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7月6日、午前10時。
入院4日目になり、すっかり具合が良くなった。熱を出しておらず、左手首の痛みが和らいできた。額の傷もふさがりつつある。
3階の中庭にやって来た。4階の病室から見るよりも広く感じる。整えられた小さな木、煉瓦づくりの小道、アーチ、ベンチが並んでいる。ここは入院患者や見舞客が自由に出入りできる場所だ。
今日はいい天気だ。七夕に合わせて、7本の笹が設置されている。色とりどりの短冊が風に揺れている。その下で、七夕飾りの手伝いをしているところだ。
「夏樹君、こっちはー?」
「それはこっちにしようか。届くー?」
「うん、平気!」
入院患者の男の子2人とボランティアの医学生との4人で作業をやっている。俺もその中に入るきっかけになったのは、自分がいる病棟のロビーに貼ってあったお知らせだった。
『小児病棟で絵本の読み聞かせを行っています。読まなくなった絵本を譲ってください』
それを見て、押入れに入れてある段ボールのことを思い出した。子供の頃に読んでいた絵本が詰まっている。大事に読んだ本達で綺麗だから、この病棟で使ってもらいたい。さっそく黒崎に頼んで持ってきてもらって、昨日の午後に絵本を持って小児科病棟を訪ねると、子供達が集まってきた。それがきっかけで仲良くなり、こうして中庭で作業をしている。
「はい、これで完了だよ」
「やったー!」
「みんなでやると早いね!」
「綺麗にできたね~」
「写真を撮ろうか?」
医学生が七夕飾りへカメラを向けた。この病院のブログと、大学での資料に使うそうだ。俺も写真を撮る手伝いをした。
(今までなら写真を撮ろうともしなかったなあ。俺、成長したなあ……)
モデルの仕事のおかげに違いない。カメラマンの仙頭さんと話しながら撮られているうちに、慣れていた。あれ以来、家でも写真を撮るようになった。黒崎は口には出さないものの、喜んでいる。
(仙頭さん、どうしているかな?)
仙頭さんとは、今でも連絡を取っている。藤沢と3人で食事へ行く話をしたものの、今回の怪我で延期になった。
「……夏樹。楽しんでいるか?」
「……あ、黒崎さーん」
黒崎が中庭にやって来た。今日は休みだから、普段着姿をしている。入院後、毎朝朝6時に来てくれて、ここから会社へ出勤している。仕事帰りにも必ず来てくれて、一日の話をしている。忙しいに決まっているのに続けてくれていた。それも明日の朝までだ。無事に退院が決まって、お互いにホッとしている。黒崎がそばに来ると、子供達が集まってきた。
「……写真を撮っていたのか」
「うん。七夕飾りが出来上がったから」
「そうか。こんにちは」
「こんにちはー」
「こんにちはーっ。絵本ありがとう」
子供達からお礼を言われた黒崎が微笑んだ。すると、医学生が子供達に言った。そろそろ部屋のに戻る時間らしい。
「さあ、ハヤト君、カズ君、部屋に戻ろう」
「まだ居たいよ!」
「だめだよ。時間が決まっているから」
「夏樹君!明日の朝、退院だよね?次はいつ会える?」
「来週の火曜日にここへ来るから、帰りに寄るよ」
「やったー!」
「……」
カズ君が沈んだ顔になった。覗き込むようにして視線を合わせると、唇を噛んでいた。
「どうしたんだよ?」
「医学生のお兄さんたち、いつもそう言うんだ。そのうち来てくれなくなる……。だって、学校の勉強が忙しいからだよ」
「俺は来るよ。時間の約束もするから。火曜日のお昼ご飯が終わった時間に行くよ。点滴している時間だよね?」
「うん!待っているよ!」
2人の頭を撫でた後、医学生達に手を振った。彼らも手を振り返してくれた。みんなが七夕飾りを見て話し始めた。その様子を見ながら出入り口のそばへ到着し、堪えていた笑いが爆発した。
