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翌日。午前10時。
キッチンに入って片付けをしている。使っているうちに、使いやすいキッチンだと実感した。リフォームをしたことで、新しいセットが設置された。木のぬくもりが感じられる色合いだ。ここだけではなく、家全体の内装を黒崎が選んだと知った。その黒崎は今、リビングのソファーで寝ているところだ。アンも寝ている。
「いつの間に?センスがあるよねえ。どうして、浅草&大阪ミックスカジュアルを嫌がるんだろう?似合うって言っているわりにはね~」
服装の趣味の違いだろうとは思っている。段ボールから調理器具を取り出した。細かいもの、大きなもの、鍋やフライパン類に分けている。今日のうちに片づけておきたい。
「ブレンドミックス。フライパン。和食器は、この引き出しだね。あ、そうだ。ゴミの収集場所を教えてもらわないといけない」
前のマンションでは、敷地内に出せる場所があった。ここはそうではない。実家にいた時のように、外へ出しに行くことになる。さっそくキッチンの電話を使った。お義父さんの家との専用回線だ。電話を掛けると、山崎さんが出てくれた。
「もしもし。夏樹です」
ここは誰かがいるから助かる。しばらくお世話になりそうだ。
ゴミの収集場所を聞いた後、庭に降りた。昨日の夜小雨が降っていたから地面が濡れている。周りにある木々からは湿った匂いがした。この庭は植物に囲まれている。少し散歩することにした。
「うーーん。くつろぐなあ。お義父さん一人で住んでいたら寂しいよね。ここに引っ越してきて良かった。畑を作らないとなあ……」
畑の跡を眺めた。お義父さんの話では、妹さんがレタスやトマトを植えていたようだ。俺達は何を植えようか考えた結果、トマトとピーマンを植えることにした。今月、畑に土を入れて耕すことになっている。その時、遠藤さん夫婦が手伝いに来てくれるそうだ。悠人と森本と山崎も来てくれると言っていた。
「黒崎さんって、小さい頃は女の子みたいだったんだなあ……」
遠藤さんから引っ越し当日に聞いた話だ。遠藤さん夫婦は黒崎が4歳の時に、向かいの家に引っ越してきたそうだ。その頃はまだ黒崎はママとお手伝いさんとで都内のマンションで暮らしていた。たまに黒崎家に遊びに来ていたけれど、黒崎本人はあまり覚えていないそうだ。初めて黒崎を見たとき、遠藤さん夫婦は彼のことを女の子だと思ったそうだ。次に会ったのは黒崎とママが引っ越してきた後だそうで、6歳の時だったそうだ。黒崎が門のそばで立っていた時に再会し、挨拶すると、ぺこりと頭を下げてくれたそうだ。おとなしそうな子で、絵本を持っていたそうだ。その時は男の子に見えたものの、やっぱり女の子じゃ無いかと思ったそうだ。そこでお手伝いさんから紹介されて、男の子だと分かったそうだ。
それから後、黒崎は喘息で入院するようになり、家を留守にすることが増えた。家の外を走り回れなかったから、庭でナツツバキの絵を描いて過ごしたそうだ。自然と遠藤さんと会う機会がなく、次に会って挨拶したときは、なんと高校生になった後だそうだ。すっかり背が伸びて、初めは誰か分からなかったと言っていた。お義父さんとも会っていなくて、近所づきあいと言えば、お手伝いさんがしていたそうだ。
遠藤さんとお義父さんがよく話すようになったのは、一年前からだそうだ。カンテールという洋菓子店でバッタリ会い、それがきっかけだったと言っていた。さらに俺達が引っ越してきて、賑やかになって良かったと言ってくれた。
「俺にできることはあるかなあーー。それにしても、気持ちがいいなあ……」
庭の中を歩くと、小さな池が見えてきた。その場所の近くにはナツツバキがあった。そこからお義父さんの家が見える。黒崎がよく、この木の花の絵を描きに来ていたそうだ。
「あ。そろそろ洗濯物を干さないといけない……」
振り返ると、庭のテラスが見えた。そこに洗濯物を干せるスペースを作ってある。マンションに住んでいるときは乾燥機を使っていた。この家なら外干しができる。陽当たりがいいから、すぐに乾くと思う。
「さてと。そろそろ家の中に入ろうっと……」
黒崎からは一人で庭に降りないでくれと言われたけれど、庭ぐらいは一人で散歩したいと言うと、しぶしぶOKを出してくれた。黒崎こそ、子供の頃は自由に庭で遊べなかっただろう。その時の思い出があり、ますます俺のことを心配してくれているのだろう。
家の中に戻ると、黒崎がリビングのソファーで寝息を立てていた。そっと彼にタオルケットを掛けると、アンが寄り添うようにして寝転がった。その姿を見てホッとした後、キッチンに行ってお茶の用意をした。家庭菜園のことを考えて、胸をわくわくさせながら。
