アイアンエンジェル~あの日の旋律

夏目奈緖

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 12時。

 病室でお昼ご飯を食べるところだ。ベッドにセットされた移動式のテーブルの上には、美味しそうな料理が並んでいる。

「わああ~、美味しそう。カレイの葱味噌焼き、車麩と野菜の炒め煮、ミョウガの酢の物。ヨーグルト。こっちの小鉢は……」
「……さすがに少なめだな」
「俺にはちょうどいいよ。500カロリーだってさ。けっこうボリュームあるよ。黒崎さん……」
「……どうした?」
「黒崎さんはウナギなんだね。とんかつも美味しそうだなあ。いっぱい食べるんだね」
「腹が減っているからだ」

 家族も一緒に食べられるように、病室にはテーブルがある。それをベッドのそばへ移動してきて、一緒に食べることにした。黒崎が買ってきたのは、うな重とカツサンドだ。美味しそうな匂いが漂っている。

「いいなあ~」
「入院中は我慢しろ」
「……うっうっ」
「退院後に外食に連れて行ってやる」
「ひと口だけ、お願い~」
「だめだ。そっちの食事が入らなくなる」
「……うっうっ」

 さっき点滴を外された。自由になった右手で、ご飯を食べることが出来る。カツサンドに手を伸ばすと、手首を掴まれて阻止された。

「そっちの食事を食べさせてやるから、今日は我慢しろ」
「……え?マジで?」
「ほら、口を開けろ」
「……ええ?」
「いいのか?やめるぞ?」
「ううん。アーーーーン!」
「そんなに開けなくても構わない」
「アーーン……」
「美味いか?」
「うんっ。ますます美味しいよ~」

 黒崎が苦笑しながら、料理を口に運んでくれた。お茶も飲ませてくれと頼むと、下唇を引っ張られてしまった。

 いつもの様子に戻って食べた後、会社へ出発する黒崎のことを、ベッドの上で見送った。すぐに眠気が起き、寝転がると、そのまま眠りに落ちた。
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