海のそばの音楽少年~あの日のキミ

夏目奈緖

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 書斎に置いてある床に敷かれているフカフカのラグに座り込んだ。そして、大きなクッションにもたれ掛かった。これらは早瀬が用意してくれたものだ。こうして書斎でも一緒に過ごせるようにと。こんなに温かい空間にいるのに、身体が冷たくなってきた。

 早瀬の寝顔を見つめた。うっすらと、眉間に皺が出来ている。目が乾燥するたびに、ギュッと閉じているからなのか?それとも、何かやることがあるのかな?

 高速道路のような、走りやすい道を作っているという。俺のためだと言っていた。歩きやすい道を作り、ギタリストという夢にチャレンジするための環境を整えたとも。実際にその通りになっている。一年間の環境とは大違いだ。

 何も心配しなくていい。
 俺が支える。
 歩きづらい場所を歩かせたくない。

 そう言われた。そこまで無理をしてもらいたくない。早瀬自身のことが後回しになっていると思う。それだけ、昔のことで後悔しているのかな?本人に聞けばいいのに、勇気が出ない。

 気がつくと、息がしづらくなっていた。鼻に違和感があり、引っ張られている感覚もある。鼻の下がくすぐったくて、クシャミが出そうだ。

「ふぇふぇふぇーー……」
「……していいよ。クシュンッて」
「ふぇふぇふぇーー……」
「……思い切りいけ」
「ふふぇええくしょん!!」
「……よし、出たね。拭いてあげるから大人しくしていろ」
「うん……。ズズズ……」

 くしゃみをしたことで、鼻水も出てきた。ティッシュを取ろうと無意識のうちに手を伸ばすと、拭いてあげると言われた。そして、ティッシュの感触があり、安心して鼻をかんだ。

「ズーーーッ」
「待っていろよ。新しいやつに変えるからね」
「ズズズ……」
「風邪をひいたか?熱はどうだ?」

 温かな手が額に触れた。頭がボーっとしているから、何が起きているのか分からない。目を開けると、早瀬の顔が至近距離にあったから驚いた。さっきまで寝ていたはずなのに。いや、寝ていたのは自分の方か?

「わわわわっ」
「どうした?オバケでもいるのか?」
「あの……、いつから?」
「ついさっきだ。もう3時が近い。カーディガンを掛けてくれてありがとう。でも、悠人君の方が寒かったみたいだね。喉が痛いだろう?」
「え……、けほっ」
「掠れているね。先にベッドに行こう。体温計と温かいものを持って来る」
「えーっとね……」
「先に温かくしよう」
「ごほっごほっ」
「ごめんね。早く気づかなくて」

 早瀬が俺のことを抱き上げて、素早く寝室へ入った。
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