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母が父のスマホをのぞき込んだ。久田さんからのラインが入っていたそうだ。すると、母が俺の方を見た。笑顔だ。やっと話すことができる。泣かれるか叱られるかのどちらかと思って、なかなか話しかけられなかった。
「お母さん、心配かけてごめんなさい」
「まったくよ。パンツを追いかけて、大けがしたなんて……。山崎さんが来て下さらなかったら、どうなっていたか……っ」
「お母さん……。ごめんっ」
「……っ」
母が泣き出してしまった。右手で抱き寄せようとすると、点滴のチューブが邪魔になった。あたふたと手こずっていると、黒崎が俺の体を支えてくれた。そして、俺の肩に顔を押し付けて泣いている母のことを、父が褒め始めた。
「よしよーし。頑張ったね」
「うん……」
「昼ご飯を食べてから、久田君の事務所へ行くよ。何が食べたい?」
「ウナギ……」
「そうか。この辺りにあるそうだ」
「特上の……」
「そうか」
「湊谷のウナギがいいの……」
「そうか……」
どうも高級店らしい。父の顔が引きつっていた。そして、病室のドアが閉まるときには、母は笑顔に戻っていた。お義父さんも一緒に病室を出た後、黒崎が吹き出した。
「誰かに似ていると思った」
「そっか、お母さんのことは、お父さんがフォローしてたんだなあ……」
「知らなかったのか?」
「うん。いつもお父さんのことを叱っているもん。お母さんの方が甘えているのって、初めて見たよ」
「お前が大人になったからだろう」
「そういうことか……。大人扱いされたってことだよね。んん?何やっているんだよ?」
「大人扱いをしている」
「スケベじじいっ」
黒崎の手を叩いてやりたいのに動かせない。せめて体をねじって、阻止してやろうとした。すると今度は、パジャマ代わりのTシャツに手が侵入してきた。抵抗できないのをいいことに、わき腹や胸もとを撫でていく。
「こらこら~っ」
「もう少し触りたい」
「エロじじい~」
「その叱り方……、帰っても聞けないのか」
「あ……」
「こうして元気になった。欲張りはいけない」
「黒崎さん……」
胸が痛くなった。首筋に顔を埋められているから、どんな表情をしているのか分からない。寂しそう?悲しそう?右手をそっと持ち上げて、黒崎の背中に回した。
「点滴の針が動くぞ」
「ちょっとだけだよ。このまま放っておけないから……」
「ガキじゃないぞ」
「分かっているよ。34歳だよね?普段から子供っぽいから、気にしてないでいいよ。今更だってば」
「……うるさい」
黒崎から抱きしめられた。それはとても優しい力だ。あたたかい居場所だ。
「黒崎さん。退院するまで、お義父さんの家で過ごしてよ。アンが寂しがるし」
「……」
「いいじゃん。お互いに心細いだろー?俺だって心配なんだよ」
「……」
「もう!」
黒崎の耳たぶを摘まんで引っ張ってやった。すると、やり返されそうになり、彼が踏みとどまった。こうしてジャレ合っているうちに、念願のお昼ご飯の時間になった。
「お母さん、心配かけてごめんなさい」
「まったくよ。パンツを追いかけて、大けがしたなんて……。山崎さんが来て下さらなかったら、どうなっていたか……っ」
「お母さん……。ごめんっ」
「……っ」
母が泣き出してしまった。右手で抱き寄せようとすると、点滴のチューブが邪魔になった。あたふたと手こずっていると、黒崎が俺の体を支えてくれた。そして、俺の肩に顔を押し付けて泣いている母のことを、父が褒め始めた。
「よしよーし。頑張ったね」
「うん……」
「昼ご飯を食べてから、久田君の事務所へ行くよ。何が食べたい?」
「ウナギ……」
「そうか。この辺りにあるそうだ」
「特上の……」
「そうか」
「湊谷のウナギがいいの……」
「そうか……」
どうも高級店らしい。父の顔が引きつっていた。そして、病室のドアが閉まるときには、母は笑顔に戻っていた。お義父さんも一緒に病室を出た後、黒崎が吹き出した。
「誰かに似ていると思った」
「そっか、お母さんのことは、お父さんがフォローしてたんだなあ……」
「知らなかったのか?」
「うん。いつもお父さんのことを叱っているもん。お母さんの方が甘えているのって、初めて見たよ」
「お前が大人になったからだろう」
「そういうことか……。大人扱いされたってことだよね。んん?何やっているんだよ?」
「大人扱いをしている」
「スケベじじいっ」
黒崎の手を叩いてやりたいのに動かせない。せめて体をねじって、阻止してやろうとした。すると今度は、パジャマ代わりのTシャツに手が侵入してきた。抵抗できないのをいいことに、わき腹や胸もとを撫でていく。
「こらこら~っ」
「もう少し触りたい」
「エロじじい~」
「その叱り方……、帰っても聞けないのか」
「あ……」
「こうして元気になった。欲張りはいけない」
「黒崎さん……」
胸が痛くなった。首筋に顔を埋められているから、どんな表情をしているのか分からない。寂しそう?悲しそう?右手をそっと持ち上げて、黒崎の背中に回した。
「点滴の針が動くぞ」
「ちょっとだけだよ。このまま放っておけないから……」
「ガキじゃないぞ」
「分かっているよ。34歳だよね?普段から子供っぽいから、気にしてないでいいよ。今更だってば」
「……うるさい」
黒崎から抱きしめられた。それはとても優しい力だ。あたたかい居場所だ。
「黒崎さん。退院するまで、お義父さんの家で過ごしてよ。アンが寂しがるし」
「……」
「いいじゃん。お互いに心細いだろー?俺だって心配なんだよ」
「……」
「もう!」
黒崎の耳たぶを摘まんで引っ張ってやった。すると、やり返されそうになり、彼が踏みとどまった。こうしてジャレ合っているうちに、念願のお昼ご飯の時間になった。
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