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24-1 人の恋路
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6月6日、木曜日。午前4時。
いつもよりも早く目が覚めた。また寝ようとしたけれど、すぐに起きる時間になるから、起きておくことにした。だから黒崎とはイチャつけない。昨夜たっぷり触れ合ったのに、黒崎の方は足りないようだ。風邪が治ったばかりだから、無理をさせたくないと言いながらも、俺の体に触れている。
お互いに密着して眠るのが、俺達の定番スタイルだ。毎回のように黒崎の腕の中に閉じ込められて、暑くて堪らなくなる。抜け出しても、すぐに引き戻されてしまう。
「離れるな……」
「暑いよ~」
「ここにいろ……」
どうやら黒崎は寝ぼけているようだ。少しでも涼しくなろうと、シーツを足でめくった。空調からの風が当たってホッとしていると、暑さが戻った。また抱き枕のようになったからだ。
「お前は寝転がっていろ」
「黒崎さんっ、平日だよ。もう起きるよ」
「夏樹、少しだけだ……」
「んん……」
パジャマの中に手が入って来た。諦めて身を任せているうちに、また暑くなってきた。黒崎が微睡みながら過ごしているのは、一か月半ぶりだ。平日の夜は会食が入り、休日でも朝から書類を読んでいるからだ。ゴルフ接待がないとは言え、完全に休んでいない。
「黒崎さん、大好きだよ……」
「そうか。証拠を見せてみろ」
「えろじじい」
「言われなくても自覚している。俺にとっての原動力だ」
黒崎が起き上がった。少しだけ乱れた髪と、まだ眠そうに細められた目元と、何も着ていない上半身がかっこいいと思った。
「ふふん、ふふん、うへへ……。もう起きるよ。わあーー」
ベッドから降りた途端に、腰がフラついてバランスを崩してしまった。床に倒れ込みそうになったところを、黒崎の腕に支えられた。すけべたらしい笑い方をしたから、耳たぶを引っ張ってやった。
「そういえば。早瀬さんのこと誘ってくれた?ご飯を食べる話だよ」
「ああ、誘った。返事待ちだ」
「思い出し笑い?ムッツリすけべ」
「……男だからな」
「誤魔化すなよ~。どんなことを想像していたわけ?」
「早瀬のことだ。失恋の痛手を負っていたから心配をしていた。今は元気だ。新しい出会いがあったらしい」
「気になっていたよ」
早瀬さんは良い人だ。きっと相手のことを大事にすると思う。元気になってもらえてよかった。しかし、黒崎の苦笑が気になった。
「相手が誰なのか、気づかないのか?名前が出ることはないのか?」
「ええ?誰から?」
誰なのか思い巡らせていると、悠人のことを思い出した。あのモップ事件の後も、よく食事へ行っている話をしていた。けっこう気が合っていることも。
「まさか悠人のこと?ご飯を食べに行っているそうだよ。最近は何も聞いていないけど。悠人と付き合っているの?」
「それが、悠人君に逃げられているらしい。だから悠人君はお前に話さなかったんだろう。心配を掛けるからだ。さすがに今回は上手くいくといい」
黒崎がため息をついた。早瀬さんのことだけでなくて、誰かの恋愛の話題を出したことが珍しい。それを言うと、さすがに責任を感じているからだと、黒崎が言った。それは今から5年前のことだ。黒崎製菓から独立する時に、早瀬さんを秘書へ転属させた頃のことだそうだ。
それまで以上の多忙さで、早瀬さんは付き合っていた人と別れたそうだ。それ以来、誰と付き合っても楽しそうにしていなかったという。そんな早瀬さんが、都内に来る前に付き合っていたとは楽しそうにしていたそうだ。でも、結局は別れてしまい、落ち込んでいたらしい。
「悠人君が心配だ。あえて聞く必要はないが、何か言いたそうにしていれば、話を聞いてくれ。早瀬に釘を刺す」
「黒崎さんとは違うよ~。エロくないだろうし、紳士的だよ」
「そうか……」
黒崎が肩を揺らして笑い出した。俺が紳士的じゃないと言いたいのか?と言いながら。当たり前だ。頬をつねられて、毎朝泣かされて車から降りていた。それをはっきり教えてやると、黒崎が言葉に詰まっていた。そして、嫌そうな顔をせずに、優しい苦笑いという、こっちの方こそ戸惑う顔を向けられた。何だか気恥ずかしくなり、そそくさと下へ降りて行った。
