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写真の中の拓海さんは、優しそうな笑顔を浮かべていた。黒崎の手を引いて庭を散歩している写真があった。お手伝いさんが撮ってくれたのだろうという話だった。この頃、黒崎はお義父さんやママとはあまり話さず、拓海さんやお手伝いさんに育てられたのだと言った。それが今では変わった。頻繁にお義父さんが訪ねてくるからだ。そして、お義父さんの若い頃の写真を見つけた。黒崎と一緒に写っている。
「黒崎さーん。嫌がるなよ」
「あの父がな。こうしてアルバムを持ってくるようになるとは……」
「写真の黒崎さん、6歳の頃だってさ。無垢な感じだね~。拓海さんは、お義父さんに似ているね?優しそうな人だね。会ってみたかったよ」
ゆっくりと眺めながら開いていくと、小学校1年生の夏休みの日付のものを見つけた。その写真を見た時、驚いた。キリッとした表情の男の子が写っていたからだ。今の黒崎の雰囲気がある。
「今の黒崎さんだよ!4月は可愛いと思ったけど、急に雰囲気が変わったね?」
「変わったはずだ。この家に引っ越してきて、最初の夏休みだ。来客が多くて、背筋を伸ばして挨拶する習慣がついた」
「そっか。これはピアノコンクールのやつだよ~」
アルバムの後半には、ステージで演奏しているものや、表彰されている写真があった。どれも笑顔の写真だけれど、小さな子供らしくないと思って、胸が痛くなった。キリッとした目元で、口元だけ笑みの形をしていたからだ。これは口にしないでおこう。黒崎の方は書類を読みながら、たまに視線を向けて来る。
パラパラと開いていると、やっと子供らしい笑顔を見つけることが出来た。これも夏休みのものだ。庭の池のそばに座り、犬のアヤノちゃんと遊んでいる。全体が白い毛におおわれていて、耳だけが茶色の子犬だ。
「嬉しそうな顔だね~。食べているのはマフィンだ。あ、こっちは庭の木だ。この家の近くっぽい。あ、やっぱりそうだ。この道があるってことは……」
屈託のない笑顔の男の子が、大きな木の幹にもたれ掛かっている。木はナツツバキだ。どれも拓海さんが撮ってくれたものだということだった。そして、さらにページを開こうとした時に、あることを思いついた。俺達のアルバムが無いから、作りたくなった。
「黒崎さーん。俺、写真嫌いを克服してよかった。俺達のアルバムを作ろうよ」
「そうだったな。撮った写真が30枚近くあるだろう?」
「うん。目に見える形の記念を残したい」
「お前の子供時代の写真も見たい」
「お母さんに頼んでみる。……さっそくラインを送るよ。……『アルバムを作りたいから、ピックアップして、画像で送ってほしい』……送信!」
こうして頼んでおけば、母が休日に送ってくれるだろう。それをプリンターで印刷して、アルバムに貼り付ける。黒崎と話して、紙のアルバムだけでなくて、デジタルでも作ることにした。そして、あれこれと話しているうちに時間が過ぎて、お互いに出かける支度を始めた。
「黒崎さーん。嫌がるなよ」
「あの父がな。こうしてアルバムを持ってくるようになるとは……」
「写真の黒崎さん、6歳の頃だってさ。無垢な感じだね~。拓海さんは、お義父さんに似ているね?優しそうな人だね。会ってみたかったよ」
ゆっくりと眺めながら開いていくと、小学校1年生の夏休みの日付のものを見つけた。その写真を見た時、驚いた。キリッとした表情の男の子が写っていたからだ。今の黒崎の雰囲気がある。
「今の黒崎さんだよ!4月は可愛いと思ったけど、急に雰囲気が変わったね?」
「変わったはずだ。この家に引っ越してきて、最初の夏休みだ。来客が多くて、背筋を伸ばして挨拶する習慣がついた」
「そっか。これはピアノコンクールのやつだよ~」
アルバムの後半には、ステージで演奏しているものや、表彰されている写真があった。どれも笑顔の写真だけれど、小さな子供らしくないと思って、胸が痛くなった。キリッとした目元で、口元だけ笑みの形をしていたからだ。これは口にしないでおこう。黒崎の方は書類を読みながら、たまに視線を向けて来る。
パラパラと開いていると、やっと子供らしい笑顔を見つけることが出来た。これも夏休みのものだ。庭の池のそばに座り、犬のアヤノちゃんと遊んでいる。全体が白い毛におおわれていて、耳だけが茶色の子犬だ。
「嬉しそうな顔だね~。食べているのはマフィンだ。あ、こっちは庭の木だ。この家の近くっぽい。あ、やっぱりそうだ。この道があるってことは……」
屈託のない笑顔の男の子が、大きな木の幹にもたれ掛かっている。木はナツツバキだ。どれも拓海さんが撮ってくれたものだということだった。そして、さらにページを開こうとした時に、あることを思いついた。俺達のアルバムが無いから、作りたくなった。
「黒崎さーん。俺、写真嫌いを克服してよかった。俺達のアルバムを作ろうよ」
「そうだったな。撮った写真が30枚近くあるだろう?」
「うん。目に見える形の記念を残したい」
「お前の子供時代の写真も見たい」
「お母さんに頼んでみる。……さっそくラインを送るよ。……『アルバムを作りたいから、ピックアップして、画像で送ってほしい』……送信!」
こうして頼んでおけば、母が休日に送ってくれるだろう。それをプリンターで印刷して、アルバムに貼り付ける。黒崎と話して、紙のアルバムだけでなくて、デジタルでも作ることにした。そして、あれこれと話しているうちに時間が過ぎて、お互いに出かける支度を始めた。
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