恋人はメリーゴーランド少年だった~永遠の誓い編

夏目奈緖

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 怒りがこみ上げてきて、息がしづらくなった。黒崎とはゆっくり歩み寄っていけるものだと思っていた。でも、そうではなかったのだと分かった。黒崎は俺のことを言いなりにしたいのではないかという不安があった。そして、それが現実として目の前に現れた。

 俺はそう言う人が嫌だと思っている。だから、黒崎はそういう人なら一緒に居ることができない。でも、黒崎のことが心配だから離れたくないという気持ちがある。

 これから先どうするのかという選択する必要が出てきた。ここで素直に頷けば、いつものように黒崎から抱き寄せられて、キスをされるのだろう。喧嘩をしなくて済む。でも、それでは俺の自由が無い。

「あんたの強引なところも好きだけど、物事を選んで言ってほしい。笑えない冗談だよ」 
「俺が決めたことだから、そうしてもらう」 
「俺も自分が決めたことだから、自由に泳がせてもらうよ」
「お前が想像している川は、夏休みに家族と遊びに行くような綺麗な場所じゃないのか?もっと田舎の、穏やかな流れの川だ。現実はそうじゃない。想像よりも速いぞ?」 
「俺は流れに逆らってでも泳ぐ!」
「だめだ。流れが速いだけならまだいい。濁流もあるぞ?場所によれば川の水も汚い」 
「納得できるまでやりたい!」

 俺にはその力がないから、そういうことを言うのだろうか。泳げないからといって、諦めて何になるというのか。納得できるまでやりたい。黒崎の言うとおりにはできない。

「欲しい物があったら買ってやる。それでいいだろう?家族なんだから」 
「欲しい物があったら自分で買う!どうして働いちゃダメなんだよ?社会に出ても、あんたと一緒にいるよ?俺には泳げないって言いたいわけ?」 
「その反対だ。お前は解らないことを解らないまま放置をしない。目的を叶えるために何をするか、リスクを承知で行動している。効果がなければ、やめるという判断もできる。……社会に出たら伸びるだろう。相手の考えていることも、すぐに読めるようになるだろう。俺の手の届かないところまで行って、帰って来ないかもしれない。だから大学には通わせても就職はさせない」 
「成長させないつもり?」 
「成長できるのは分かっているから、わざわざ外に出なくていいんだ」 
「あんたに守られながら成長できるのかよ?居心地のいい場所だけで、そうなるって言えるのかよ?」 
「俺の手元で成長しろ。新しいメニューの考案に携わってほしい。家の中でも出来る仕事だからな」  

 返す言葉がなかった。怒りと戸惑いに震えても、黒崎は譲ろうとしない。NOだと言わせないような威圧感が籠もった目で見つめられた。俺が呆然としていると、黒崎が言った。

「この先の泥臭いことは、全て引き受ける。眠れない日が続いただろう。二度と傷つかせないと決めた。……夜の遊園地は綺麗だったな?お前はおとぎの国の住人みたいだった。覚えているか?これからもそうであって欲しい。俺の居場所でもある」 
「何を……」

 黒崎は俺の返事など聞く耳を持たず、必要としていなかった。俺が嫌だと言っても聞いてくれようとしない。お互いに向き合ってソファーに座ると、優しく抱かれた。そして、唇を塞がれて言葉を奪われた。今の言葉が冗談であって欲しいと思った。築いてきた信頼関係を壊したくないからだ。
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