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15時半。
早瀬さんが切ってくれたフルーツとお義父さんからの差し入れの和菓子を食べた後、グランドピアノの周りにみんなが集まった。ピアノのそばに立ち、聡太郎がヴァイオリンで短いフレーズを弾いた後、早瀬さんにヴァイオリンを差し出した。これから早瀨さんの演奏だ。そして、演奏を聴き、その音色が華やかだったから驚いた。聡太郎の方も同じ感想で、てっきり落ち着いた音色かと想像していたのにと言っていた。
「早瀬さんの音色は華やかですね」
「そうだな。落ち着いた音色を出すと思っていただろう?」
「ははは、そうですか?」
聡太郎と早瀨さんが微笑み合った。それを見ている悠人が遠慮しているようだ。話に入らないようにしている。なんだか手持ち無沙汰のようだから、悠人をピアノの方へ促した。彼の演奏を聴いてみたい。それを言うと、悠人が頷いた。
「うん。そうだねー。黒崎さん、ピアノを弾いてもいいですか?」
「ああ、もちろんだ」
「夏樹はジャズを歌うのが好きだよね?それを弾くよー」
「悠人君はジャズをやるのか……」
「けっこう好きなんです。間違えたらごめんなさい」
悠人が照れくさそうに笑った後、鍵盤に指を滑らせた。最初の一音が鳴り響き、演奏が始まった。その音色を聴いて、思わず声が出てしまった。それは繊細な音だったからだ。弾いている姿は静かだ。元気に走り回っている姿からは想像できない。
悠人が弾いているのは1950年頃の曲で、しっとりとしたものだ。 黒崎が感心したような溜め息を漏らした。かなり上手だと言っている。遠藤さんも同じ意見だ。
「中学生の時から弾いていないそうですよ」
「勿体ない。聴き手が引き込まれる」
「ほら、喋っているようだ。桜木君、そう聴こえないか?」
「悠人君の笑い声みたいです。ギターも同じですよ。俺たちは、お喋りギターって呼んでいます」
悠人の演奏が終わった後、歓声と拍手が起きた。ところどころ失敗したのにと言い、驚いていた。ピアノを弾いている間は繊細な感じの子に見えたけれど、普段通りの元気な子に戻った。みんなが笑うと、顔を赤くさせていた。そういう彼を見て、遠藤さんがリクエストした。
「悠人君。もう一曲聴きたい。得意な曲がいい」
「はいっ。得意なやつが選べないので、自分が作った曲でもいいですか?」
「もちろんだ」
「はいっ」
悠人が早瀬さんの方を見た。そして、彼から頷き返された後、悠人が鍵盤へ向かった。俺達は室内に響き渡った音に身を任せた。それは明るいバラードだと思った。恋人同士が楽しそうに話している光景が浮かんだからだ。早瀬さんとのことだろうか?そう思っていると、演奏が止まった。さらに演奏が始まり、それは静かなイメージの曲だと思った。すると、悠人が俺の方を見ていた。
「なつきー、お願いがあるんだけど……」
「どうしたんだよ?」
「この曲に歌詞を付けてほしいんだ」
「……面白そうだ。夏樹、いつもの即興で歌ってみてくれ」
「ええ?難しいよ~」
「やってみよう。悠人君はどうだ?」
「もちろんOKです。夏樹、お願いしてもいい?」
「う、うん……。緊張するけど……」
黒崎が真面目な顔をしているから、余計に緊張してきた。こういう時は意地悪なことをやってもらいたい。余計に緊張してきた。悠人が鍵盤でフレーズを弾いた後、手招きしてきた。
「通して弾くからね。何回か弾くよ」
「うん。分かった……」
悠人の目が輝いていた。彼の旋律に身を任せて、頭に情景を浮かべた。すると、黒崎との思い出が浮かんだ。まだ心のドアを開けてもらえなかった頃だ。それを即興で詩にしようと思った。
「悠人、準備が出来たよ」
「じゃあー、いこう!」
悠人が深呼吸をして、最初のフレーズを弾き始めた。そして、繊細で優しい音色が室内へ響き渡り、空気じたいが変わった。俺もその仲間入りがしたいと思った時、緊張感と、楽しいという気持ちが沸き起こった。
