アイアンエンジェル~あの日の旋律

夏目奈緖

文字の大きさ
190 / 283

25-6

しおりを挟む
 真羽が山崎の肩をゆすった。でも、起きようとしない。そして、だんだんと姿勢が崩れてきて、真羽にもたれかかってしまった。
 
「熟睡しているぞ」
「起きないねーー」
「山崎!起きろ!」
「んん?」

 森本が声をかけると、山崎の体が動いた。そして、真羽の膝枕で寝ていたことに気づき、驚いていた。

「あれ?俺、寝ていたんだなーー」
「ああ。疲れているんだろう。ここはクーラーが強い。起きた方が良い。風邪を引くぞ」
「あ、ありがとう。昨夜、レポート課題も仕上げていたんだーー」
「あれか。大変だったな」
「森本は終わったの?」
「ああ。終わった」
「俺も終わったから服を作っていたんだ」

 山崎が起き上がって、大きくのびをした。その課題は俺達もやったところだ。やっと落ち着ついたといったところだ。でも、来月になると試験があり、また大きな波がやってくる。お互いに肩をたたき合い、頑張ろうと励まし合った。

 山崎はいつも元気だけれど、今日はやつれてみえた。その理由を教えてくれた。プラセルコーポレーションが開催するデザイン教室があり、その受講を目指しているそうだ。それに参加するには、自分がデザインしたものを提出する必要がある。それを昨夜、仕上げていたということだ。

 それに引き換え、自分は将来の目標が定まっていない。黒崎からは、もっとゆっくりしろと言われている。お義父さんから勧められた通り、黒崎製菓のインターンシップに参加すれば、将来の目標が見えてくるだろうか。しかし、焦りが生まれたものの、今が楽しいから、将来のことを考えられないことに気づいた。するとその時だ。悠人がもう一枚の譜面を見せてくれた。

「これさ。曲の最後を直した分なんだ。どっちに歌詞がつけやすいか選んで欲しい」
「うん!」
「ため息をついてどうしたんだよ?」
「うん。楽しいなあって思っていたんだ」
「ふむふむ。俺も楽しいよ」
「でも、緊張しているんだ」
「コンテストは8月だよ。俺は焦っているよー」
「え?マジで?そんなに見えないよ」
「なつきーー。ちょっとは肩の力を抜けよーー」

 悠人から肩を叩かれた。この間とは逆だ。早瀬さんとのことを悩んでいる悠人から、俺は黒崎との関係に憧れられた。そして、アドバイスのようなことも言った。それが今日は反対だ。

 やっぱり今日の自分は落ち込んでいるのだろうか。ここにいるメンバーから背中をさすられたり、肩を叩かれたりした。大学もバンドも楽しい。心からそう思った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

雪を溶かすように

春野ひつじ
BL
人間と獣人の争いが終わった。 和平の条件で人間の国へ人質としていった獣人国の第八王子、薫(ゆき)。そして、薫を助けた人間国の第一王子、悠(はる)。二人の距離は次第に近づいていくが、実は薫が人間国に行くことになったのには理由があった……。 溺愛・甘々です。 *物語の進み方がゆっくりです。エブリスタにも掲載しています

貢がせて、ハニー!

わこ
BL
隣の部屋のサラリーマンがしょっちゅう貢ぎにやって来る。 隣人のストレートな求愛活動に困惑する男子学生の話。 社会人×大学生の日常系年の差ラブコメ。 ※この物語はフィクションです。 ※現時点で小説の公開対象範囲は全年齢となっております。しばらくはこのまま指定なしで更新を続ける予定ですが、アルファポリスさんのガイドラインに合わせて今後変更する場合があります。(2020.11.8) ■2025.12.14 285話のタイトルを「おみやげ何にする? Ⅲ」から変更しました。 ■2025.11.29 294話のタイトルを「赤い川」から変更しました。 ■2024.03.09 2月2日にわざわざサイトの方へ誤変換のお知らせをくださった方、どうもありがとうございました。瀬名さんの名前が僧侶みたいになっていたのに全く気付いていなかったので助かりました! ■2024.03.09 195話/196話のタイトルを変更しました。 ■2020.10.25 25話目「帰り道」追加(差し込み)しました。話の流れに変更はありません。