いつもよりも早く目が覚めた。また寝ようとしたけれど、すぐに起きる時間になるから、起きておくことにした。だから黒崎とはイチャつけない。昨夜たっぷり触れ合ったのに、黒崎の方は足りないようだ。風邪が治ったばかりだから、無理をさせたくないと言いながらも、俺の体に触れている。
お互いに密着して眠るのが、俺達の定番スタイルだ。毎回のように黒崎の腕の中に閉じ込められて、暑くて堪らなくなる。抜け出しても、すぐに引き戻されてしまう。
「離れるな……」
「暑いよ~」
「ここにいろ……」
どうやら黒崎は寝ぼけているようだ。少しでも涼しくなろうと、シーツを足でめくった。空調からの風が当たってホッとしていると、暑さが戻った。また抱き枕のようになったからだ。
「お前は寝転がっていろ」
「黒崎さんっ、平日だよ。もう起きるよ」
「夏樹、少しだけだ……」
「んん……」
パジャマの中に手が入って来た。諦めて身を任せているうちに、また暑くなってきた。黒崎が微睡みながら過ごしているのは、一か月半ぶりだ。平日の夜は会食が入り、休日でも朝から書類を読んでいるからだ。ゴルフ接待がないとは言え、完全に休んでいない。
「黒崎さん、大好きだよ……」
「そうか。証拠を見せてみろ」
「えろじじい」
「言われなくても自覚している。俺にとっての原動力だ」
黒崎が起き上がった。少しだけ乱れた髪と、まだ眠そうに細められた目元と、何も着ていない上半身がかっこいいと思った。
「ふふん、ふふん、うへへ……。もう起きるよ。わあーー」
ベッドから降りた途端に、腰がフラついてバランスを崩してしまった。床に倒れ込みそうになったところを、黒崎の腕に支えられた。すけべたらしい笑い方をしたから、耳たぶを引っ張ってやった。
「そういえば。早瀬さんのこと誘ってくれた?ご飯を食べる話だよ」
「ああ、誘った。返事待ちだ」
「思い出し笑い?ムッツリすけべ」
「……男だからな」
「誤魔化すなよ~。どんなことを想像していたわけ?」
「早瀬のことだ。失恋の痛手を負っていたから心配をしていた。今は元気だ。新しい出会いがあったらしい」
「気になっていたよ」
早瀬さんは良い人だ。きっと相手のことを大事にすると思う。元気になってもらえてよかった。しかし、黒崎の苦笑が気になった。
「相手が誰なのか、気づかないのか?名前が出ることはないのか?」
「ええ?誰から?」
誰なのか思い巡らせていると、悠人のことを思い出した。あのモップ事件の後も、よく食事へ行っている話をしていた。けっこう気が合っていることも。
「まさか悠人のこと?ご飯を食べに行っているそうだよ。最近は何も聞いていないけど。悠人と付き合っているの?」
「それが、悠人君に逃げられているらしい。だから悠人君はお前に話さなかったんだろう。心配を掛けるからだ。さすがに今回は上手くいくといい」
黒崎がため息をついた。早瀬さんのことだけでなくて、誰かの恋愛の話題を出したことが珍しい。それを言うと、さすがに責任を感じているからだと、黒崎が言った。それは今から5年前のことだ。黒崎製菓から独立する時に、早瀬さんを秘書へ転属させた頃のことだそうだ。
それまで以上の多忙さで、早瀬さんは付き合っていた人と別れたそうだ。それ以来、誰と付き合っても楽しそうにしていなかったという。そんな早瀬さんが、都内に来る前に付き合っていたとは楽しそうにしていたそうだ。でも、結局は別れてしまい、落ち込んでいたらしい。
「悠人君が心配だ。あえて聞く必要はないが、何か言いたそうにしていれば、話を聞いてくれ。早瀬に釘を刺す」
「黒崎さんとは違うよ~。エロくないだろうし、紳士的だよ」
「そうか……」
黒崎が肩を揺らして笑い出した。俺が紳士的じゃないと言いたいのか?と言いながら。当たり前だ。頬をつねられて、毎朝泣かされて車から降りていた。それをはっきり教えてやると、黒崎が言葉に詰まっていた。そして、嫌そうな顔をせずに、優しい苦笑いという、こっちの方こそ戸惑う顔を向けられた。何だか気恥ずかしくなり、そそくさと下へ降りて行った。
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