アイアンエンジェル~あの日の旋律

夏目奈緖

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 ザワザワした廊下を歩いて行き、機材が並んでいる中をすり抜けて外に出た。外に出ると誰も通っていなかった。表の方からは音楽と歓声が聴こえている。

 気温が30度を超えているけれど、今いる場所は建物の影になっているから涼しく感じた。控え室はクーラーが効いていたはずなのに、緊張していたから、暑いのか涼しいのか分からなかった。

 建物の壁に両手をついて上半身のストレッチをした。ボーカルレッスンで習った方法で、これをするのとしないのとでは大きく違う。体がかたまっていると、声が出しづらいことを知った。

「はあ~~っ」
「どうだ、落ち着いたか?」
「うん、言うとおりにしてよかった。あのままだと、ガチガチに緊張したままだったよ」
「ご両親が到着したぞ。会いに行くか?どうする?まだ時間はある。向こうにかき氷の店が出ているぞ」

 今日のコンテストは人出が多いから、沢山の出店が出ている。まるでお祭りだ。

「ううん。気持ちを落ち着けたいんだ。歌のことに集中が出来ないと思う。100%の力を出したいから」
「分かった。控え室に戻っておこうか?」
「一緒にいてよ。落ち着かないんだよ~。黒崎さーんっ」
「……どうした?」
「黒崎さーん」
「だから、どうした?何もしないぞ」
「黒崎さん……」
「……甘ったれ」

 黒崎の両腕を引っ張って引き寄せて、両手を広げて待った。黒崎が苦笑した後、耳元で低い声が響いた。そして、お互いの体を密着させると、首筋から汗が流れ始めて、同時に笑い声が立った。

 汗くさい、シャワーを浴びてこい。わざと言い合いをしながら過ごした。そして、本当に暑くて堪らなくなった頃に、クーラーが効いている控え室へ戻った。その時には肩凝りが和らいでいた。
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