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21時半。
風呂から出たところだ。黒崎からはまだ連絡がない。キッチンへ入り夜食を用意することにした。きんぴらごぼうと筑前煮のストックが冷蔵庫にある。他に何が良いだろうと考えた。
「この分だと夜中になりそう。雨が降って寒いから、温かいものが良いよね……。この冷凍のアジの開き、美味しいのにな。黒崎さん、絶対に食べないんだよね~。お肉の冷凍も苦手だし……」
ブツブツ言いながら、鶏のむね肉を取り出した。パン粉とバジル、塩コショウ。乾燥ハーブ類も。これで肉系のおかずを作ることにした。
「香草パン粉焼きを作ろう。明日のお弁当にも使えるし。これ美味しいって褒めてもらえたし……。次の日、ケーキを買ってきてくれたし。ウンウン。何だかんだ言っても、愛されている気がするなあ……」
さっそく料理を始めた。するとその時だ。食器棚に俺のエプロン姿がうつった。今日着ているのはウサギのイラスト付きのエプロンだ。黒崎が買って来た時、驚いて言葉がなかった。可愛いから選んだそうだ。女の子なら似合うと思うけれど、男の俺は似合わない気がした。でも、着てみると、黒崎が喜んでいた。
黒崎は可愛い物が好きだと言うことが分かってきた。黒崎のお父さんから聞いた話だと、子供の頃にぬいぐるみを欲しがったことがあるそうだ。大人になった今でも、ショッピングモールに行くと、雑貨屋に寄ることがある。俺も好きだから共通した趣味があっていいと思った。
「さあ。できた……」
出来上がった料理を皿に盛り付けた。ラップをしたところで、雨足が強まった。リビングへ行くと、大きな窓へ雨が打ち付けていた。帰って来たら、すぐに風呂へ入れるように着替えをセットした。玄関にはタオルも置いた。雨に濡れているかも知れないからだ。
「地下駐車場だから濡れなくてすむけど、体が冷えていそうだ。俺、甲斐甲斐しいかなあ?前の俺からは考えられないよ。あの人に反発しまくりだったのに……」
付き合う前、俺は黒崎に嫌みばかり言っていた。あの頃が懐かしい。そう思っていた時に、地響きが聞こえてきた。雷だ。俺が苦手なものだ。近くに落ちたようだ。するとその時だ。ふっと、部屋の照明が消えた。すぐに復活したが、背中から冷たい汗が流れた。まだ続きそうだ。
「く、黒崎さん。早く帰って来いよ~っ」
俺達が住んでいるのは18階だ。景色が良い分、雷もよく見える。
「うわっ、光ったー」
ゴロゴロと聞こえた。だんだん近づいてくるのが分かる。窓のスクリーンを下ろしたいのに、怖くて窓へ行けない。ソファーに顔を埋めていると、アンから指先を舐められた。大きな音が聞こえているのに、平気そうだ。
「アンは強い子だね。さすがだよ。黒崎さんの外見を見てもビビらなかったし……」
アンを抱っこした。モフモフした毛と温かい体が気持ちを落ち着かせてくれた。しかし、空が光る度に震えた。
「黒崎さんーっ」
こんな時に限って留守だ。室内の照明が消えて真っ暗だ。近くの棚に置いてある懐中電灯を手にして、慌ててスイッチを入れた。
「か、か、懐中電灯。あ、あった。え、点かない!」
電池が切れていた。慌ててスマホを手に取った。小さな明かりでも、ないよりマシだと思った。
「電話をかけたいな……」
もし出られなくても、すぐに折り返しがある。そういう人だ。俺のことを優先してくれるからだ。
「でも、我慢しよう。そのうち電気が点くだろうし……」
その時、アンが小さなボールで遊び始めた。ポコポコ跳ねる度に遠くへ転がっていく。サッカー状態になり、走って行ってしまった。
「アン!こっちにおいで!真っ暗で危ないから!」
迎えに行こうと立ち上がった時、その方向から大きな物音がした。何かが落ちた音だ。俺の部屋からの音だと思った。
アンが危険な目に遭っているのなら、なりふり構っていられない。すぐに立ち上がって部屋へ向かった。
