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12時半。
午前の部が終わり、休憩時間に入った。俺たちが待機している控え室は、これから迎えるステージのことで緊張感が漂っている。
俺達は午前中に早めの昼ご飯を食べ終えた。黒崎と早瀬さんが、色んな種類の料理を差し入れてくれた。そのおかげで緊張感が和らいだ。
ついさっき、ステージサイドに立ち、運営スタッフとの打ち合わせを済ませた。楽曲の進行に合わせて、スモークなどの仕掛けがされるそうだ。
せっかくだから、ステージからの眺めを見て行こうという話になった。そして、ここまで広いとは思わなかったと、悠人と並んで見て、立ちすくんだ。
午後の部の合間の時間に入り、まばらになった観客席なのに、とにかく人が多い。嬉しいはずが、怖さも出てきた。
「午後は……、もっといっぱい来るよ」
「そうなんだ。お父さん、お母さん……、お義父さんも……」
お義父さんと両親の姿を見つけた。後ろから伊吹がやってきて、飲み物を差し出していた。それを受け取っている中に、久田さんの姿があった。父と並んで笑いながら話をしていた。
「悠人、お父さんが来てくれているよ!」
「え……?どこどこ?」
「すぐそこ。大きなカップで飲んでいる人だよ」
「どこーー?」
「そこ、すぐ前だよー」
「ひいいいいいっ」
「そんなに驚かなくても……」
「ラフな格好をしているからだよーー」
たしかに、久田さんはTシャツとジーンズ姿だった。さらに悠人がうめき声をあげた。かき氷のようなものを食べていたからだ。珍しい姿のようだ。いつもスーツしか着ていない人だそうだ。
「げええええっ。似合わないー!」
「そんなに言わなくても」
「何で……、あんなにヤル気なんだよ?お父さん……」
急に悠人の声色が落ち着いた。そっと視線を向けると、しっかりとした顔つきで、観客席を見据えていた。そして、口の端をきゅっと結んで、両手には拳を作っている。
悠人は両親の離婚が決まったそうだ。久田さんは今付き合っている人と再婚する。このバンドコンテストを観に来て、悠人が音楽を続けることを認めれば許すと、悠人が言っていた。その条件を出した悠人は、こう言っていた。この年になって親の離婚に干渉する気はないが、恋人との間にできた子供を大事にしてほしくて、けじめをつけさせるのだと。
悠人の口元が動いて、久田さんへ向けて話しかけた。決して聞こえる距離ではない。俺が隣にいることを忘れているのか、涙声が聞こえた。
(……お父さん。やり直すんだね。分かったよ。俺とお母さんじゃ居場所を作れなかったんだね。それを責める気はないよ……か)
いくら仲が良くても、踏み込めない領域がある。今は何も聞かないようにした。
「ゆうとー……」
「あ、ごめん。ぼーっとしてた」
「人が多いね?」
「なつきーー」
「うん?」
「失敗しても大丈夫だよ!俺だって失敗するかもしれない。一緒に笑おうね!」
「……うんっ」
悠人の表情がいつも通りに戻った。元気で明るいものだ。何かを決心したように感じた。悠人と拳を突き合わせて笑った。この瞬間、自分の中で何かが吹っ切れた。ここから観客席を眺めても、足元が震えないし楽しさすら感じるようになってきた。今日はやれる。強くそう思った。
午前の部が終わり、休憩時間に入った。俺たちが待機している控え室は、これから迎えるステージのことで緊張感が漂っている。
俺達は午前中に早めの昼ご飯を食べ終えた。黒崎と早瀬さんが、色んな種類の料理を差し入れてくれた。そのおかげで緊張感が和らいだ。
ついさっき、ステージサイドに立ち、運営スタッフとの打ち合わせを済ませた。楽曲の進行に合わせて、スモークなどの仕掛けがされるそうだ。
せっかくだから、ステージからの眺めを見て行こうという話になった。そして、ここまで広いとは思わなかったと、悠人と並んで見て、立ちすくんだ。
午後の部の合間の時間に入り、まばらになった観客席なのに、とにかく人が多い。嬉しいはずが、怖さも出てきた。
「午後は……、もっといっぱい来るよ」
「そうなんだ。お父さん、お母さん……、お義父さんも……」
お義父さんと両親の姿を見つけた。後ろから伊吹がやってきて、飲み物を差し出していた。それを受け取っている中に、久田さんの姿があった。父と並んで笑いながら話をしていた。
「悠人、お父さんが来てくれているよ!」
「え……?どこどこ?」
「すぐそこ。大きなカップで飲んでいる人だよ」
「どこーー?」
「そこ、すぐ前だよー」
「ひいいいいいっ」
「そんなに驚かなくても……」
「ラフな格好をしているからだよーー」
たしかに、久田さんはTシャツとジーンズ姿だった。さらに悠人がうめき声をあげた。かき氷のようなものを食べていたからだ。珍しい姿のようだ。いつもスーツしか着ていない人だそうだ。
「げええええっ。似合わないー!」
「そんなに言わなくても」
「何で……、あんなにヤル気なんだよ?お父さん……」
急に悠人の声色が落ち着いた。そっと視線を向けると、しっかりとした顔つきで、観客席を見据えていた。そして、口の端をきゅっと結んで、両手には拳を作っている。
悠人は両親の離婚が決まったそうだ。久田さんは今付き合っている人と再婚する。このバンドコンテストを観に来て、悠人が音楽を続けることを認めれば許すと、悠人が言っていた。その条件を出した悠人は、こう言っていた。この年になって親の離婚に干渉する気はないが、恋人との間にできた子供を大事にしてほしくて、けじめをつけさせるのだと。
悠人の口元が動いて、久田さんへ向けて話しかけた。決して聞こえる距離ではない。俺が隣にいることを忘れているのか、涙声が聞こえた。
(……お父さん。やり直すんだね。分かったよ。俺とお母さんじゃ居場所を作れなかったんだね。それを責める気はないよ……か)
いくら仲が良くても、踏み込めない領域がある。今は何も聞かないようにした。
「ゆうとー……」
「あ、ごめん。ぼーっとしてた」
「人が多いね?」
「なつきーー」
「うん?」
「失敗しても大丈夫だよ!俺だって失敗するかもしれない。一緒に笑おうね!」
「……うんっ」
悠人の表情がいつも通りに戻った。元気で明るいものだ。何かを決心したように感じた。悠人と拳を突き合わせて笑った。この瞬間、自分の中で何かが吹っ切れた。ここから観客席を眺めても、足元が震えないし楽しさすら感じるようになってきた。今日はやれる。強くそう思った。
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