アイアンエンジェル~あの日の旋律

夏目奈緖

文字の大きさ
250 / 283

30-4

しおりを挟む
 俺の後に続いて、枝川さんも降りて来て、俺の一歩先へ進んだ。会場の会議室まで案内してくれるそうだ。ロビーには説明会の看板が出ているから、さすがに一人で行ける。付いてきてもらうのは悪いと思った。

「どうぞ。会議室はこちらです」
「本当にお気になさらず……」
「今回の説明会は、スタッフの一人として入っていますから」
「そうだったんですね。インターンシップは営業企画部でやるんですよね?」
「そうです。商品開発のプロジェクト、研修型。いろいろと企画しています。楽しんでくださいね」
「ありがとうございます」

 すると、向こうの方から、ザワザワとした大勢人の話し声が聞こえてきた。向こうの方に大学生っぽい子達が部屋に入って行くのが見えた。インターンシップ説明会。そう看板が見えている。近くまで歩いて行くと、枝川さんから、その部屋へ入るように促された。

「こちらです」
「ありがとうございます」

 先を譲られて入ると、出入り口で資料を渡している2人の社員さんが立っていた。俺の方を見て笑顔を向けてくれた。お使いに行った時に手を振ってくれた人達だった。

「こんにちは。お世話になります」
「こんにちはー、インターンシップに参加するのね!」
「常務は何も言っていなかったよね?」
「平田君!夏樹君が参加するわよ!」
「え、夏樹君が?」

 振り返った人も見たことがあった。営業企画部のオフィスのカフェスペースで会った。黒崎や早瀬さんと話しながら、大笑いをしていた人だ。

「まだ時間があるわよ」
「そこに座ればいいわ」

 社員さん達が勧めてくれたのは、前方から真ん中あたりの席だ。その端っこの席へ荷物を置いていると、枝川さんと平田さんがやって来た。準備が出来て時間が空いたそうだ。

 今日は自分をしっかり持ってやると決めている。軽く肩を回して背筋を伸ばし、へその辺りに意識を向けて、ふっと息を吐いた。これでよし。まずは堂々とした姿をすることだ。

 普段からこうしている黒崎を見て疲れないだろうかと思っていたけれど、いつの間にか、俺も真似ができるようになった。違和感なくだ。全てに気負うことは無かったと分かった経験だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

美味しいコーヒーの愉しみ方 Acidity and Bitterness

碧井夢夏
ライト文芸
<第五回ライト文芸大賞 最終選考・奨励賞> 住宅街とオフィスビルが共存するとある下町にある定食屋「まなべ」。 看板娘の利津(りつ)は毎日忙しくお店を手伝っている。 最近隣にできたコーヒーショップ「The Coffee Stand Natsu」。 どうやら、店長は有名なクリエイティブ・ディレクターで、脱サラして始めたお店らしく……? 神の舌を持つ定食屋の娘×クリエイティブ界の神と呼ばれた男 2人の出会いはやがて下町を変えていく――? 定食屋とコーヒーショップ、時々美容室、を中心に繰り広げられる出会いと挫折の物語。 過激表現はありませんが、重めの過去が出ることがあります。

悠と榎本

暁エネル
BL
中学校の入学式で 衝撃を受けた このドキドキは何なのか そいつの事を 無意識に探してしまう 見ているだけで 良かったものの 2年生になり まさかの同じクラスに 俺は どうしたら・・・

とある執事の日常 ~お嬢様の中身は恐らくギャル~

冬兎
ファンタジー
うちのお嬢様は絶対におかしい。 「道路やばくない? 整備しよ」 「孤児院とか作ったら?」 「困ってる人助けるのなんか当たり前っしょ」 貴族令嬢らしからぬ口調で突拍子もない提案を次々とぶつけてくるお嬢様、レティシア・リオネール。執事の俺、クラウスは今日も彼女の無茶振りに振り回される。 不思議なことに、お嬢様の理想論は必ず実現し効果を発揮する。 孤児院は完成し、医療制度は整い、領地は驚異的に発展していく。 元勇者の伯爵様、脳筋騎士団長、くのいちメイド長、双子の妹たち―― 濃すぎる面々に囲まれながら、俺は今日もお嬢様の思いつきを形にしていく。 気づけば、振り回されることに悦びを感じ始めている俺はもう手遅れかもしれない。 R8.1.20 投稿開始

イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話

タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。 瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。 笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。

ある日、友達とキスをした

Kokonuca.
BL
ゲームで親友とキスをした…のはいいけれど、次の日から親友からの連絡は途切れ、会えた時にはいつも僕がいた場所には違う子がいた

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

純白のレゾン

雨水林檎
BL
《日常系BL風味義理親子(もしくは兄弟)な物語》 この関係は出会った時からだと、数えてみればもう十年余。 親子のようにもしくは兄弟のようなささいな理由を含めて、少しの雑音を聴きながら今日も二人でただ生きています。

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。

紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※表紙をAI君に描いてもらいました。(2026.2.21) ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。

処理中です...