夏椿の天使~あの日に出会った旋律

夏目奈緖

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 どのくらい時間が経っただろうか?ピアノ演奏をしている間、夏樹が理久のことを手伝いに行った。それから後は音沙汰なしだ。先に悠人がキッチンに探しに行った。家の中にいるからと思って油断していた。何かあったのだろうか。

「なつきーー。あれ?どこかな?」
「理久と夏樹がいないぞー?どこだーー?」
「なつきー。りくー?あああ……。寝転がっているよー」

 キッチンカウンターのそばで、2人が寝転がっていた。真っ赤な顔をしている。テーブルには湯呑みと甘酒製造機が置かれている。わずかに酒の匂いがすることから、甘酒を飲んで酔ったのだと察した。

 夏樹は酒に弱い。理久もそうなのだろう。佐久弥が追いかけてきて、2人に水を飲ませた。よく加熱すればアルコール分は飛ぶというが、今回はそうではないらしい。

「さくやー。甘酒は子供でもOKだよね?」
「加熱すれば、アルコール分が飛ぶ。加熱が足りなかったんだろう」
「ふむふむ。そうなのか。真っ赤だよー」

 2人の顔が真っ赤だ。しかも、酔って笑い声を立て始めている。水を飲ませて首筋を冷やし、足元を温めた。するとだんだんと顔色が戻ってきて、動き方も普段通りに張った。さらに様子を見ることにした。

 佐久弥が電話で家に迎えを呼んでいる。相手は母親だという。理久から渡された、我が家への土産のサエキ酒造の品物には、母親からの手紙が添えられており、息子2人がお世話になっていますと書かれていた。それを読んで温かい気持ちになり、この騒動を眺めた。佐久弥が夏樹のことを介抱している。

「なつきー。ごめん!もっと注意するべきだった。具合はどうだ?」
「佐久弥……。そんな顔をしてないでよ。話していたら甘酒がすすんで……、飲み過ぎたよ~」

 早瀬が濡れタオルを交換し、俺は白湯を用意した。夏樹のことを抱きかかえて湯呑を口に含ませた。
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