早瀬さんが切ってくれたフルーツとお義父さんからの差し入れの和菓子を食べた後、グランドピアノの周りにみんなが集まった。ピアノのそばに立ち、聡太郎がヴァイオリンで短いフレーズを弾いた後、早瀬さんにヴァイオリンを差し出した。これから早瀨さんの演奏だ。そして、演奏を聴き、その音色が華やかだったから驚いた。聡太郎の方も同じ感想で、てっきり落ち着いた音色かと想像していたのにと言っていた。
「早瀬さんの音色は華やかですね」
「そうだな。落ち着いた音色を出すと思っていただろう?」
「ははは、そうですか?」
聡太郎と早瀨さんが微笑み合った。それを見ている悠人が遠慮しているようだ。話に入らないようにしている。なんだか手持ち無沙汰のようだから、悠人をピアノの方へ促した。彼の演奏を聴いてみたい。それを言うと、悠人が頷いた。
「うん。そうだねー。黒崎さん、ピアノを弾いてもいいですか?」
「ああ、もちろんだ」
「夏樹はジャズを歌うのが好きだよね?それを弾くよー」
「悠人君はジャズをやるのか……」
「けっこう好きなんです。間違えたらごめんなさい」
悠人が照れくさそうに笑った後、鍵盤に指を滑らせた。最初の一音が鳴り響き、演奏が始まった。その音色を聴いて、思わず声が出てしまった。それは繊細な音だったからだ。弾いている姿は静かだ。元気に走り回っている姿からは想像できない。
悠人が弾いているのは1950年頃の曲で、しっとりとしたものだ。 黒崎が感心したような溜め息を漏らした。かなり上手だと言っている。遠藤さんも同じ意見だ。
「中学生の時から弾いていないそうですよ」
「勿体ない。聴き手が引き込まれる」
「ほら、喋っているようだ。桜木君、そう聴こえないか?」
「悠人君の笑い声みたいです。ギターも同じですよ。俺たちは、お喋りギターって呼んでいます」
悠人の演奏が終わった後、歓声と拍手が起きた。ところどころ失敗したのにと言い、驚いていた。ピアノを弾いている間は繊細な感じの子に見えたけれど、普段通りの元気な子に戻った。みんなが笑うと、顔を赤くさせていた。そういう彼を見て、遠藤さんがリクエストした。
「悠人君。もう一曲聴きたい。得意な曲がいい」
「はいっ。得意なやつが選べないので、自分が作った曲でもいいですか?」
「もちろんだ」
「はいっ」
悠人が早瀬さんの方を見た。そして、彼から頷き返された後、悠人が鍵盤へ向かった。俺達は室内に響き渡った音に身を任せた。それは明るいバラードだと思った。恋人同士が楽しそうに話している光景が浮かんだからだ。早瀬さんとのことだろうか?そう思っていると、演奏が止まった。さらに演奏が始まり、それは静かなイメージの曲だと思った。すると、悠人が俺の方を見ていた。
「なつきー、お願いがあるんだけど……」
「どうしたんだよ?」
「この曲に歌詞を付けてほしいんだ」
「……面白そうだ。夏樹、いつもの即興で歌ってみてくれ」
「ええ?難しいよ~」
「やってみよう。悠人君はどうだ?」
「もちろんOKです。夏樹、お願いしてもいい?」
「う、うん……。緊張するけど……」
黒崎が真面目な顔をしているから、余計に緊張してきた。こういう時は意地悪なことをやってもらいたい。余計に緊張してきた。悠人が鍵盤でフレーズを弾いた後、手招きしてきた。
「通して弾くからね。何回か弾くよ」
「うん。分かった……」
悠人の目が輝いていた。彼の旋律に身を任せて、頭に情景を浮かべた。すると、黒崎との思い出が浮かんだ。まだ心のドアを開けてもらえなかった頃だ。それを即興で詩にしようと思った。
「悠人、準備が出来たよ」
「じゃあー、いこう!」
悠人が深呼吸をして、最初のフレーズを弾き始めた。そして、繊細で優しい音色が室内へ響き渡り、空気じたいが変わった。俺もその仲間入りがしたいと思った時、緊張感と、楽しいという気持ちが沸き起こった。
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