265 / 283
31-3
しおりを挟む
午前10時。
控え室にいる。今、みんなとステージのモニターを眺めている。コンテストの開始時刻を迎え、本日のゲストが登場した。このコンテストの出身バンドが出演する。そのひとつが、ベテルギウスだ。
「ベテルギウスが出てきた!」
「そっか。このコンテストの出身だったよね?」
「あれ?ミールが出ていないよね?」
観たいと思っていたバンド名がなかった。すると、司会者のアナウンスの後、ベテルギウスの演奏が始まった。かっこいいと思い、俺達はモニターに釘付けになった。悠人はギタリストの植本さんと交流がある。バイト先の楽器店の常連客だそうだ。
「悠人。楽器店に植村さんが来ていたんだよね?」
「そうだよー。ギター教室をやったんだ。オーナーの知り合いなんだ」
「はあ……、同じステージに立てるんだね~」
感慨深く頷いていると、ステージが終わった。その後、予定とは違うバンドが登場した。ディアドロップだった。観客の歓声が大きくなった。みんなが驚いているようだ。
モニター画面越しにひときわ目を引くのが、ギタリストの佐久弥だ。ミステリアスな雰囲気と、とてつもなく演奏技術が高くて有名な人だ。遠藤さんからは、本当はざっくばらんな人だと聞いた。聡太郎は佐久弥のファンだ。見られて嬉しそうにしている。悠人と聡太郎が並んで話し始めた。
「本当はミールが出る予定でしたよね?」
「海外から帰国する空港で、乗り継ぎトラブルだそうだよ。佐久弥が審査員の一人だという関係で、今回、ディアドロップが出演したそうだよ」
「桜木さんは佐久弥の大ファンですよね!……なつきー。こっちだよ」
「ありがとう。わあ~、生で観られるんだね。すごいなあ」
悠人から手を引かれて、モニターの前に座った。そこへ、聡太郎から不思議そうな顔を向けられた。どうしたのだろうか。
「夏樹君。佐久弥は佐伯久弥さんと言って、黒崎ホールディングスと交流があるんだよ」
「マジで?」
「デビューする前は、実家のサエキ酒造の営業担当をしていたんだ」
「黒崎さーーん。そうなの?……なになに?わああ~」
「おおおーー!すごいぞーー」
「どれどれ……」
「ああ……」
ディアドロップの演奏が始まり、藤沢と並川さんが歓声をあげた。聡太郎がモニターを見つめていると、悠人が無言になった。集中しているのだろう。そっとしておくことにした。すると、聡太郎が言った。
「今日は楽しもう。みんなが観に来てくれているんだよ。カチコチの笑顔だと心配されるよ。失敗してもフォローする。悠人君が近くにいるようにするからね。大丈夫だよー」
「あ、ありがとう……」
今日は両親と伊吹が来てくれる。万理は受験勉強の関係で来られなかった。お義父さんと深川さんもきてくれている。枝川さんと如月にも会った。伊吹が探していたから、枝川さんが逃げていた。そして、森本と山崎と真羽も来てくれて、さっき会ってきたところだ。
今日は、真羽の従兄弟で歌手の羽音さんも来てくれている。本名を葛野蒼一朗さんと言って、悠人のおばあちゃんの家の近くに実家があり、悠人が顔見知りだと知り、驚いたことがある。羽音さんはデビューする前は、実家の近くの田んぼで歌の練習をしていて、悠人は小学生の時、歌を聴きにいっていたそうだ。
真羽から差し入れを貰った。個装になった蜂蜜だ。一回分ずつ入っている物で、喉に良い。学食で差し入れして貰ったことがある。さっき舐めてみると、喉がすっきりした。その蜂蜜をもう一個舐めていると、聡太郎から声をかけられた。
「ステージにそなえて、喉を休めたほうがいい。黒崎さんと歩いてくるといいよ。けっこう暑いけど。気晴らしになるよ」
「ここを離れない方がいいよね?みんなと一緒の方が……」
「夏樹、外へ行くぞ」
「うん……」
「いってらっしゃーい」
黒崎から肩を抱かれた。そして、聡太郎に見送られて控え室を出た。彼は全く緊張していないように感じて、すごいと思った。本人は否定していたけれど、並川さんが断言していた。聡太郎は緊張していないのだと。俺に出来ることは頑張ることだ。そう思って、大きく深呼吸をした。
控え室にいる。今、みんなとステージのモニターを眺めている。コンテストの開始時刻を迎え、本日のゲストが登場した。このコンテストの出身バンドが出演する。そのひとつが、ベテルギウスだ。
「ベテルギウスが出てきた!」
「そっか。このコンテストの出身だったよね?」
「あれ?ミールが出ていないよね?」
観たいと思っていたバンド名がなかった。すると、司会者のアナウンスの後、ベテルギウスの演奏が始まった。かっこいいと思い、俺達はモニターに釘付けになった。悠人はギタリストの植本さんと交流がある。バイト先の楽器店の常連客だそうだ。
「悠人。楽器店に植村さんが来ていたんだよね?」
「そうだよー。ギター教室をやったんだ。オーナーの知り合いなんだ」
「はあ……、同じステージに立てるんだね~」
