アイアンエンジェル~あの日の旋律

夏目奈緖

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 黒崎のことを呼ぶと、早瀬さんが悠人の元へ行った。そして、二人が仲よさそうに話し始めた。ちょうど良いタイミングだったようだ。

「黒崎さーん。手伝ってよーー」
「どうした?」
「こっちに来て。キッチンの高い所の物を取りたいから……」

 キッチンへ入り、冷蔵庫の前へ行った。すっかり喉が渇いてしまったから、麦茶を飲もうと思った。そして、冷蔵庫のドアを開いたときに、開けたのに、後ろから伸びてきた腕が扉を閉めた。

「黒崎さん?あ……っ」
「おまたせ」

 耳元で熱っぽい声が響いた後、首の後ろに熱い息がかかった。そして、Tシャツの中に、黒崎の手が入ってきた。

「黒崎さーん。外にはみんながいるよ~」
「俺のことを呼んでいただろう」
「誘ってないよ~っ。甘い囁きだけでもいいからって思ったけどさ……」
「望みどおりにしてやる。どうしてほしい?」
「甘い囁きだけが望みだよ!」
「こっちの望みは丸かじりだ」
「オーダーミスだよ~っ」
「……時間切れだ」
「……っ」

 首の後ろに歯を立てられた。痛くはない。優しい力だ。そのまま音を立てて吸い付かれて、前に回された腕が絡みついた。そして、冷蔵庫の扉に体を押し付けられた後、Tシャツをまくり上げられて、背筋に触られた。

「汗かいてるから……っ」
「今更だ。気にならない」
「外にみんながいるよ~」
「テラス窓は閉めた。玄関を入れば、すぐに分かる。それまで続けるぞ」
「今夜にしようよ~」
「手早く済ます。夜はゆっくり抱く」
「やめろって……」
「逃げるな。ますます燃えるぞ」
「ヘンタイ!」
「夏樹……、こうしたかった」
「もう……っ」

 ここでもいいか。そう思って力を抜いた時、インターフォンが鳴って来訪者を告げた。オードブルの出前が届く時間だ。ちょうど良かった。

「出前だ!黒崎さーん、受け取ろうね」
「ああ……」

 残念そうにため息をついている黒崎の背中を押して、玄関へ向かった。
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