アイアンエンジェル~あの日の旋律

夏目奈緖

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23-11(夏樹視点)

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 22時30分。

 家に帰ってきた。あれほど昼寝をしたのに、黒崎が帰って来たことで安心して眠気が起きた。家のベッドに入った直後から覚えていない。ぼんやりと目を覚ますと、黒崎がそばにいた。ベッドの端に腰かけて、そっと額に手を置かれた。熱っぽくて目元が潤んでいるから、ぼんやりとしか姿が見えない。

「無理をするからだ」
「心配かけてごめんね。一貴さんの話を聞いたせいじゃないからね?」

 そう驚かずに、一貴さんがどういう人なのか話が聞けた。黒崎家を嫌って寄り付かず、プラセルという会社を立ち上げて、俺でも名前を知っているアパレルメーカーに成長したそうだ。そして、一貴さんのお母さんが黒崎家に恨みを抱いていることで、意見の違う一貴さんとは親子断絶に近いそうだ。年一回の法事では兄弟が勢ぞろいし、表面上では穏やかな時間が流れているということだ。こういう状況のなかで再婚したママは、色んな人から妬みを受けたのだろう。

「明日は……。ごほっ。ズズ……」
「拭いてやる。明日も寝ておけ。日曜日に畑づくりをしたいだろう?」

 黒崎が額の汗を拭いてくれた。風邪がうつるといけないから別々に寝ようと言ったのに、彼が首を縦に振ろうとしない。ベッドの中に入り腕の中に閉じ込められた。まるで抱き枕状態だ。

「黒崎さーーん。あんたは咳が重くなるだろ?風邪をうつすわけにはいかないよ」
「うつらない」
「もう……」
「……やっと落ち着いた」
「俺もだよ……ごほっ」
「もっとこっちへ寄って来い」
「暑いもん。あんたの方が体温が高いからさ」
「いいから来い。離れるな」
「……」

 家に帰って来た後、黒崎が駄々っ子になった。大人しく抱き枕になっていると、すぐに寝息を立て始めた。俺の方も安心した。おやすみ。そっと耳元で囁いて、もう一度目を閉じた。
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