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彼らが気づかないであろう位置へ立ち、成り行きを見守った。以前の自分では考えられないことだ。全ての事から守ろうとしたが、今は違う。あの程度の揉め事には対処できるようにさせたい。それが本人を守ることに繋がる。恐れるに足らぬ相手への距離の取り方を身に着けさせるためもある。
(成り行き次第では、俺が出て行くしかない。指一本でも触れたら……)
夏樹のことを静かに見守った。女子生徒を背中に庇い、真っ直ぐに男達へ視線を向けている。そして、夏樹が一言だけ告げた。俺達から離れてくださいと言った。はっきりとした声だった。しかし、相手は絡んできた。後は夏樹の自由だ。どの言い方でも構わない。俺は静かに見守った。
「あんたら。どっか行けよ」
「はあ~?」
「返事する時間があるなら、早く行けよ」
「おまえ、カレシか?」
「早く行け。息を吐きかけるなよ」
「……っ」
「10代の子相手に男2人も絡んでくるな。バカヤロウ」
「何だと~?」
夏樹が男から胸倉を掴まれた。夏樹は彼の手首をねじり、持ち上げた。男が痛みで顔を歪めた。教えた通りの形だ。真っ直ぐに相手を睨みつけている。そして、夏樹が右脚を振り上げて、男に当たるギリギリの位置の壁に蹴りつけた。その音と同時に相手が怯んだ。
「早く行けって言ってんだろ。聞こえないのかよ?」
「……っ」
さらに男達が顔を歪めた。男達が離れようとした素振りを見せた後、掴んでいた手首を乱暴に突き放し、男が前のめりに倒れ込みそうになった。
「俺達から離れろ!」
「あ……っ」
夏樹が強く言い放った後、彼らに鋭い視線を向けた。これで怯まない相手がいるのかというぐらいの強さがあった。男がその場から離れようとこちらを振り返った。俺の方へ歩いて来たから視線を向けると、さらに顔を引きつらせた。仲間が居たことが分かったようだ。
(何もしていないぞ。失礼だな……)
完全に姿が見えなくなった後、夏樹が子供のような笑顔を浮かべて、大きく手を振って来た。そして、彼女のことを連れて歩いて来た。
「黒崎さ~ん!ちゃんと上手にねじり上げてただろ?練習の成果が出たよ~」
「はいはい。カッコ良かったぞ」
「剣道の部活で来ていたんだってさ」
「うん。トイレへ行きたくなったの。さっきの人に囲まれて。無理に逃げると面倒くさいし……。ごめんなさい。一人で戻れるので」
「いや、まだ居るかも知れない」
女子生徒は万理の親友の愛良という子だった。さっきの男が近くにいないとは限らない。生徒達の待ち合わせ場所へ送って行った。
「夏樹が良いところを見せてもらえた。彼は強かったかな?」
「もちろん。すごくカッコ良かった!」
「そ、そう?」
「夏樹お兄ちゃんは、ずっと前からカッコいいよ。ずっと前も男の子から庇ってくれたことがあるの」
「可愛いから苛めていたんだよ。その子達は……」
「お兄ちゃんが助けに来てくれた時、男の子たちが喜んでいたの。人気があったから。男の子からも、憧れの子だったのよ?……夏休みの自由研究が凄くて、変なことを言ったら馬鹿にされるかもって思って、話しかけられなかったんだから。今は話しかけやすくて、うちの学校で有名なの。優しくて強いから。……あれ?お兄ちゃん、知らなかったの?」
「いつから女の子に人気があったんだよ~。相手をしてもらえるなら、黒崎さんを選んでいないよ~……」
夏樹へ視線を向けると、俯いて唇を噛んでいた。本気のときの仕草だ。思わず手が出てしまった。
「いたっ。何するんだよっ」
「ん?デコピンだ」
「ふふん。あっさり認めたね。この暴力亭主!」
「何だって?……ああ、あの子たちかな?」
「うん。お兄ちゃん達、ありがとう。美也ちゃーん!夏樹お兄ちゃんがいるよー」
愛良が女子生徒達に声をかけると、彼女達が夏樹を見て悲鳴を上げた。どうや彼は彼女達に人気があるようだ。生徒会のつながりもあるのかも知れない。
しかし、夏樹自身はそれを知らないようで、彼女達の反応に驚いていた。そして、彼女達が夏樹のそばに走ってきた。
「きゃーーー」
「かっこいい!マジで?中山君だーー」
「えーーっと……」
夏樹が恥ずかしそうにして俯いた。その姿を見て、彼にも居場所があることを知り、今後のことを思って胸が痛くなった。そして、ホッとした。
