アイアンエンジェル~あの日の旋律

夏目奈緖

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 観覧車に乗り込んだ。乗り場の囲いにはクリスマスの飾りつけがされていたから、楽しい雰囲気がプラスされていた。この観覧車の近くにある大きなモミの木の下には、プレゼントの箱が並んでいた。くじ引きして当たったら受け取れる物だ。

 さっき、それに挑戦して当選した。俺の膝の上にはそのプレゼントの箱を置いてある。白地の包装紙に、紺色のリボンがかけられている。中身は何かな?と、黒崎と想像し合った。でも、彼の眉間には皺が寄っている。さっき乗り込む前に軽く喧嘩になり、嫌みを言い返して頬をつねられた仕返しに、彼の足を蹴ってやったからだ。軽いじゃれ合いのつもりが、さらに喧嘩に発展しつつある。

「なんだよ~。壁でもあればいのに。あんたの顔を見なくて済むからさ!」
「なんだと?可愛らしい子は、どこへ行ったんだ?見当たらないが……」
「ふん。この箱を一人で開けるからね。見ちゃだめだよ?ふん……」

 仲直りした後で開けばいい。これがいい口実になるからよかった。リボンを解くぐらいに留めておこうと思い、箱を膝の上に置き直した。

 横を向いた体を正面に戻すと、黒崎が微笑みながら窓の外を眺めていた。彼のことを怖いと思っていた4カ月前の姿はどこにもないし、いつでも触れる距離にいる。もう怖くない。すると、黒崎が長い足を組んで昼間の空を眺めて、遠くの方に見える海へ視線を向けた。じっと見つめていると、ふいに笑われた。気づいているなら声をかけろと言い返すと、強引に引っ張られて、隣へ座らされた。
 
「怒っていないの?」
「叱ってもらいたいのか?何も理由がないぞ」
「ええ?可愛らしい子がいないって……」
「何のことだ?今はここにいる。ほら、お前の好きな建物があるぞ。モスクのレプリカじゃ懺悔ができない。そうだったな?」
「なんだよ~。喧嘩を売るなよ。そういう人にはね、勉強になるものを読ませることにした。ちょっと待ってね……」

 今日は大きめのバッグを持って来た。黒崎から不思議がられた。そんなに荷物はないだろう?と言っていた。俺はその時、気に入っているからだと言い訳をして、ある大事なものを忍ばせて来た。

「黒崎さん。贈り物のことは、バレているよね?言ってもいいんだよ?」
「ママたちが遊びに来ているのか?」
「そうだよ。黒崎さんには、ママとデートしてもらう。俺は二葉ちゃん達と遊ぶ。制限時間は1時間だよ~。ママが泣いているのを慰める、タイムリミット。頑張れよ」
「お節介焼きだな……」
「はい、これ……」
「これは……」

 黒崎に渡したのは手紙の束だ。ママが黒崎家から出て行った後、何度も黒崎に手紙を出した。でも、それらは全てお義父さんから送り返されてしまった。ママは大事に取ってあった。黒崎に読んでもらいたいという二葉と朝陽の希望を叶えたくて、今日、預かって持ってきた。
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