海のそばの音楽少年~あの日のキミ

夏目奈緖

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17-7(悠人視点)

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 午前10時。

 数分前にマリーズカフェから出て、ガラス壁の前に立った。さっき夏樹から電話があり、この駅に到着したと聞いた。タクシーから降りて、目の前の7番出口から入って来るはずだ。一番の近道だからだ。早瀬からそう教えてもらったし、夏樹にも伝えておいた。

「ここなら迷わないよね。はあ……」

 本日9度目のため息をついた。こんなことをしていても先に進まないというのに。夏樹からアドバイスを貰おう。月2回は喧嘩をしているベテランだ。

「あれ?夏樹だ……」

 7番出口の方を見ていると、視界の中に見慣れた姿が入ってきた。ベージュ系のコート、白いマスク、のんびりした足取り。予定していたものとは反対の、8番出口から入ってきたようだ。しかも、俺のことに気づいていない様子だ。

「なつき……え?」
「ゆうとー。おまたせ~」
「え?あれって柱だよー?」

 夏樹が大きな柱に向かって手を振っている。俺のことを呼びながらだ。人違いではないだろう。そこには誰も立っていない。まさかオバケか?何も言わないでおこう。素知らぬふりをして声をかけた。

「なつきーー、ここだよー?」
「ん?あ、良かった~」

 やっとこっちに気が付いた。斜め向こうに立っている俺の方を見て、照れくさそうに笑った。

 タタタタターー。

 早足で歩いて来たかと思えば、つまづいて転びそうになった。何とかこっちへ来れた。放っておけない子だ。

「ごめん、見間違えたよ~」
「あれは俺じゃないよ。ポスターだよ」

 やっと勘違いの理由が分かった。綺麗に印刷されているから、誰か立っているように見える。一緒に柱の方へ行くと、男の子の等身大のポスターが貼られていた。テレビドラマに出ている、子役の小学生だ。

「ほらね?俺じゃないだろ?」
「それは分かるよ。本人がここにいるもん」
「どうして、ポスターと間違えたんだよ?」
「服装が似ているからだよ」
「夏樹、コートとズボンは誰でも同じだよ。コートの色は似ているけど……。紺色のコートが同じだね」
「そうだろ?」
「うん……」

 たしかに服装には共通点がある。しかし、大きな違いが存在する。来年は中学生だという文字が大きく表示されているからだ。

 これを見ても勘違いしたのなら、よっぽど違和感がないということだ。分かっていても、ガッカリしてしまった。夏樹のせいではない。あくまでも、自分のこだわりだ。

「この子って……、小学生ぐらいだよね」
「うん、ドラマに出ている子だね」
「俺、童顔なんだ……」
「うん、分かっているよ?」

 夏樹から肩を叩かれた。数センチの身長差しかないのに、もっと背が高く見える。大人っぽい顔立ちと、雰囲気をしているからだ。

「ウジウジ悩まないでさ、行こうよ!」
「うん、ごめんね!」

 さっそく出入り口へ向かった。夏樹が入ってきたのは8番のような気がしたが、向かっているのは6番だ。違う出口のような気がする。先ずは進んでみることにした。

 出口の先には、有名なホテルが並んでいた。近くにタクシー乗り場があるから、ここで降りたのか。しかし、夏樹が首を傾げている。

「出口を間違えたんだよ~。ここはどこかな……ウーン」
「アプリで調べるよ。タクシーから降りた時、目印になるものはあった?デパートか、大型モニターとか」

 初めての場所なら想定内だ。こういう時には、愛用のアプリが活躍する。駅の出口、周辺の画像、店の連絡先などが分かる。ルート表示と、サクサク動く画像が便利だ。
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