アイアンエンジェル~あの日の旋律

夏目奈緖

文字の大きさ
189 / 283

25-5

しおりを挟む
 13時。

 学食で昼ご飯を食べた後、学生ホールにやって来た。ここには楽器が弾ける部屋がある。今日は3時限目の授業がないから、4時限目の量子学が始まるまで、ここで悠人とバンドの練習をしようという話になった。コンテストは8月にある。オリジナルをやらないといけない。用意する曲は、悠人が作曲したものを選んだ。それには歌詞をつけないといけない。メンバーで歌詞を選んだけれど、どれがいいのか迷ってしまい、ボーカルの俺が歌詞をつけることになった。初めてのことで緊張している。

 今、悠人がギターを弾いている。今回のコンテストで弾く曲だ。そばには森本と山崎がいる。そして、初めて会う子も来ている。山崎とは同じ高校だった真羽時矢しんばときや君という友達だ。学食で一緒になり、悠人の演奏が聴きたいというので、一緒にここに来た。すると、全部弾き終わった悠人から声をかけられた。

「なつきー。これに歌詞をつけてほしいんだーー」
「緊張するよ~」
「黒崎さんにピアノで弾いてもらえるんだよね?歌詞がつけやすいね!」
「うん。弾いてくれるそうだよ」
「はい。これだよ」
「ありがとう」

 悠人から譜面を受け取った。ピアノ用の楽譜だ。彼はおばあちゃんからピアノを習ったことがあるそうで、黒崎が演奏を聴きたがっていた。明後日うちに来たとき、弾いてもらいたくて頼んだところだ。悠人からはOKの返事をもらえた。

 この部屋にはキーボードもある。俺が作詞しやすいようにと、悠人がキーボードで曲を弾いてくれた。とても上手で驚いた。そして、普段は落ち着きが無いという彼が、音楽を奏でている間は落ち着いているということも知った。

「悠人って、弾いているときは別人みたいだよ」
「よく言われるよ。弾いているときは静かにできるんだよーー。あれ?山崎が寝ているよーー。ここで寝たら風邪を引くよ。クーラーが強めだからさーー」
「山崎!起きておいた方がいいぞーー」

 いつの間にか、山崎が椅子に座ったままで寝息を立てていた。真羽が彼に声をかけた。しかし、起きない。

 山崎は昨日は遅くまで服作りをしていたそうだ。彼はファッションが好きで、自分でデザインした服を作っている。お姉さんが服飾メーカーに勤めているそうで、その影響もあるそうだ。そして、将来はプラセルコーポレーションに就職したいと言っていた。

 俺はその名前を聞いた時、胸がドキッとした。島川さんが社長を務めている会社だからだ。嫌みを言われて以来、モヤモヤしている。でも、手紙で謝ってもらったし、お菓子も届けて貰った。もう忘れた方が良いと思っている。それでも、心の中に引っかかったままだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

嘘つき王と影の騎士

篠雨
BL
「俺の役割は、貴方を守ることだ。……例え、貴方自身からも」 国の平穏を一身に背負い、十二年間「聖王」という偶像を演じ続けてきたセシル。 酷使し続けた心身はすでに限界を迎え、その命の灯火は今にも消えようとしていた。 そんな折、現れたのは異世界からの「転移者」。 代わりを見つけた国は、用済みとなったセシルからすべてを剥奪し、最果ての地へと追放する。 死を待つためだけに辿り着いた冬の山。 絶望に沈むセシルの前に現れたのは、かつて冷徹に王を監視し続けていた近衛騎士団長、アルヴィスだった。 守るべき王も、守るべき国も失ったはずの二人が過ごす、狭い小屋での夜。 無価値になり、壊れかけた自分を、なぜこの男は、そんな瞳で見つめるのか。 なぜ、そんなにも強く、抱きしめるのか。 これは、すべてを失った「聖王」が、一人の男の熱に暴かれ、再生していくまでの物語。

悠と榎本

暁エネル
BL
中学校の入学式で 衝撃を受けた このドキドキは何なのか そいつの事を 無意識に探してしまう 見ているだけで 良かったものの 2年生になり まさかの同じクラスに 俺は どうしたら・・・

死ぬほど嫌いな上司と付き合いました【完結】

三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。 皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。 涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥ 上司×部下BL

とある執事の日常 ~お嬢様の中身は恐らくギャル~

冬兎
ファンタジー
うちのお嬢様は絶対におかしい。 「道路やばくない? 整備しよ」 「孤児院とか作ったら?」 「困ってる人助けるのなんか当たり前っしょ」 貴族令嬢らしからぬ口調で突拍子もない提案を次々とぶつけてくるお嬢様、レティシア・リオネール。執事の俺、クラウスは今日も彼女の無茶振りに振り回される。 不思議なことに、お嬢様の理想論は必ず実現し効果を発揮する。 孤児院は完成し、医療制度は整い、領地は驚異的に発展していく。 元勇者の伯爵様、脳筋騎士団長、くのいちメイド長、双子の妹たち―― 濃すぎる面々に囲まれながら、俺は今日もお嬢様の思いつきを形にしていく。 気づけば、振り回されることに悦びを感じ始めている俺はもう手遅れかもしれない。 R8.1.20 投稿開始

ある日、友達とキスをした

Kokonuca.
BL
ゲームで親友とキスをした…のはいいけれど、次の日から親友からの連絡は途切れ、会えた時にはいつも僕がいた場所には違う子がいた

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

純白のレゾン

雨水林檎
BL
《日常系BL風味義理親子(もしくは兄弟)な物語》 この関係は出会った時からだと、数えてみればもう十年余。 親子のようにもしくは兄弟のようなささいな理由を含めて、少しの雑音を聴きながら今日も二人でただ生きています。

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。

紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※表紙をAI君に描いてもらいました。(2026.2.21) ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。

処理中です...