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でも、黒崎は読みたくないと言い出した。未来に向かっているからだという理由だった。俺が納得した。今は渡すだけでも良いと言うと、彼が頷いた。
「お手伝いさんの文香さんから聞いた話の通りだよ。家を出た後、ママはあんたに何回も手紙を出したんだ。その度に送り返された。まとめて返って来るようになったから、諦めたそうだよ。……大事に持っていたのを、二葉ちゃんが見つけたんだ。ママはあんたに見せようとしなかった。これを言い訳にして、許して貰いたくないからだよ。でも、二葉ちゃんと朝陽君は、あんたに読んでもらいたいと思っているんだ。……うちのお母さんに相談したら、こう教えてもらったんだ。お義父さんはあんたのことを渡したくなかったから読ませなかったんじゃないかって言っていたよ。それは分かってあげて欲しい。これからママとたくさん話をしようね」
黒崎が無言になった。バッグの中から取り出した手紙の束を、彼の膝の上に置いた。端っこが擦り切れているが、読むことが出来る。
「このゴンドラは、タイムマシーンに変わったよ。もうすぐで、圭一君が生まれてくる時間だよ。12月10日の12時48分……。あんたが生まれた時間だよ。……3、2、1、0。……誕生日おめでとう!」
「0歳児になった気分だ」
「うん。もうすぐ頂上に来る。魔法使いが現れて、12歳に成長させられるよ。ここを降りた後、ママとデートしてね。この乗り場の前で待ち合わせしよう。34歳の黒崎さんを迎えてくれるからね。あ……」
せっかく頂上へ上がったのに、眺められなくなった。キスをしているからだ。静寂に包まれたゴンドラの中は無音ではない。お互いの呼吸の音が聞こえるし、他のゴンドラからの音が響いている。夢であり現実でもある。
「黒崎さん。頂上を眺めようよ。この間は喧嘩中だったからさ~」
「ありがとう。お前からはもらってばかりだ」
「ううん。俺の方も贈り物を受け取ったよ。あんたの笑顔だよ。このリボン結び、朝陽君がいびつな形になったから結び直したそうだよ。何回も結び直したから、こんなに皺がついたそうだよ。可愛いリボンだよね」
黒崎の膝に置いた手紙の束には、二葉達が結んだリボンが掛けられている。しっかりと芯を結んであるから、少しぐらい落としても、手紙がバラけないで済む。これからのママと黒崎のことを祈って掛けられた物だ。
黒崎がリボン結びを解いた後、優しい微笑みを浮かべた。泣きたい気分だろうから、俺の方は視線をそらしておこうと思った。すると、左手を引っ張られた。
どうしたの?そう聞く前に、俺の方がうれし泣きをしたい気分になった。リボンが俺の手首に巻き付いた後、とても綺麗なリボン結びをされたからだ。
「一緒に行こう。5人で賑やかに歩きたい。それを贈り物にしてくれ」
「いいの?遠慮していないの?」
「するわけがないだろう。二葉と朝陽に面倒をかけたくない。そういうことだ」
「黒崎さん。いいよ。それでも……」
泣いていると誤解されるから、急いで涙を引っ込めた。
……ガタン、ガタン。
……気をつけて降りてくださーーい。
ゴンドラが地上へ降りて行く。係員の声が鉄の壁越しに聞こえて来た後、照れくさそうに、3人が手を振ってくれた。ママの夫の倉口さんは遠慮して、今日は来ていない。いつかみんなで会えるといいと思う。
プレゼント箱の中身は、ウサギーの帽子だった。さっき買った物と同じだった。黒崎にかぶせてやると嫌がったから、大事に箱にしまった。それをママに話すと笑っていた。俺達は笑い合い、青空の下に広がる、おとぎの国へ出発した。
「お手伝いさんの文香さんから聞いた話の通りだよ。家を出た後、ママはあんたに何回も手紙を出したんだ。その度に送り返された。まとめて返って来るようになったから、諦めたそうだよ。……大事に持っていたのを、二葉ちゃんが見つけたんだ。ママはあんたに見せようとしなかった。これを言い訳にして、許して貰いたくないからだよ。でも、二葉ちゃんと朝陽君は、あんたに読んでもらいたいと思っているんだ。……うちのお母さんに相談したら、こう教えてもらったんだ。お義父さんはあんたのことを渡したくなかったから読ませなかったんじゃないかって言っていたよ。それは分かってあげて欲しい。これからママとたくさん話をしようね」
黒崎が無言になった。バッグの中から取り出した手紙の束を、彼の膝の上に置いた。端っこが擦り切れているが、読むことが出来る。
「このゴンドラは、タイムマシーンに変わったよ。もうすぐで、圭一君が生まれてくる時間だよ。12月10日の12時48分……。あんたが生まれた時間だよ。……3、2、1、0。……誕生日おめでとう!」
「0歳児になった気分だ」
「うん。もうすぐ頂上に来る。魔法使いが現れて、12歳に成長させられるよ。ここを降りた後、ママとデートしてね。この乗り場の前で待ち合わせしよう。34歳の黒崎さんを迎えてくれるからね。あ……」
せっかく頂上へ上がったのに、眺められなくなった。キスをしているからだ。静寂に包まれたゴンドラの中は無音ではない。お互いの呼吸の音が聞こえるし、他のゴンドラからの音が響いている。夢であり現実でもある。
「黒崎さん。頂上を眺めようよ。この間は喧嘩中だったからさ~」
「ありがとう。お前からはもらってばかりだ」
「ううん。俺の方も贈り物を受け取ったよ。あんたの笑顔だよ。このリボン結び、朝陽君がいびつな形になったから結び直したそうだよ。何回も結び直したから、こんなに皺がついたそうだよ。可愛いリボンだよね」
黒崎の膝に置いた手紙の束には、二葉達が結んだリボンが掛けられている。しっかりと芯を結んであるから、少しぐらい落としても、手紙がバラけないで済む。これからのママと黒崎のことを祈って掛けられた物だ。
黒崎がリボン結びを解いた後、優しい微笑みを浮かべた。泣きたい気分だろうから、俺の方は視線をそらしておこうと思った。すると、左手を引っ張られた。
どうしたの?そう聞く前に、俺の方がうれし泣きをしたい気分になった。リボンが俺の手首に巻き付いた後、とても綺麗なリボン結びをされたからだ。
「一緒に行こう。5人で賑やかに歩きたい。それを贈り物にしてくれ」
「いいの?遠慮していないの?」
「するわけがないだろう。二葉と朝陽に面倒をかけたくない。そういうことだ」
「黒崎さん。いいよ。それでも……」
泣いていると誤解されるから、急いで涙を引っ込めた。
……ガタン、ガタン。
……気をつけて降りてくださーーい。
ゴンドラが地上へ降りて行く。係員の声が鉄の壁越しに聞こえて来た後、照れくさそうに、3人が手を振ってくれた。ママの夫の倉口さんは遠慮して、今日は来ていない。いつかみんなで会えるといいと思う。
プレゼント箱の中身は、ウサギーの帽子だった。さっき買った物と同じだった。黒崎にかぶせてやると嫌がったから、大事に箱にしまった。それをママに話すと笑っていた。俺達は笑い合い、青空の下に広がる、おとぎの国へ出発した。
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