106 / 259
9-9
しおりを挟む
カタカタ……。
キッチンでお茶の用意をしているところだ。リビングには会社の人が来ている。早瀬へのお見舞いだ。玄関先で帰ろうとしていたものの、入ってもらった。
「今回のことは……」
「気にしないでください。お互い様ですから」
「室長が受け止めてくださらなかったら……」
「いえいえ……」
コト……。3人分のお茶をテーブルに置いた。すぐに2人から声が掛けられた。
「弟さんですか?」
「いや、この子は僕のパートナーだよ」
「あら……。伊藤さんから、弟さんが一緒にいるって聞いたことがあったので……」
「そうか。この近くの店でバッタリ会ったんだよ。その時にもパートナーだと紹介したはずだけどね」
その人達のことを思い出した。早瀬の冗談だと受け止めている感じがしていたのは、気のせいではなかったのか。それでもこうして、はっきりと言ってもらえて嬉しかった。
テーブルの端の方にトレーを置いてある。茶わんを茶たくに乗せて両手で持った。ゆっくりとお客さん2人の前に置き、早瀬の前に置いた。訪問客から見てお茶は右側、お菓子は左側に並べた。祖母から教えてもらった通りにした。小さい頃からお茶出しをしていたから、懐かしくなった。
「裕理さん。向こうの部屋に行っているよ」
「いや、お気遣いなく」
「そうですよ。良かったら一緒に……」
「悠人君も一緒に居なさい」
「はい。自分の分を持って来るよ」
そう返事をした後、キッチンへ取りに行った。その間に、3人の会話が聞こえてきた。
「しっかりされていますね。大学生ですか?」
「久田顧問弁護士の息子で、大学1年生です」
「ああ、そうでしたか……」
「そういえば……、伊藤さんと一緒にいた恵理さんが、そう言っていました。どうして弟さんだと勘違いをしたのかしら……」
「周りが賑やかで、よく聞こえなかったのかもしれないね」
「そうですね。このお茶、いい香り。きちんとされていますね。さすが早瀬さんの……」
「そうかな?我が儘で困っているよ」
「そうですか?」
みんなの会話を聞いて安心した。小さな頃からうるさいと思いながらも祖母の言うことを聞いて、お茶出しをやっていて良かったと思った。こうして役立っている。褒められたことが嬉しい。
早瀬の隣に座った。仕事の話題が出ている。俺はそれを聞き流して、笑顔でいるようにした。これは母から習ったことだ。不思議なことに、教えられた時には拒否感があったのに、今はそう感じなくなっている。けっこう悪くないんじゃないとも思った。
(……成長したってことかな?困らないもんなあ)
早瀬の怪我の具合を武市さんが心配している。早瀬が受け止めなかったら、どうなっていたかと思うと言っていた。そばには机があり、落ちる時に頭をぶつけていたかも知れない状況だったそうだ。
「長居してすみませんでした」
「ありがとうございました」
「いえ、こちらこそ……」
2人が話を切り上げて、帰り支度を始めた。俺が預かった上着を差し出すと、褒めてくれた。そして、また来てくださいねと挨拶をかわして、早瀬と一緒に玄関で見送った。
キッチンでお茶の用意をしているところだ。リビングには会社の人が来ている。早瀬へのお見舞いだ。玄関先で帰ろうとしていたものの、入ってもらった。
「今回のことは……」
「気にしないでください。お互い様ですから」
「室長が受け止めてくださらなかったら……」
「いえいえ……」
コト……。3人分のお茶をテーブルに置いた。すぐに2人から声が掛けられた。
「弟さんですか?」
「いや、この子は僕のパートナーだよ」
「あら……。伊藤さんから、弟さんが一緒にいるって聞いたことがあったので……」
「そうか。この近くの店でバッタリ会ったんだよ。その時にもパートナーだと紹介したはずだけどね」
その人達のことを思い出した。早瀬の冗談だと受け止めている感じがしていたのは、気のせいではなかったのか。それでもこうして、はっきりと言ってもらえて嬉しかった。
テーブルの端の方にトレーを置いてある。茶わんを茶たくに乗せて両手で持った。ゆっくりとお客さん2人の前に置き、早瀬の前に置いた。訪問客から見てお茶は右側、お菓子は左側に並べた。祖母から教えてもらった通りにした。小さい頃からお茶出しをしていたから、懐かしくなった。
「裕理さん。向こうの部屋に行っているよ」
「いや、お気遣いなく」
「そうですよ。良かったら一緒に……」
「悠人君も一緒に居なさい」
「はい。自分の分を持って来るよ」
そう返事をした後、キッチンへ取りに行った。その間に、3人の会話が聞こえてきた。
「しっかりされていますね。大学生ですか?」
「久田顧問弁護士の息子で、大学1年生です」
「ああ、そうでしたか……」
「そういえば……、伊藤さんと一緒にいた恵理さんが、そう言っていました。どうして弟さんだと勘違いをしたのかしら……」
「周りが賑やかで、よく聞こえなかったのかもしれないね」
「そうですね。このお茶、いい香り。きちんとされていますね。さすが早瀬さんの……」
「そうかな?我が儘で困っているよ」
「そうですか?」
みんなの会話を聞いて安心した。小さな頃からうるさいと思いながらも祖母の言うことを聞いて、お茶出しをやっていて良かったと思った。こうして役立っている。褒められたことが嬉しい。
早瀬の隣に座った。仕事の話題が出ている。俺はそれを聞き流して、笑顔でいるようにした。これは母から習ったことだ。不思議なことに、教えられた時には拒否感があったのに、今はそう感じなくなっている。けっこう悪くないんじゃないとも思った。
(……成長したってことかな?困らないもんなあ)
早瀬の怪我の具合を武市さんが心配している。早瀬が受け止めなかったら、どうなっていたかと思うと言っていた。そばには机があり、落ちる時に頭をぶつけていたかも知れない状況だったそうだ。
「長居してすみませんでした」
「ありがとうございました」
「いえ、こちらこそ……」
2人が話を切り上げて、帰り支度を始めた。俺が預かった上着を差し出すと、褒めてくれた。そして、また来てくださいねと挨拶をかわして、早瀬と一緒に玄関で見送った。
0
あなたにおすすめの小説
僕の恋人は、超イケメン!!
