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19時。
打ち上げパーティーが始まった。ステージに立ち、自分達の挨拶の番になるのを待っている。遠藤さんがスピーチを続けている姿を見て、なるべく気持ちを落ち着かせようとした。しかし、近所で会っている姿ではなく、偉い人にしか見えないから、ますます緊張した。
「……黒崎さんは佐伯さんの左側に立ってください」
「……はい」
ザワザワとした会場が静まり返った。遠藤社長の挨拶が終わり、監督プロデューサーとプロダクションマネージャーのスピーチへ進んだ。簡潔に終わり、すぐに順番がきてしまった。この後、佐久弥、俺、悠人へと続く。出来るだけ短く感謝の気持ちが伝わるようにしたい。会場入りした際には、たくさんの人と挨拶をかわした。この中に知り合った人もいる。
「当社所属アーティストより、ご挨拶申し上げます。佐伯久弥より……」
まずは佐久弥の挨拶だ。彼がマイクの前に立つと、出席者から大きな拍手が贈られた。
「……佐伯久弥です。……お力添えいただいたおかげです。……ボーカルの黒崎、ギターの久田より、ご挨拶申し上げます。……夏樹、リラックスしろよー」
佐久弥の挨拶が終わり、マイクを手渡された。緊張するのは当たり前のことだ。気持ちを伝える、それが何よりも大事なことだ。すっかり忘れていたようだ。
すうっと深呼吸をして、ジャケットの内ポケットからスピーチ原稿を取り出した。読みながらだと失礼だと思うから、手元に置く感じだ。黒崎のスピーチをイメージした。インターンシップ参加での経験を生かせるだろう。
いざ始めようとすると、会場から笑いが起きていることに気づいた。まだ未熟な自分だ。可笑しいところがあるのだろう。それでもいいから感謝を伝えよう。
パチパチパチ!
「……このたび、Visible ray の、ボーカル職を拝命いたしました黒崎です。……これも、皆さまのご支援の賜物だと思っております。本当に心から感謝申し上げます。……ボーカル職という任を命じられたからには、自分一人の活動というわけにはいかず、……重責を担うことになり、身の引き締まる思いです。……なにぶん初めてのプロ活動、ボーカル職で、皆さまにはご迷惑をかけてしまうかもしれませんが、力の限りを尽くす決意です。どうぞお力添えのほど、よろしくお願いいたします。……ギタリスト職を務めます、久田よりご挨拶を申し上げます」
パチパチパチ!!
これでよし。気持ちを伝えることが出来た。会場内からは笑いが起きている。やっぱり何か変なところがあったのだろう。この後で聞いて、次に生かせばいい。
悠人にマイクを渡した。あああ……という、緊張した顔をしている。大丈夫だぞ。悠人の目を見つめて頷いた。彼がマイクを握って挨拶を始めると、可愛いという声が飛び交った。良かったと、胸をなで下ろす心地で見守った。
「……続きましては。……ワインとビール、ソフトドリンクをご用意しております。ご歓談ください」
パチパチパチ!
かっこいいぞーーー!
自分たちの挨拶が終わった。大きな拍手に送られて、ステージサイドに戻った。すると今度は、待機しているスタッフさん達や、長谷部さんまで大笑いをしていた。その反対に、悠人が沈み込んでいる。それを、佐久弥が大笑いして励ましている。何が起きたのだろう?
「夏樹みたいなスピーチを考えてなかったんだーー!社会人失格だよーーっ」
「ぎゃははーー、それは違うぞーー」
「……何か変でしたか?」
こんなに注目しなくてもいいだろう?はっきり教えてほしいのに。可愛い、面白い、さすがは5人斬りと、周りからはやし立てられている。不快なものではなく、動物園の動物になった気分だ。
どんどん顔が熱くなり、ズボンに差してあった、うちわで顔を扇いだ。すると、さらに笑い声が大きくなった。何をやっても笑われる。すごすごと、隅の方に移動した。すると、すぐに遠藤さんと佐久弥がやって来た。フォローするよと言ってくれた。
「夏樹君のスピーチが、丁寧で素晴らしかったからだよ。インターンシップで習ったのかい?」
「はい。黒崎さんの、常務取締役の挨拶をイメージしました」
「ははははは」
「なつきー、おまえ……」
「蓮司くーん!黒崎さんを呼んでやってくれ。早瀬君も!悠人君が落ち込んでいるから。……ステージに影響がある」
遠藤さんが佐久弥のマネージャーの蓮司さんに声をかけて、黒崎と早瀬さんを呼ぶように頼んでくれた。呼んでくれるのは有難いが、笑いながらだった。悠人と2人で寄り添うようにして、黒崎たちが来るのを待った。隅っこで佇みながら。会場内は乾杯の音頭が取られて、みんなで乾杯していた。もちろん俺達もジュースで乾杯した。
