるだろうな。さすがの佐伯さんでも黒崎家の影響を受けたのか。TAKAさんの騒動があった。プロジェクトを成功させたいからなあ。……久田君!高宮プロデューサーがお越しになる。どこか食事に行くのか?……黒崎君は歌が上手いなあ。久田君のギターが佐伯さんの……、さすがだね。ところで、久田君。植村さんとは会っているの?)
あの場に悠人もいたのに、俺のことを普通に話していた。そこで話を振られて悠人が悲しそうな顔をした後、瞬時に頭を切り替えていた。笑顔を見せていた。偉いと思った。俺のことは話題に出されたのに、悠人のことには触れていなかった。遠藤社長の存在があるからだ。
あの後、悠人から手を引かれて外に出た。自販機の珈琲を買い、大学のレポート課題の話をした。あの事には触れずに。通じ合っている。これからは人が見ていないところで泣いて、自分自身で気を取り直して現場に戻る。社会に出るのが怖いと思ったことを、素直に認めた。
「……遠藤社長からは以上です」
「……夏樹君。OKかな?」
「……はいっ」
「……悠人君は?」
遠藤さんから返事を促されて、悠人が手元の資料を取り出した。ペンを走らせていた個所を読み上げて、聞きたいことがあると言った。
「お聞きしたいことがあります。この条項のことですが。アイアンエンジェルとして、友人が開いたライブへ出演したいんですが、契約違反になりませんか?」
「それはならないよ」
「軽めの活動は可能ですよね?それは自分には曖昧なんです」
「そうか。もっと詳しく説明させてもらうよ」
すごいな。心の中でため息をついた。悠人が先に進んでいるからだ。法学系の授業で習ったことが役に立っている。知識だけで活用が出来ていない俺なのに、悠人は活用しているし、大人ばかりの中にいても臆することなかった。
IKUの会議室にいる。今、バンドのプロジェクトの打ち合わせが進められている。長方形のデスクが配置されて、俺と悠人、佐久弥が並んで座っている。
遠藤さんが向かいに座り、長谷部さんが俺達のそばにいる。統括マネージャーの飯野さんをはじめ、高宮プロデューサー、ヘアメイクのマネージャーも席に着いている。大勢の人がいるのに閉塞感も緊張感もない。リラックスした空気だ。
悠人には早瀬さんが付き添っている。まだ10代だから、保護者の同伴が欲しいとIKUから要望されて、両親よりも適任だからと、久田さんから頼まれたそうだ。俺の方は20歳になっているが、保護者が2人も同席した。黒崎はメモを取りながら静かにしている。お義父さんからは笑顔で見守られている。スタジオ練習や今回の打ち合わせ等、初日は必ず同席すると言われた。お義父さんからは、事前に事情を聞かされた。
(……IKUのことは信頼している。ただし、君たちに悪意を持って声をかけてくる者が、必ず出てくる。ライバル側の関係かもしれないし、事件に関係するものかもしれない。私は付き添っていれば、周りが君たちを囲む。ビジネスの世界のネットワークは広い。……嫌な面を見せたね?)
(ありがとう。お礼しか言えないよ。……本音では遠慮があるよ?いつもそうしてもらうわけにはいかないって)
どこへ行っても黒崎家の息子として接される。チヤホヤされる一面もあるだろうと言うことだ。しかし、いったん表に出ると、反対のことが起きる。良くないことだそうだ。それも言い聞かされた。
さっそく、周りの人がこんなことを話しているのを聞いた。ディアドロップを担当していた制作会社の人達だった。
(黒崎家の息子さんがデビューする。どこまでやれるだろうな。さすがの佐伯さんでも黒崎家の影響を受けたのか。TAKAさんの騒動があった。プロジェクトを成功させたいからなあ。……久田君!高宮プロデューサーがお越しになる。どこか食事に行くのか?……黒崎君は歌が上手いなあ。久田君のギターが佐伯さんの……、さすがだね。ところで、久田君。植村さんとは会っているの?)
あの場に悠人もいたのに、俺のことを普通に話していた。そこで話を振られて悠人が悲しそうな顔をした後、瞬時に頭を切り替えていた。笑顔を見せていた。偉いと思った。俺のことは話題に出されたのに、悠人のことには触れていなかった。遠藤社長の存在があるからだ。
あの後、悠人から手を引かれて外に出た。自販機の珈琲を買い、大学のレポート課題の話をした。あの事には触れずに。通じ合っている。これからは人が見ていないところで泣いて、自分自身で気を取り直して現場に戻る。社会に出るのが怖いと思ったことを、素直に認めた。
「……遠藤社長からは以上です」
「……夏樹君。OKかな?」
「……はいっ」
「……悠人君は?」
遠藤さんから返事を促されて、悠人が手元の資料を取り出した。ペンを走らせていた個所を読み上げて、聞きたいことがあると言った。
「お聞きしたいことがあります。この条項のことですが。アイアンエンジェルとして、友人が開いたライブへ出演したいんですが、契約違反になりませんか?」
「それはならないよ」
「軽めの活動は可能ですよね?それは自分には曖昧なんです」
「そうか。もっと詳しく説明させてもらうよ」
すごいな。心の中でため息をついた。悠人が先に進んでいるからだ。法学系の授業で習ったことが役に立っている。知識だけで活用が出来ていない俺なのに、悠人は活用しているし、大人ばかりの中にいても臆することなかった。
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