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お義父さんが、この話を静かに聞いてくれた。すごく泣いてくれたのだろう。まだ両目が充血している。
ここで目を覚ました時には、こうして、お義父さんがいてくれた。喘息で入院していた子供時代の黒崎は、目を覚ましても誰もいなかったのかもしれない。小さな子供の左手の甲に点滴の針が刺さっていた。痛みを我慢して、両親が来るのを待っていただろう。拓海さんが来てくれてよかった。責めるわけではない。こうして泣いている人だ。何も言えない。
「隆さん。泣かないで」
「いや……、すまない」
「大丈夫だよ。俺はここに居るよ」
「夏樹ちゃん。こんな時に言うのは……、頼みたいことがある」
「いいよ?なに?」
「私の息子になってもらえないだろうか?」
「もう息子だよ?」
「いや、養子になってもらいたい。法的にも息子になってもらいたい」
「黒崎さんがいるじゃん……」
「私には、生きている息子が8人いる。去年倒れた時、病院へ駆けつけてくれたのは圭一だけだった。あの子は一人だ。全て私が悪い。夏樹ちゃんはパートナーだ。それでも私の息子として、育てさせてもらえないか?」
「隆さん……」
どう答えたらいいのだろう?想像もしていなかった話だ。さらにお義父さんが言った。
「今回はこの病院へ運ばれたから、今ここに居られる。家族ではないから、医師からの説明を受けられない可能性があった。……反対に、圭一が搬送される場合もあるだろう。養子縁組は私と夏樹ちゃんの関係でも、圭一とは家族として見られる。ご両親には、私から頭を下げる」
お義父さんが泣いている。自分も思っていたことだ。黒崎が倒れた時、どうしようかと。何か手だてはあるだろう。自分はどうしたいのか?
両親から問いかけられた言葉を思い出した。都内に出発する前日のことだ。実家の父からこう言われた。
(……間違った道なら正す、そうでなければ、意志を大事にする。やれるだけやりなさい。納得できるまで。後戻りできる勇気があるように、育ててきたつもりだ。リスクを考えて行動することだ)
母からはこう言われた。
(……母親として、現実を話すわよ。黒崎さんの家に行くなら、嫌なことがあると思う。お金目当て、名声が欲しい、どこかに就職すれば、家のコネがあるからだとか、そういう言葉を掛けられるかもしれない。他人なら聞き流せても、親戚の人にも、そういう人がいるかも知れないわよ。黒崎さんのお母さんは、大変な思いをしたのよ。そこへ行こうとしている。それでもいいの?)
(お母さん。黒崎さんを支えたいんだ)
(……しっかりやること。甘い言葉に乗せられないこと。おでられても相手にしないこと。……いい?困る前に連絡してきなさい)
(はい!)
あの日、子供だった自分と別れた。黒崎は、もっとよく考えろと言うだろう。しかし、今回は自分の意志だけで決めて報告する。
「夏樹ちゃん。考えてもらえないか?」
「決めたよ。黒崎家の養子になります。よろしくお願いします」
「ありがとう……」
「黒崎さんには事後承諾だから、叱られそうだよ……」
「私から話す……」
「ううん、まずは俺から話すよ。後でフォローしてほしい。めちゃくちゃ怒りそうだからさ」
お義父さんと顔を見合わせて苦笑した。お互いに無言のままでいると、部屋のドアがノックされた。黒崎が戻って来た。
ここで目を覚ました時には、こうして、お義父さんがいてくれた。喘息で入院していた子供時代の黒崎は、目を覚ましても誰もいなかったのかもしれない。小さな子供の左手の甲に点滴の針が刺さっていた。痛みを我慢して、両親が来るのを待っていただろう。拓海さんが来てくれてよかった。責めるわけではない。こうして泣いている人だ。何も言えない。
「隆さん。泣かないで」
「いや……、すまない」
「大丈夫だよ。俺はここに居るよ」
「夏樹ちゃん。こんな時に言うのは……、頼みたいことがある」
「いいよ?なに?」
「私の息子になってもらえないだろうか?」
「もう息子だよ?」
「いや、養子になってもらいたい。法的にも息子になってもらいたい」
「黒崎さんがいるじゃん……」
「私には、生きている息子が8人いる。去年倒れた時、病院へ駆けつけてくれたのは圭一だけだった。あの子は一人だ。全て私が悪い。夏樹ちゃんはパートナーだ。それでも私の息子として、育てさせてもらえないか?」
「隆さん……」
どう答えたらいいのだろう?想像もしていなかった話だ。さらにお義父さんが言った。
「今回はこの病院へ運ばれたから、今ここに居られる。家族ではないから、医師からの説明を受けられない可能性があった。……反対に、圭一が搬送される場合もあるだろう。養子縁組は私と夏樹ちゃんの関係でも、圭一とは家族として見られる。ご両親には、私から頭を下げる」
お義父さんが泣いている。自分も思っていたことだ。黒崎が倒れた時、どうしようかと。何か手だてはあるだろう。自分はどうしたいのか?
両親から問いかけられた言葉を思い出した。都内に出発する前日のことだ。実家の父からこう言われた。
(……間違った道なら正す、そうでなければ、意志を大事にする。やれるだけやりなさい。納得できるまで。後戻りできる勇気があるように、育ててきたつもりだ。リスクを考えて行動することだ)
母からはこう言われた。
(……母親として、現実を話すわよ。黒崎さんの家に行くなら、嫌なことがあると思う。お金目当て、名声が欲しい、どこかに就職すれば、家のコネがあるからだとか、そういう言葉を掛けられるかもしれない。他人なら聞き流せても、親戚の人にも、そういう人がいるかも知れないわよ。黒崎さんのお母さんは、大変な思いをしたのよ。そこへ行こうとしている。それでもいいの?)
(お母さん。黒崎さんを支えたいんだ)
(……しっかりやること。甘い言葉に乗せられないこと。おでられても相手にしないこと。……いい?困る前に連絡してきなさい)
(はい!)
あの日、子供だった自分と別れた。黒崎は、もっとよく考えろと言うだろう。しかし、今回は自分の意志だけで決めて報告する。
「夏樹ちゃん。考えてもらえないか?」
「決めたよ。黒崎家の養子になります。よろしくお願いします」
「ありがとう……」
「黒崎さんには事後承諾だから、叱られそうだよ……」
「私から話す……」
「ううん、まずは俺から話すよ。後でフォローしてほしい。めちゃくちゃ怒りそうだからさ」
お義父さんと顔を見合わせて苦笑した。お互いに無言のままでいると、部屋のドアがノックされた。黒崎が戻って来た。
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