海のそばの音楽少年~あの日のキミ

夏目奈緖

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 夏樹は黒崎製菓で3日間のインターンシップに参加が決まっていると言っていた。早瀬が関わっているとも聞いた。自分も参加したくなった。仕事中を見たいという理由だ。

「どうしたんだ?急に大人しくなって」
「あのさ。夏樹がインターンシップに参加するんだよね?俺も参加したいから申し込みたいんだ。裕理さんが働いているところが見たいんだ。それなら同一人物だって納得できる」
「あのねえ、同一人物だよ。インターンは参加まで時間がかかる。説明会、面接、選考がある。そのコースなら3か月先だよ?」
「そうなんだ……」
「……待てよ?悠人君、黒崎製菓でバイトをしないか?マーケティング推進室が繁忙で、5日間のバイトを雇う。入力や資料作成の事務だ。退屈かもしれないけど。得意ならどうだろう?」
「もちろん参加したいよ。だいぶ先?」
「2週間後だ。いい人材が集まらなくて、社員の知り合いに当たっている状態だ。大学生を中心にしている。……今から電話を掛けるから、待っていろ」

 早瀬が電話をかけ始めた。その間、机の上に座ったままなのはどうかと思い、降りようとした。

「こら、どこに行くんだ?」
「ここにいるよ」
「ここに座っていろ」
「なんで……」

 言い返そうとして口を閉じた。スマホをスピーカー設定にしているらしく、相手の声が聞こえてきたからだ。諦めて大人しくすると、相手は黒崎さんだと分かった。

「こんな時間にごめん」
「……裕理、どうした?」
「マーケティング推進室のバイトに、悠人を入れてもいいかな?」
「……もちろん構わない。事務作業が得意らしいな?夏樹から聞いた」
「楽器店で頼られているよ」
「……これで1人確保だ。エントリーシートを出してくれ。業務内容の説明があるから、事前に連れて来てくれるか?」
「分かった。ありがとう……。お邪魔だったね」
「……いや。構わない」
「黒崎さーーん。お茶が入ったよーーー」

 プツ。電話を切る直前に、夏樹の声が聞こえてきた。その内容を想像すると、黒崎さんは書斎にいて、夏樹がお茶を持ってきたところなのだろう。寝ていなくて良かった。何はもあれバイトが出来るようだ。黒崎製菓に興味があったから、ラッキーだと思った。しかも、早瀬がいる部署だ。

「ありがとう、これで仕事中の裕理さんを見られるね」
「さっきまで何をしていたんだろうねえ?」
「何が?」
「さっきの圭一さん、だるそうな声に聞こえなかった?」
「エロいことを想像するなよーー」

 早瀬の体を押しのけていると、その両足首を掴まれてしまった。そして、バランスを崩して壁に頭を軽くぶつけた後、もたれ掛かった。すると、両足を早瀬の肩の上に乗せられた。これでは抵抗ができないし、しかも、ググッと近づいてきた。
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