風呂から出たところだ。黒崎からはまだ連絡がない。キッチンへ入り夜食を用意することにした。きんぴらごぼうと筑前煮のストックが冷蔵庫にある。他に何が良いだろうと考えた。
「この分だと夜中になりそう。雨が降って寒いから、温かいものが良いよね……。この冷凍のアジの開き、美味しいのにな。黒崎さん、絶対に食べないんだよね~。お肉の冷凍も苦手だし……」
ブツブツ言いながら、鶏のむね肉を取り出した。パン粉とバジル、塩コショウ。乾燥ハーブ類も。これで肉系のおかずを作ることにした。
「香草パン粉焼きを作ろう。明日のお弁当にも使えるし。これ美味しいって褒めてもらえたし……。次の日、ケーキを買ってきてくれたし。ウンウン。何だかんだ言っても、愛されている気がするなあ……」
さっそく料理を始めた。するとその時だ。食器棚に俺のエプロン姿がうつった。今日着ているのはウサギのイラスト付きのエプロンだ。黒崎が買って来た時、驚いて言葉がなかった。可愛いから選んだそうだ。女の子なら似合うと思うけれど、男の俺は似合わない気がした。でも、着てみると、黒崎が喜んでいた。
黒崎は可愛い物が好きだと言うことが分かってきた。黒崎のお父さんから聞いた話だと、子供の頃にぬいぐるみを欲しがったことがあるそうだ。大人になった今でも、ショッピングモールに行くと、雑貨屋に寄ることがある。俺も好きだから共通した趣味があっていいと思った。
「さあ。できた……」
出来上がった料理を皿に盛り付けた。ラップをしたところで、雨足が強まった。リビングへ行くと、大きな窓へ雨が打ち付けていた。帰って来たら、すぐに風呂へ入れるように着替えをセットした。玄関にはタオルも置いた。雨に濡れているかも知れないからだ。
「地下駐車場だから濡れなくてすむけど、体が冷えていそうだ。俺、甲斐甲斐しいかなあ?前の俺からは考えられないよ。あの人に反発しまくりだったのに……」
付き合う前、俺は黒崎に嫌みばかり言っていた。あの頃が懐かしい。そう思っていた時に、地響きが聞こえてきた。雷だ。俺が苦手なものだ。近くに落ちたようだ。するとその時だ。ふっと、部屋の照明が消えた。すぐに復活したが、背中から冷たい汗が流れた。まだ続きそうだ。
「く、黒崎さん。早く帰って来いよ~っ」
俺達が住んでいるのは18階だ。景色が良い分、雷もよく見える。
「うわっ、光ったー」
ゴロゴロと聞こえた。だんだん近づいてくるのが分かる。窓のスクリーンを下ろしたいのに、怖くて窓へ行けない。ソファーに顔を埋めていると、アンから指先を舐められた。大きな音が聞こえているのに、平気そうだ。
「アンは強い子だね。さすがだよ。黒崎さんの外見を見てもビビらなかったし……」
アンを抱っこした。モフモフした毛と温かい体が気持ちを落ち着かせてくれた。しかし、空が光る度に震えた。
「黒崎さんーっ」
こんな時に限って留守だ。室内の照明が消えて真っ暗だ。近くの棚に置いてある懐中電灯を手にして、慌ててスイッチを入れた。
「か、か、懐中電灯。あ、あった。え、点かない!」
電池が切れていた。慌ててスマホを手に取った。小さな明かりでも、ないよりマシだと思った。
「電話をかけたいな……」
もし出られなくても、すぐに折り返しがある。そういう人だ。俺のことを優先してくれるからだ。
「でも、我慢しよう。そのうち電気が点くだろうし……」
その時、アンが小さなボールで遊び始めた。ポコポコ跳ねる度に遠くへ転がっていく。サッカー状態になり、走って行ってしまった。
「アン!こっちにおいで!真っ暗で危ないから!」
迎えに行こうと立ち上がった時、その方向から大きな物音がした。何かが落ちた音だ。俺の部屋からの音だと思った。
アンが危険な目に遭っているのなら、なりふり構っていられない。すぐに立ち上がって部屋へ向かった。
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