春から環境が変わる。お互いに居場所が出来るなら、すれ違いが出て来るだろうかと思ったからだ。それはさせない。散々泣かせた以上、喧嘩以外では悲しませない。引率の教師が彼女達を迎えに来た後、夏樹の手を握り、車に乗り込ませた。
(成り行き次第では、俺が出て行くしかない。指一本でも触れたら……)
夏樹のことを静かに見守った。女子生徒を背中に庇い、真っ直ぐに男達へ視線を向けている。そして、夏樹が一言だけ告げた。俺達から離れてくださいと言った。はっきりとした声だった。しかし、相手は絡んできた。後は夏樹の自由だ。どの言い方でも構わない。俺は静かに見守った。
「あんたら。どっか行けよ」
「はあ~?」
「返事する時間があるなら、早く行けよ」
「おまえ、カレシか?」
「早く行け。息を吐きかけるなよ」
「……っ」
「10代の子相手に男2人も絡んでくるな。バカヤロウ」
「何だと~?」
夏樹が男から胸倉を掴まれた。夏樹は彼の手首をねじり、持ち上げた。男が痛みで顔を歪めた。教えた通りの形だ。真っ直ぐに相手を睨みつけている。そして、夏樹が右脚を振り上げて、男に当たるギリギリの位置の壁に蹴りつけた。その音と同時に相手が怯んだ。
「早く行けって言ってんだろ。聞こえないのかよ?」
「……っ」
さらに男達が顔を歪めた。男達が離れようとした素振りを見せた後、掴んでいた手首を乱暴に突き放し、男が前のめりに倒れ込みそうになった。
「俺達から離れろ!」
「あ……っ」
夏樹が強く言い放った後、彼らに鋭い視線を向けた。これで怯まない相手がいるのかというぐらいの強さがあった。男がその場から離れようとこちらを振り返った。俺の方へ歩いて来たから視線を向けると、さらに顔を引きつらせた。仲間が居たことが分かったようだ。
(何もしていないぞ。失礼だな……)
完全に姿が見えなくなった後、夏樹が子供のような笑顔を浮かべて、大きく手を振って来た。そして、彼女のことを連れて歩いて来た。
「黒崎さ~ん!ちゃんと上手にねじり上げてただろ?練習の成果が出たよ~」
「はいはい。カッコ良かったぞ」
「剣道の部活で来ていたんだってさ」
「うん。トイレへ行きたくなったの。さっきの人に囲まれて。無理に逃げると面倒くさいし……。ごめんなさい。一人で戻れるので」
「いや、まだ居るかも知れない」
女子生徒は万理の親友の愛良という子だった。さっきの男が近くにいないとは限らない。生徒達の待ち合わせ場所へ送って行った。
「夏樹が良いところを見せてもらえた。彼は強かったかな?」
「もちろん。すごくカッコ良かった!」
「そ、そう?」
「夏樹お兄ちゃんは、ずっと前からカッコいいよ。ずっと前も男の子から庇ってくれたことがあるの」
「可愛いから苛めていたんだよ。その子達は……」
「お兄ちゃんが助けに来てくれた時、男の子たちが喜んでいたの。人気があったから。男の子からも、憧れの子だったのよ?……夏休みの自由研究が凄くて、変なことを言ったら馬鹿にされるかもって思って、話しかけられなかったんだから。今は話しかけやすくて、うちの学校で有名なの。優しくて強いから。……あれ?お兄ちゃん、知らなかったの?」
「いつから女の子に人気があったんだよ~。相手をしてもらえるなら、黒崎さんを選んでいないよ~……」
夏樹へ視線を向けると、俯いて唇を噛んでいた。本気のときの仕草だ。思わず手が出てしまった。
「いたっ。何するんだよっ」
「ん?デコピンだ」
「ふふん。あっさり認めたね。この暴力亭主!」
「何だって?……ああ、あの子たちかな?」
「うん。お兄ちゃん達、ありがとう。美也ちゃーん!夏樹お兄ちゃんがいるよー」
愛良が女子生徒達に声をかけると、彼女達が夏樹を見て悲鳴を上げた。どうや彼は彼女達に人気があるようだ。生徒会のつながりもあるのかも知れない。
しかし、夏樹自身はそれを知らないようで、彼女達の反応に驚いていた。そして、彼女達が夏樹のそばに走ってきた。
「きゃーーー」
「かっこいい!マジで?中山君だーー」
「えーーっと……」
夏樹が恥ずかしそうにして俯いた。その姿を見て、彼にも居場所があることを知り、今後のことを思って胸が痛くなった。そして、ホッとした。
春から環境が変わる。お互いに居場所が出来るなら、すれ違いが出て来るだろうかと思ったからだ。それはさせない。散々泣かせた以上、喧嘩以外では悲しませない。引率の教師が彼女達を迎えに来た後、夏樹の手を握り、車に乗り込ませた。
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