感慨深く頷いていると、ステージが終わった。その後、予定とは違うバンドが登場した。ディアドロップだった。観客の歓声が大きくなった。みんなが驚いているようだ。
モニター画面越しにひときわ目を引くのが、ギタリストの佐久弥だ。ミステリアスな雰囲気と、とてつもなく演奏技術が高くて有名な人だ。遠藤さんからは、本当はざっくばらんな人だと聞いた。聡太郎は佐久弥のファンだ。見られて嬉しそうにしている。悠人と聡太郎が並んで話し始めた。
「本当はミールが出る予定でしたよね?」
「海外から帰国する空港で、乗り継ぎトラブルだそうだよ。佐久弥が審査員の一人だという関係で、今回、ディアドロップが出演したそうだよ」
「桜木さんは佐久弥の大ファンですよね!……なつきー。こっちだよ」
「ありがとう。わあ~、生で観られるんだね。すごいなあ」
悠人から手を引かれて、モニターの前に座った。そこへ、聡太郎から不思議そうな顔を向けられた。どうしたのだろうか。
「夏樹君。佐久弥は佐伯久弥さんと言って、黒崎ホールディングスと交流があるんだよ」
「マジで?」
「デビューする前は、実家のサエキ酒造の営業担当をしていたんだ」
「黒崎さーーん。そうなの?……なになに?わああ~」
「おおおーー!すごいぞーー」
「どれどれ……」
「ああ……」
ディアドロップの演奏が始まり、藤沢と並川さんが歓声をあげた。聡太郎がモニターを見つめていると、悠人が無言になった。集中しているのだろう。そっとしておくことにした。すると、聡太郎が言った。
「今日は楽しもう。みんなが観に来てくれているんだよ。カチコチの笑顔だと心配されるよ。失敗してもフォローする。悠人君が近くにいるようにするからね。大丈夫だよー」
「あ、ありがとう……」
今日は両親と伊吹が来てくれる。万理は受験勉強の関係で来られなかった。お義父さんと深川さんもきてくれている。枝川さんと如月にも会った。伊吹が探していたから、枝川さんが逃げていた。そして、森本と山崎と真羽も来てくれて、さっき会ってきたところだ。
今日は、真羽の従兄弟で歌手の羽音さんも来てくれている。本名を葛野蒼一朗さんと言って、悠人のおばあちゃんの家の近くに実家があり、悠人が顔見知りだと知り、驚いたことがある。羽音さんはデビューする前は、実家の近くの田んぼで歌の練習をしていて、悠人は小学生の時、歌を聴きにいっていたそうだ。
真羽から差し入れを貰った。個装になった蜂蜜だ。一回分ずつ入っている物で、喉に良い。学食で差し入れして貰ったことがある。さっき舐めてみると、喉がすっきりした。その蜂蜜をもう一個舐めていると、聡太郎から声をかけられた。
「ステージにそなえて、喉を休めたほうがいい。黒崎さんと歩いてくるといいよ。けっこう暑いけど。気晴らしになるよ」
「ここを離れない方がいいよね?みんなと一緒の方が……」
「夏樹、外へ行くぞ」
「うん……」
「いってらっしゃーい」
黒崎から肩を抱かれた。そして、聡太郎に見送られて控え室を出た。彼は全く緊張していないように感じて、すごいと思った。本人は否定していたけれど、並川さんが断言していた。聡太郎は緊張していないのだと。俺に出来ることは頑張ることだ。そう思って、大きく深呼吸をした。
0
あなたにおすすめの小説
実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~
空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」
氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。
「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」
ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。
成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
追放されたおまけの聖女♂は冷徹王太子の腕の中から離してもらえない〜今さら戻れと言われても、もうこの人の魔力しか受け付けません!〜
たら昆布
BL
聖女のおまけで召喚されたと思われて追放された不憫受けが拾われて愛される話
純白のレゾン
雨水林檎
BL
《日常系BL風味義理親子(もしくは兄弟)な物語》
この関係は出会った時からだと、数えてみればもう十年余。
親子のようにもしくは兄弟のようなささいな理由を含めて、少しの雑音を聴きながら今日も二人でただ生きています。
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。
紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※表紙をAI君に描いてもらいました。(2026.2.21)
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる