アイアンエンジェル~あの日の旋律

夏目奈緖

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27-13

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 午前10時半。

 自分のお腹が鳴った音で目を覚ました。まだ鳴っている。今朝、黒崎がお見舞いに来てくれた時にベッドサイドのパネルで朝ごはんを選んだまでは良かったが、提供できませんというメッセージが表示された。看護師さんに聞くと、まだ通常食が食べさせてもらえないことが分かった。

 朝ごはんで出されたのは、おかゆだけだった。パネルを見て、ますます空腹になったことお医者さんへ話し、昼ご飯から通常食を出してもらえることになった。

「お腹すいたよ~。あと少しの我慢だ……」

 1時間前に、両親が来てくれた。昨夜のうちに、黒崎から両親へ養子の話をし、今は黒崎とお義父さんとの4人で、別の場所で話し合っている。俺がゆっくり休めないからだと言っていたけれど、踏み込んだ内容になるからだと思う。

「気になるなあ……」

 黒崎から説明をしてもらえるから、任せるしかない。ここへ来てくれた時、両親は落ち着いていた。容体が安定していたことと、見守ってくれる人がいることで安心していた。母が肩に触れた時、わずかに震えていたことに気づいたが、あえて口にしなかった。

 心配かけてごめんなさい。来てくれてありがとう。この短い言葉だけ交わした。何も考えずにゆっくり寝なさいと、母が笑っていた。本当は泣きたかったのかな?いつも心配ばかり掛けているから、胸が痛くなった。

(……伊吹と合流するまで時間があったからよ。可愛いわね……、か。お母さん、ありがとう……)

 ベッドサイドには、小さな箱に入ったマカロンが置いてある。空港で見つけて買ってきてくれた。これなら日持ちがするし、口の中で溶けるから、寝転がって食べても大丈夫だ。そう思って選んでくれたのだと思う。

(俺は何が出来るかな?いつもしてもらってばかりだ。黒崎さんは与えられてばかりだって言っていたけど。俺だって与えられているんだ。……お母さんには、誰がしてくれているのかな?……お父さんかな?大きな子供だって叱っているから、違うかも)

 こうして心配を掛けている。養子のことも驚いたはずだ。戸惑った顔をしていると、ますます心配を掛けるだろう。カラ元気なのはバレてもいいから、いつもの自分に戻ろうと思った。

「よいしょっと……」

 ベッドから降りた。丸2日も寝ていたから体が痛い。点滴の装置に触らないように立ち上った。左手首は固定されているし、右手には点滴がされている。両足は自由だから平気だ。

 窓辺に立って外を眺めると、飛行機雲が出ていた。下を見ると、3階の中庭があった。たくさんの色が見えている。あれは何だろう?

「そうか。七夕の笹かざりだ。短冊だ~。俺もやりたいな」

 中庭には七夕飾りがあった。大きな笹が何箇所も置かれていた。子供がお母さんと見上げている。子供の方はパジャマを着ているから、入院している子なのだろう。
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