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

【完結】嘘はBLの始まり

紫紺
BL
現在売り出し中の若手俳優、三條伊織。 突然のオファーは、話題のBL小説『最初で最後のボーイズラブ』の主演!しかもW主演の相手役は彼がずっと憧れていたイケメン俳優の越前享祐だった! 衝撃のBLドラマと現実が同時進行! 俳優同士、秘密のBLストーリーが始まった♡ ※番外編を追加しました!(1/3)  4話追加しますのでよろしくお願いします。

後宮に咲く美しき寵后

不来方しい
BL
フィリの故郷であるルロ国では、真っ白な肌に金色の髪を持つ人間は魔女の生まれ変わりだと伝えられていた。生まれた者は民衆の前で焚刑に処し、こうして人々の安心を得る一方、犠牲を当たり前のように受け入れている国だった。 フィリもまた雪のような肌と金髪を持って生まれ、来るべきときに備え、地下の部屋で閉じ込められて生活をしていた。第四王子として生まれても、処刑への道は免れられなかった。 そんなフィリの元に、縁談の話が舞い込んでくる。 縁談の相手はファルーハ王国の第三王子であるヴァシリス。顔も名前も知らない王子との結婚の話は、同性婚に偏見があるルロ国にとって、フィリはさらに肩身の狭い思いをする。 ファルーハ王国は砂漠地帯にある王国であり、雪国であるルロ国とは真逆だ。縁談などフィリ信じず、ついにそのときが来たと諦めの境地に至った。 情報がほとんどないファルーハ王国へ向かうと、国を上げて祝福する民衆に触れ、処刑場へ向かうものだとばかり思っていたフィリは困惑する。 狼狽するフィリの元へ現れたのは、浅黒い肌と黒髪、サファイア色の瞳を持つヴァシリスだった。彼はまだ成人にはあと二年早い子供であり、未成年と婚姻の儀を行うのかと不意を突かれた。 縁談の持ち込みから婚儀までが早く、しかも相手は未成年。そこには第二王子であるジャミルの思惑が隠されていて──。

【完結】君を知らないまま、恋をした

一ノ瀬麻紀
BL
体調を崩し入院した篠宮真白(しのみやましろ)は、制限のある生活を送ることになった。 そんな中、真白は自由に走り回れるもう一つの世界を知る。 そこで過ごす時間は、思うように動けなかった真白にとって、大切なものだった。 仮想空間での出会いや経験を通して、真白の世界は少しずつ広がっていく。 そして真白が本当の気持ちに気づいた時、すべてが繋がり始める――。 ※ タイトル及びあらすじ変更しました。(2/10)

思い出して欲しい二人

春色悠
BL
 喫茶店でアルバイトをしている鷹木翠(たかぎ みどり)。ある日、喫茶店に初恋の人、白河朱鳥(しらかわ あすか)が女性を伴って入ってきた。しかも朱鳥は翠の事を覚えていない様で、幼い頃の約束をずっと覚えていた翠はショックを受ける。  そして恋心を忘れようと努力するが、昔と変わったのに変わっていない朱鳥に寧ろ、どんどん惚れてしまう。  一方朱鳥は、バッチリと翠の事を覚えていた。まさか取引先との昼食を食べに行った先で、再会すると思わず、緩む頬を引き締めて翠にかっこいい所を見せようと頑張ったが、翠は朱鳥の事を覚えていない様。それでも全く愛が冷めず、今度は本当に結婚するために翠を落としにかかる。  そんな二人の、もだもだ、じれったい、さっさとくっつけ!と、言いたくなるようなラブロマンス。

処理中です...