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ガーーー……。
エレベーターに乗り込んだ後、平田が居るが、構わずに内情を話し合った。山田の狙いは、俺のこと巻き込むためだ。喧嘩両成敗に持っていくために行動しているだろう。今日のうちに起これば、昇進が先延ばしになるケースがある。それが分かっているからこそ、黒崎から守られている。それでも俺は牙をむきたい。しかし、黒崎からは釘を刺された。
20階に到着した。オフィスへ入るとすぐに、事情を知っている部下が走ってきた。争っている場所は、マーケティング推進室のそばだ。山田には用がない場所だ。わざわざ訪れたということだ。
平田が先に走って行った。その後を追おうとすると、黒崎から肩を引かれた。橋本からも手を引かれた。
「裕理、抑えろ。俺が確認して来る。……橋本。早瀬を押さえてくれ」
「はい。早瀬さん、常務に任せましょう」
「待て、枝川の声が聞こえる。……何か倒したのか?」
このままでは、怪我人が出る可能がある。山田に巻き込まれて暴力沙汰になれば、枝川も無事ではいられないだろう。まずは止めることだ。
「早瀬さん、抑えてください!」
「何もしない。行かせてくれ」
「常務の後ですよ」
「ああ……」
マーケティング推進室の部下が来て、俺の腕を掴むようにした。それだけ、自分の様子がおかしいというのか。たしかに腹が立って堪らない。
「やめろ!……山田!」
それは黒崎の声だった。同時に派手な物音も聞こえてきた。このまま大人しく見てはいられず、先を急ぐようにして部下の腕を振り払って走った。
「室長!だめです!僕たちが止めるので!」
「早瀬さん!」
「何もしない。止めるだけだ」
「いけません!」
橋本の手が絡みついて来る。そのままの体制で到着した時には、枝川の表情が強張っていた。散乱した書類、緊迫した空気が流れていた。橋本から腕を掴まれたままで、枝川の元へ急いだ。山田とは離れて立っている。
「室長、ここにいてください!常務が……」
「……」
「早瀬さん、枝川君。こっちへ……」
部下3人が俺たちの前に立ち、その背中越しに、山田の姿が見えている。みんなが俺のことを守ろうとしてくれているのが分かり、胸が痛くなった。
ここへ入社して8カ月しか経っていない。実績がない者が上司になったというのに、ここまでしてくれるのか。少数の者しか信用しておらず、心の内を見せないようにしてきた。そつなくこなすことをやってきた。
いつの間に、これほど味方が出来ていたのだろう?あの全体会議では言い争いを止める者が、僅かだったというのに。それが当たり前だと思っていたのに。
口だけなら何とでも言える。ここの部下たちは、行動に出している。山田の前に立ち、動こうとしない。人数が多いせいではないだろう。彼は重役クラスの身内がいることや、仕事上での能力からも発言力がある。上司でさえも、何も言えなかったというのに。
そばに行くために身じろぎをすると、橋本達から肩を引かれた。それならここから声をかける。
「山田さん、言いたいことがあるなら、俺に言え!部下を巻き込むな!」
「……っ」
「さっさと用件を言って、自分のオフィスへ戻れ!」
「山田室長を押さえろ!」
橋本の声が響き渡り、平田がそばへ向かった。黒崎が山田の前に立ち、身体に触れることなく言葉で諫めた。
山田が立ち止まると、視線だけを俺の方へ向けてきた。さっきまでの荒々しい動作が消え失せているが、その目だけは変化がない。憎悪、嫌悪。言葉で言い表すとすれば、この2つしか思い浮かばない。
何をしたのか?何もしていないからこそ、苛立ちがあるのだろう。足を引っ張ろうが、不本意な噂を流そうが静観していた。慣れているからだ。
白澤を利用して悠人を襲わせ、俺が何かするのを期待していたことも知っている。ここで指摘しても、言いがかりでしかない。あえてこう言おう。
「山田さん。戦いごっこなら、公園でしてください」
「……戦いごっこだと !?」
「そうです。遊んでいたんでしょう?常務も橋本も俺も、部下たちも勘違いをしました」
周りの者からは、何を言い出したのかという顔をされた。枝川の方へ向くと、右手が赤くなっていた。強く掴まれたのか。枝川のことを巻き込むわけにはいかない。