打ち上げパーティーが始まった。ステージに立ち、自分達の挨拶の番になるのを待っている。遠藤さんがスピーチを続けている姿を見て、なるべく気持ちを落ち着かせようとした。しかし、近所で会っている姿ではなく、偉い人にしか見えないから、ますます緊張した。
「……黒崎さんは佐伯さんの左側に立ってください」
「……はい」
ザワザワとした会場が静まり返った。遠藤社長の挨拶が終わり、監督プロデューサーとプロダクションマネージャーのスピーチへ進んだ。簡潔に終わり、すぐに順番がきてしまった。この後、佐久弥、俺、悠人へと続く。出来るだけ短く感謝の気持ちが伝わるようにしたい。会場入りした際には、たくさんの人と挨拶をかわした。この中に知り合った人もいる。
「当社所属アーティストより、ご挨拶申し上げます。佐伯久弥より……」
まずは佐久弥の挨拶だ。彼がマイクの前に立つと、出席者から大きな拍手が贈られた。
「……佐伯久弥です。……お力添えいただいたおかげです。……ボーカルの黒崎、ギターの久田より、ご挨拶申し上げます。……夏樹、リラックスしろよー」
佐久弥の挨拶が終わり、マイクを手渡された。緊張するのは当たり前のことだ。気持ちを伝える、それが何よりも大事なことだ。すっかり忘れていたようだ。
すうっと深呼吸をして、ジャケットの内ポケットからスピーチ原稿を取り出した。読みながらだと失礼だと思うから、手元に置く感じだ。黒崎のスピーチをイメージした。インターンシップ参加での経験を生かせるだろう。
いざ始めようとすると、会場から笑いが起きていることに気づいた。まだ未熟な自分だ。可笑しいところがあるのだろう。それでもいいから感謝を伝えよう。
パチパチパチ!
「……このたび、Visible ray の、ボーカル職を拝命いたしました黒崎です。……これも、皆さまのご支援の賜物だと思っております。本当に心から感謝申し上げます。……ボーカル職という任を命じられたからには、自分一人の活動というわけにはいかず、……重責を担うことになり、身の引き締まる思いです。……なにぶん初めてのプロ活動、ボーカル職で、皆さまにはご迷惑をかけてしまうかもしれませんが、力の限りを尽くす決意です。どうぞお力添えのほど、よろしくお願いいたします。……ギタリスト職を務めます、久田よりご挨拶を申し上げます」
パチパチパチ!!
これでよし。気持ちを伝えることが出来た。会場内からは笑いが起きている。やっぱり何か変なところがあったのだろう。この後で聞いて、次に生かせばいい。
悠人にマイクを渡した。あああ……という、緊張した顔をしている。大丈夫だぞ。悠人の目を見つめて頷いた。彼がマイクを握って挨拶を始めると、可愛いという声が飛び交った。良かったと、胸をなで下ろす心地で見守った。
「……続きましては。……ワインとビール、ソフトドリンクをご用意しております。ご歓談ください」
パチパチパチ!
かっこいいぞーーー!
自分たちの挨拶が終わった。大きな拍手に送られて、ステージサイドに戻った。すると今度は、待機しているスタッフさん達や、長谷部さんまで大笑いをしていた。その反対に、悠人が沈み込んでいる。それを、佐久弥が大笑いして励ましている。何が起きたのだろう?
「夏樹みたいなスピーチを考えてなかったんだーー!社会人失格だよーーっ」
「ぎゃははーー、それは違うぞーー」
「……何か変でしたか?」
こんなに注目しなくてもいいだろう?はっきり教えてほしいのに。可愛い、面白い、さすがは5人斬りと、周りからはやし立てられている。不快なものではなく、動物園の動物になった気分だ。
どんどん顔が熱くなり、ズボンに差してあった、うちわで顔を扇いだ。すると、さらに笑い声が大きくなった。何をやっても笑われる。すごすごと、隅の方に移動した。すると、すぐに遠藤さんと佐久弥がやって来た。フォローするよと言ってくれた。
「夏樹君のスピーチが、丁寧で素晴らしかったからだよ。インターンシップで習ったのかい?」
「はい。黒崎さんの、常務取締役の挨拶をイメージしました」
「ははははは」
「なつきー、おまえ……」
「蓮司くーん!黒崎さんを呼んでやってくれ。早瀬君も!悠人君が落ち込んでいるから。……ステージに影響がある」
遠藤さんが佐久弥のマネージャーの蓮司さんに声をかけて、黒崎と早瀬さんを呼ぶように頼んでくれた。呼んでくれるのは有難いが、笑いながらだった。悠人と2人で寄り添うようにして、黒崎たちが来るのを待った。隅っこで佇みながら。会場内は乾杯の音頭が取られて、みんなで乾杯していた。もちろん俺達もジュースで乾杯した。
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