八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?
僕の王子様
くるむ
BL
鹿倉歩(かぐらあゆむ)は、クリスマスイブに出合った礼人のことが忘れられずに彼と同じ高校を受けることを決意。
無事に受かり礼人と同じ高校に通うことが出来たのだが、校内での礼人の人気があまりにもすさまじいことを知り、自分から近づけずにいた。
そんな中、やたらイケメンばかりがそろっている『読書同好会』の存在を知り、そこに礼人が在籍していることを聞きつけて……。
見た目が派手で性格も明るく、反面人の心の機微にも敏感で一目置かれる存在でもあるくせに、実は騒がれることが嫌いで他人が傍にいるだけで眠ることも出来ない神経質な礼人と、大人しくて素直なワンコのお話。
元々は、神経質なイケメンがただ一人のワンコに甘える話が書きたくて考えたお話です。
※『近くにいるのに君が遠い』のスピンオフになっています。未読の方は読んでいただけたらより礼人のことが分かるかと思います。
【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話
須宮りんこ
BL
【あらすじ】
高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。
二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。
そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。
青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。
けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――?
※本編完結済み。後日談連載中。
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
青い月の天使~あの日の約束の旋律
夏目奈緖
BL
溺愛ドS×天然系男子 俺様副社長から愛される。古い家柄の養子に入った主人公の愛情あふれる日常を綴っています。心臓に疾患を抱えながら、ロックバンドのボーカルとしてステージに立つ夏樹。彼を溺愛するのは、年上で俺様な副社長・黒崎圭一。夏樹は養子として名家に迎えられ、音楽と経営、二つの人生の狭間で揺れていた。それでも黒崎は、束縛と独占欲を隠すことなく、夏樹のすべてを受け止めようとする。ステージを降りる日が近づくかもしれない中、家族の問題、過去の傷、そして未来への不安が静かに忍び寄る。繋いだ手を、決して離さないと誓った二人の、溺愛と再生の物語。※本作からでもお読みいただけます。
黒崎家には黒崎の兄弟達が住んでいる。黒崎の4番目の兄の一貴に親子鑑定を受けて、正式に親子にならないかと、父の隆から申し出があり、一貴の心が揺れる。そして、親子鑑定に恐れを持ち、精神的に落ち込み、愛情を一身に求める子供の人格が現われる。自身も母親から愛されなかった記憶を持つ黒崎は心を痛める。黒崎家に起こることと、黒崎に寄り添う夏樹。
作品時系列:「恋人はメリーゴーランド少年だった。」→「恋人はメリーゴーランド少年だった~永遠の誓い編」→「アイアンエンジェル~あの日の旋律」→「夏椿の天使~あの日に出会った旋律」→「白い雫の天使~親愛なる人への旋律」→「上弦の月の天使~結ばれた約束の夜」→本作「青い月の天使~あの日の約束の旋律」
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──
学校一のイケメンとひとつ屋根の下
おもちDX
BL
高校二年生の瑞は、母親の再婚で連れ子の同級生と家族になるらしい。顔合わせの時、そこにいたのはボソボソと喋る陰気な男の子。しかしよくよく名前を聞いてみれば、学校一のイケメンと名高い逢坂だった!
学校との激しいギャップに驚きつつも距離を縮めようとする瑞だが、逢坂からの印象は最悪なようで……?
キラキライケメンなのに家ではジメジメ!?なギャップ男子 × 地味グループ所属の能天気な男の子
立場の全く違う二人が家族となり、やがて特別な感情が芽生えるラブストーリー。
全年齢
君に二度、恋をした。
春夜夢
BL
十年前、初恋の幼なじみ・堂本遥は、何も告げずに春翔の前から突然姿を消した。
あれ以来、恋をすることもなく、淡々と生きてきた春翔。
――もう二度と会うこともないと思っていたのに。
大手広告代理店で働く春翔の前に、遥は今度は“役員”として現れる。
変わらぬ笑顔。けれど、彼の瞳は、かつてよりずっと強く、熱を帯びていた。
「逃がさないよ、春翔。今度こそ、お前の全部を手に入れるまで」
初恋、すれ違い、再会、そして執着。
“好き”だけでは乗り越えられなかった過去を乗り越えて、ふたりは本当の恋に辿り着けるのか――
すれ違い×再会×俺様攻め
十年越しに交錯する、切なくも甘い溺愛ラブストーリー、開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる