海のそばの音楽少年~あの日のキミ

夏目奈緖

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18-1 最大魔法

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 チャチャチャーー。ガーー、ザーーー。

 お互いのパートナーへのプレゼントを買った後、ゲームセンターで遊んでいる。しばらくこういう場所に来ていなくて、新しいゲームが増えていることに驚いた。

 地元では見たことがないような、屋内の絶叫マシーンがある。ビルの外に飛び出す仕掛けだ。お互いに絶叫系は大の苦手なのに、怖いもの見たさから、遠巻きに観察する面が共通している。

「クレーンゲームをやろうよ。アイスクリームがあるよ」
「へえ、カップアイスだね。このショベルヘッドで獲るんだね~」
「やったことがないの?」
「うん。連れて行ってもらったことがないし、伊吹お兄ちゃんから禁止されていたんだ。喧嘩を吹っかけて来るグループがいたんだってさ。お前はやめておけって」
「ほお……。喧嘩三昧だったなんで、想像できないよ。桜木さんから聞いたけどさ……」
「黒歴史だよ……」

 どうしよう?桜木さんから聞いた話は、憧れさえ感じるものだった。喧嘩が強い子に憧れるのは子供だというのに。大した怪我をしたりさせたりせずに、あっさりと片づけていたほどの強さだと聞いた。

 父方の祖父が剣道を教えていたから、夏樹は小さな頃から練習風景を見ているそうだ。そして、伊吹さんの竹刀を持ちだして、練習だと口実をつけて、喧嘩の呼び出しに応じていたことも聞いた。相手に当たれば、素振り中の事故だと言い切ったそうだ。とんでもない13歳だ。

「それでいいんだよ。やり切ったから、大人しいんだろう?大人になってから弾ける方が黒歴史だよ。それだと笑えないし」
「ありがとう。早瀬さんも同じタイプじゃないかな?」
「それはないと思う。大人しかったと思うよ。バンドではじけた気がする……」

 早瀬の家庭環境を思えば、そういう結論に行き着く。音楽を知って自由になり、そうではなくなった。羽ばたける道具を捨てて選んだのは、現在の道だ。その道を整えるのは自分でありたい。反対に整えてもらっているからだ。それなら納得が出来る。

「黒崎さんこそ、やり切った人じゃないの?」
「その反対だよ。女性関係がメチャクチャでさ~。俺と出会うまで、都合のいい女の人が7人もいたんだよ。話したことあったよね?」
「ううん?そこまでは……」
「寂しい子供時代でさ。お母さんの視界に入れなくて、嫌な記憶があったんだ。その代償にしていた気がするよ。あとはねえ、仕事が忙しいことも理由だよ」
「どうして?パワーがないだろー?」
「忙しいっていう字は、心を亡くすって書くんだよ。ストレス発散を仕事にしていた気がする。女性とのデートでもストレスを感じていたみたいなんだ……。傷つけたくないのに寂しくて」
「ほお……」

 だったら早瀬も同じだろうか?恋愛にパワーを使わないと聞いたが、俺に対してはパワフルだ。今まで付き合った人とは、寂しいから一緒に居たかったのか?早瀬の方が心を開かないから、相手が焦れて爆発したのかな?それなら、俺の方がドアを爆破すればいい。アンタレスだと言われたのだから。
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