入院4日目になり、すっかり具合が良くなった。熱を出しておらず、左手首の痛みが和らいできた。額の傷もふさがりつつある。
3階の中庭にやって来た。4階の病室から見るよりも広く感じる。整えられた小さな木、煉瓦づくりの小道、アーチ、ベンチが並んでいる。ここは入院患者や見舞客が自由に出入りできる場所だ。
今日はいい天気だ。七夕に合わせて、7本の笹が設置されている。色とりどりの短冊が風に揺れている。その下で、七夕飾りの手伝いをしているところだ。
「夏樹君、こっちはー?」
「それはこっちにしようか。届くー?」
「うん、平気!」
入院患者の男の子2人とボランティアの医学生との4人で作業をやっている。俺もその中に入るきっかけになったのは、自分がいる病棟のロビーに貼ってあったお知らせだった。
『小児病棟で絵本の読み聞かせを行っています。読まなくなった絵本を譲ってください』
それを見て、押入れに入れてある段ボールのことを思い出した。子供の頃に読んでいた絵本が詰まっている。大事に読んだ本達で綺麗だから、この病棟で使ってもらいたい。さっそく黒崎に頼んで持ってきてもらって、昨日の午後に絵本を持って小児科病棟を訪ねると、子供達が集まってきた。それがきっかけで仲良くなり、こうして中庭で作業をしている。
「はい、これで完了だよ」
「やったー!」
「みんなでやると早いね!」
「綺麗にできたね~」
「写真を撮ろうか?」
医学生が七夕飾りへカメラを向けた。この病院のブログと、大学での資料に使うそうだ。俺も写真を撮る手伝いをした。
(今までなら写真を撮ろうともしなかったなあ。俺、成長したなあ……)
モデルの仕事のおかげに違いない。カメラマンの仙頭さんと話しながら撮られているうちに、慣れていた。あれ以来、家でも写真を撮るようになった。黒崎は口には出さないものの、喜んでいる。
(仙頭さん、どうしているかな?)
仙頭さんとは、今でも連絡を取っている。藤沢と3人で食事へ行く話をしたものの、今回の怪我で延期になった。
「……夏樹。楽しんでいるか?」
「……あ、黒崎さーん」
黒崎が中庭にやって来た。今日は休みだから、普段着姿をしている。入院後、毎朝朝6時に来てくれて、ここから会社へ出勤している。仕事帰りにも必ず来てくれて、一日の話をしている。忙しいに決まっているのに続けてくれていた。それも明日の朝までだ。無事に退院が決まって、お互いにホッとしている。黒崎がそばに来ると、子供達が集まってきた。
「……写真を撮っていたのか」
「うん。七夕飾りが出来上がったから」
「そうか。こんにちは」
「こんにちはー」
「こんにちはーっ。絵本ありがとう」
子供達からお礼を言われた黒崎が微笑んだ。すると、医学生が子供達に言った。そろそろ部屋のに戻る時間らしい。
「さあ、ハヤト君、カズ君、部屋に戻ろう」
「まだ居たいよ!」
「だめだよ。時間が決まっているから」
「夏樹君!明日の朝、退院だよね?次はいつ会える?」
「来週の火曜日にここへ来るから、帰りに寄るよ」
「やったー!」
「……」
カズ君が沈んだ顔になった。覗き込むようにして視線を合わせると、唇を噛んでいた。
「どうしたんだよ?」
「医学生のお兄さんたち、いつもそう言うんだ。そのうち来てくれなくなる……。だって、学校の勉強が忙しいからだよ」
「俺は来るよ。時間の約束もするから。火曜日のお昼ご飯が終わった時間に行くよ。点滴している時間だよね?」
「うん!待っているよ!」
2人の頭を撫でた後、医学生達に手を振った。彼らも手を振り返してくれた。みんなが七夕飾りを見て話し始めた。その様子を見ながら出入り口のそばへ到着し、堪えていた笑いが爆発した。
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