キッチンに入って片付けをしている。使っているうちに、使いやすいキッチンだと実感した。リフォームをしたことで、新しいセットが設置された。木のぬくもりが感じられる色合いだ。ここだけではなく、家全体の内装を黒崎が選んだと知った。その黒崎は今、リビングのソファーで寝ているところだ。アンも寝ている。
「いつの間に?センスがあるよねえ。どうして、浅草&大阪ミックスカジュアルを嫌がるんだろう?似合うって言っているわりにはね~」
服装の趣味の違いだろうとは思っている。段ボールから調理器具を取り出した。細かいもの、大きなもの、鍋やフライパン類に分けている。今日のうちに片づけておきたい。
「ブレンドミックス。フライパン。和食器は、この引き出しだね。あ、そうだ。ゴミの収集場所を教えてもらわないといけない」
前のマンションでは、敷地内に出せる場所があった。ここはそうではない。実家にいた時のように、外へ出しに行くことになる。さっそくキッチンの電話を使った。お義父さんの家との専用回線だ。電話を掛けると、山崎さんが出てくれた。
「もしもし。夏樹です」
ここは誰かがいるから助かる。しばらくお世話になりそうだ。
ゴミの収集場所を聞いた後、庭に降りた。昨日の夜小雨が降っていたから地面が濡れている。周りにある木々からは湿った匂いがした。この庭は植物に囲まれている。少し散歩することにした。
「うーーん。くつろぐなあ。お義父さん一人で住んでいたら寂しいよね。ここに引っ越してきて良かった。畑を作らないとなあ……」
畑の跡を眺めた。お義父さんの話では、妹さんがレタスやトマトを植えていたようだ。俺達は何を植えようか考えた結果、トマトとピーマンを植えることにした。今月、畑に土を入れて耕すことになっている。その時、遠藤さん夫婦が手伝いに来てくれるそうだ。悠人と森本と山崎も来てくれると言っていた。
「黒崎さんって、小さい頃は女の子みたいだったんだなあ……」
遠藤さんから引っ越し当日に聞いた話だ。遠藤さん夫婦は黒崎が4歳の時に、向かいの家に引っ越してきたそうだ。その頃はまだ黒崎はママとお手伝いさんとで都内のマンションで暮らしていた。たまに黒崎家に遊びに来ていたけれど、黒崎本人はあまり覚えていないそうだ。初めて黒崎を見たとき、遠藤さん夫婦は彼のことを女の子だと思ったそうだ。次に会ったのは黒崎とママが引っ越してきた後だそうで、6歳の時だったそうだ。黒崎が門のそばで立っていた時に再会し、挨拶すると、ぺこりと頭を下げてくれたそうだ。おとなしそうな子で、絵本を持っていたそうだ。その時は男の子に見えたものの、やっぱり女の子じゃ無いかと思ったそうだ。そこでお手伝いさんから紹介されて、男の子だと分かったそうだ。
それから後、黒崎は喘息で入院するようになり、家を留守にすることが増えた。家の外を走り回れなかったから、庭でナツツバキの絵を描いて過ごしたそうだ。自然と遠藤さんと会う機会がなく、次に会って挨拶したときは、なんと高校生になった後だそうだ。すっかり背が伸びて、初めは誰か分からなかったと言っていた。お義父さんとも会っていなくて、近所づきあいと言えば、お手伝いさんがしていたそうだ。
遠藤さんとお義父さんがよく話すようになったのは、一年前からだそうだ。カンテールという洋菓子店でバッタリ会い、それがきっかけだったと言っていた。さらに俺達が引っ越してきて、賑やかになって良かったと言ってくれた。
「俺にできることはあるかなあーー。それにしても、気持ちがいいなあ……」
庭の中を歩くと、小さな池が見えてきた。その場所の近くにはナツツバキがあった。そこからお義父さんの家が見える。黒崎がよく、この木の花の絵を描きに来ていたそうだ。
「あ。そろそろ洗濯物を干さないといけない……」
振り返ると、庭のテラスが見えた。そこに洗濯物を干せるスペースを作ってある。マンションに住んでいるときは乾燥機を使っていた。この家なら外干しができる。陽当たりがいいから、すぐに乾くと思う。
「さてと。そろそろ家の中に入ろうっと……」
黒崎からは一人で庭に降りないでくれと言われたけれど、庭ぐらいは一人で散歩したいと言うと、しぶしぶOKを出してくれた。黒崎こそ、子供の頃は自由に庭で遊べなかっただろう。その時の思い出があり、ますます俺のことを心配してくれているのだろう。
家の中に戻ると、黒崎がリビングのソファーで寝息を立てていた。そっと彼にタオルケットを掛けると、アンが寄り添うようにして寝転がった。その姿を見てホッとした後、キッチンに行ってお茶の用意をした。家庭菜園のことを考えて、胸をわくわくさせながら。
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