海のそばの音楽少年~あの日のキミ

夏目奈緖

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 13時。

 待ち合わせ場所であるレストランの前にやって来た。父から頼みこまれて、早瀬も同席する。俺達は中和役を必要とする親子だと証明された。

 今日の食事会は急に決まった。今朝起きてすぐに、父に連絡を取った。来週ではどうだろうと話したところ、俺の決心が鈍るから、今日にすると決められた。大して話していないのに、心の中を読まれていた。こういうところは凄いと思っている。ネガティブな意味ではなく、前向きに認めることができた。一歩前進だ。

「ここは鉄板焼きの店かー、好きなんだよ」
「よかったね。悠人君が好きなジャンルだ。お肉もたくさん食べられる」
「うん。裕理さんと初めて行ったのも、そうだったよね?」
「よく食べるから、見ていて気持ちが良かった。行儀よく大食いをしたから、ギャップがあった」
「食べなきゃやってられないもん。怪しい男と食事に行く羽目になってさ……」
「チャンスを逃したくなかった」
「あ……」

 どうしよう。胸がキュンとしてしまった。今日の早瀬の格好も影響している。普段はコンタクトレンズを使っているのに、メガネをかけているからだ。忙しくて目が乾燥しているからだという。

「どうした?」
「いや、その、あの……」
「メガネに惚れた?そうだろう?」
「バーカ、違うよ。……お父さんだ」

 これは言い訳ではなく、本当に父がやって来た。ワンピースを着ている女性が隣を歩いている。俺のことに気づいて頭を下げてきたから、こっちも慌てて下げた。
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