エレベーターに乗り込んだ後、平田が居るが、構わずに内情を話し合った。山田の狙いは、俺のこと巻き込むためだ。喧嘩両成敗に持っていくために行動しているだろう。今日のうちに起これば、昇進が先延ばしになるケースがある。それが分かっているからこそ、黒崎から守られている。それでも俺は牙をむきたい。しかし、黒崎からは釘を刺された。
20階に到着した。オフィスへ入るとすぐに、事情を知っている部下が走ってきた。争っている場所は、マーケティング推進室のそばだ。山田には用がない場所だ。わざわざ訪れたということだ。
平田が先に走って行った。その後を追おうとすると、黒崎から肩を引かれた。橋本からも手を引かれた。
「裕理、抑えろ。俺が確認して来る。……橋本。早瀬を押さえてくれ」
「はい。早瀬さん、常務に任せましょう」
「待て、枝川の声が聞こえる。……何か倒したのか?」
このままでは、怪我人が出る可能がある。山田に巻き込まれて暴力沙汰になれば、枝川も無事ではいられないだろう。まずは止めることだ。
「早瀬さん、抑えてください!」
「何もしない。行かせてくれ」
「常務の後ですよ」
「ああ……」
マーケティング推進室の部下が来て、俺の腕を掴むようにした。それだけ、自分の様子がおかしいというのか。たしかに腹が立って堪らない。
「やめろ!……山田!」
それは黒崎の声だった。同時に派手な物音も聞こえてきた。このまま大人しく見てはいられず、先を急ぐようにして部下の腕を振り払って走った。
「室長!だめです!僕たちが止めるので!」
「早瀬さん!」
「何もしない。止めるだけだ」
「いけません!」
橋本の手が絡みついて来る。そのままの体制で到着した時には、枝川の表情が強張っていた。散乱した書類、緊迫した空気が流れていた。橋本から腕を掴まれたままで、枝川の元へ急いだ。山田とは離れて立っている。
「室長、ここにいてください!常務が……」
「……」
「早瀬さん、枝川君。こっちへ……」
部下3人が俺たちの前に立ち、その背中越しに、山田の姿が見えている。みんなが俺のことを守ろうとしてくれているのが分かり、胸が痛くなった。
ここへ入社して8カ月しか経っていない。実績がない者が上司になったというのに、ここまでしてくれるのか。少数の者しか信用しておらず、心の内を見せないようにしてきた。そつなくこなすことをやってきた。
いつの間に、これほど味方が出来ていたのだろう?あの全体会議では言い争いを止める者が、僅かだったというのに。それが当たり前だと思っていたのに。
口だけなら何とでも言える。ここの部下たちは、行動に出している。山田の前に立ち、動こうとしない。人数が多いせいではないだろう。彼は重役クラスの身内がいることや、仕事上での能力からも発言力がある。上司でさえも、何も言えなかったというのに。
そばに行くために身じろぎをすると、橋本達から肩を引かれた。それならここから声をかける。
「山田さん、言いたいことがあるなら、俺に言え!部下を巻き込むな!」
「……っ」
「さっさと用件を言って、自分のオフィスへ戻れ!」
「山田室長を押さえろ!」
橋本の声が響き渡り、平田がそばへ向かった。黒崎が山田の前に立ち、身体に触れることなく言葉で諫めた。
山田が立ち止まると、視線だけを俺の方へ向けてきた。さっきまでの荒々しい動作が消え失せているが、その目だけは変化がない。憎悪、嫌悪。言葉で言い表すとすれば、この2つしか思い浮かばない。
何をしたのか?何もしていないからこそ、苛立ちがあるのだろう。足を引っ張ろうが、不本意な噂を流そうが静観していた。慣れているからだ。
白澤を利用して悠人を襲わせ、俺が何かするのを期待していたことも知っている。ここで指摘しても、言いがかりでしかない。あえてこう言おう。
「山田さん。戦いごっこなら、公園でしてください」
「……戦いごっこだと !?」
「そうです。遊んでいたんでしょう?常務も橋本も俺も、部下たちも勘違いをしました」
周りの者からは、何を言い出したのかという顔をされた。枝川の方へ向くと、右手が赤くなっていた。強く掴まれたのか。枝川のことを巻き込むわけにはいかない。
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