アイアンエンジェル~あの日の旋律

夏目奈緖

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3-5(夏樹視点)

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 午前11時。

 伯楽テーマパークに到着した。長いエレベーターで進んだ先に、エントランスが建っている。ここには遊園地があり、トリンドランドという名前だ。同じ系列の遊園地が二カ所あり、もう片方は都内の近くにある。一度行ってみたいと思っていた。春になったら出かけてみようと黒崎が言っていた。遊園地共通しているマスコットキャラクターは、兎のウサギーと虎のトラッコという。エントランスが近くなり、キャラクターの看板が見えてきた。

「けっこう温かいね」
「それでもマフラーはしておけ。こっちに来い。風に当たる」
「あんたこそ寒いだろ」
「俺は寒くない」
「俺も平気だよ。歩いているうちに温かくなるから」
「俺が来たがった。この寒い時期にすまない」
「遠慮するなって。また戻るよ?触るのも怖かった時代に」
「それとこれとは別だ。風邪を引かさないとお母さんと約束してある」
「大丈夫だってば~」
「大切にすると言ったはずだ」
「分かっているよ。遠慮してほしくない。ベッドじゃ好き放題するくせに……」
「強引すぎたのか?もう少し優しくする」
「いいよ?今のままで……」
「よくない。それこそ遠慮するな」
「うん……。そんなことないよ?他を知らないから、比べられないけど」
「当たり前だ。必要ない」
「うん……」

 ここまで大切にされて恥ずかしい。異様な感じはするが、受け取り方が違うから胸が苦しくない。もっと甘えたくなった。それを口にすると、大歓迎だと囁かれて、頬へキスをされた。全身が熱くなり、寒さが吹き飛んでしまった。

 ここのテーマパークは3つのエリアに分かれている。遺跡のレプリカが並んだエリアと温水プール、そして、遊園地だ。俺達は遊園地の方向を選んだ。ゲートの向こうには、絶叫マシンとメリーゴーランド、観覧車が見えている。

 4カ月前とは、まるで印象が違う。あの頃は緊張していた。今日の俺達は違う。すっかり打ち解けている。出入口のショップで買った帽子を被っているし、言い合いをして笑っているからだと思う。幻想的な国だったのに、手の届く身近な遊園地に変化した。いつでも来られる場所として存在している。

「黒崎さん。別れるかも知れない怖さがあっただろ?お互いに」
「仕方がない。俺のせいだ。耳が痛い話だ。伊吹君から叱られそうだ」
「伊吹お兄ちゃんから何か言われたの?仲良くなれそう?」
「そうなれないかもしれない。俺は嫌われている」
「そうでもないよ」
 
 でも、二人に漂っている空気を思うと、いつまで経っても仲良くなれそうもないという黒崎の言葉に納得できた。伊吹にとっては先輩のような存在になると思っていた。同じ経営者だから、仕事の話が出来るだろうと思ったのに、現実としては違うようだ。
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