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14時半。
TAKU南天王寺から届けてもらった昼ご飯を食べながら、リビングのテレビを眺めた。黒崎の方は先に食事を澄ませて、電子新聞を読んでいる。やっとこの時間に読めたのだろう。そう思っていると、気にするなと笑われた。
テレビを観ていると、見慣れた男性が画面に映った。”黒崎ホールディングスの成長”という、テロップが出ている。ニュースの中で特集されているから、驚いて声を上げた。
「黒崎さんが映ってるよ。いつ決まったんだよ?教えてくれたらいいのに」
「忘れていた。この間の取材分だな」
「せっかく会社の宣伝になるのに、嬉しそうじゃないね?」
「レストランをメインで扱う話で引き受けたが、途中で内容が変更されたからだ。……社長就任後から、現在までの話が中心になった。引き受けた以上、やめることはしない」
「人気があるもんね。雑誌の記事に出ると、売り上げが上がるんだってさ」
「ん?どこからの情報だ?」
「沙耶さんから聞いたんだ。知り合いの人が出版社で働いているからって……」
「宮岡のことだな。そうだ。密着取材をしたいというオファーが来ている。テレビ番組だ。プライベートは遠慮してくれと条件を出したが、かなり押されている。構わないか?」
意外な話に驚いた。取材を受けるのは会社の宣伝になるものだけで、プライベートは受け付けなかったのに。
「もちろん構わないよ。どんな心境の変化なの?」
「新婚生活に浮かれているからだ」
「ゴホッ。マジで?」
「そんなに意外か?結婚生活を送っていることに興味を持たれた。今どき珍しい話じゃないとは言っても、公表するケースは少ないようだ。……黒崎ホールディングスと黒崎製菓としては、マイナスには捉えていない。お前が俺のものだと、全国に知らせてやる」
「……ええ?俺もテレビに出るの?」
「……朝の出勤前と、書斎の中を映したいそうだ。受験に響かないようにすると約束している。年の差カップルということにも興味があるそうだ」
「大らかになったね~。テレビに出るのを嫌がりそうなのに。束縛旦那だからさ」
「俺のものだと知らしめたいからだ。返事をしておく」
黒崎がパソコンのキーを叩き始めた。さっそく返事をしているのだろう。いつもながら判断も行動も早い。そして、薬の袋を開けて差し出された。
「この組み合わせだ。もう少し後で、アンを美容院へ迎えに行ってくる。そうだ、来週は検診だぞ。お前の美容院へも連れていく」
「……あれ?黒崎さんの20歳当時だってさ」
テレビを見ていると、20歳当時の黒崎の映像が流れた。お義父さんも映っている。不思議に思ったのは、何処かのキッチンに居たからだ。どこで撮ったのだろう。
「親父が通っている料亭だ。秘書時代の他にもバイトをした。大学の休み期間を利用した。……日本酒を温める仕事をやっていた」
「珍しいバイトだねー?」
「ぬるめ、熱め、好みが分かれている。仲居が部屋へ運んで、客が口にするタイミングを考えて温めていた。客は経営者や重役が多い。接待する側になった時に、相手の好みを知っているのは大きい。……裏方の仕事も学べと命令された」
「黒埼さんのことを考えてくれたんだね。音大の話を聞いた時は嫌だったけど」
「やる事が強引だ。経営者としては尊敬している」
「お義父さんに聞いてみようっと。俺も何かしたいから。黒崎製菓の一階にカフェがあるよね?シャルロットキッチン。バイトをしてみたい」
「どうして俺よりも親父に相談するんだ?」
「隆さんはノリが良いもん。あんたみたいに腰が重くないからさ」
「何だって?夏樹ちゃんと呼んでいることにも腹が立つ」
「もう、妬くなよ~。ごほっ」
軽く言い合いをしたから、咳き込んでしまった。いつもなら言い返してくるのに、違っていた。肩に羽織っていたカーディガンを直してくれたから、胸がキュンとした。たまには風邪を引くのもいいなと、本気で思ってしまった。
「……あ、お兄ちゃんから電話だ。下へ着いたかも」
「……俺が迎えに行く」
寝室へ戻ろうとした時、着信が鳴った。一階のロビーへ到着したという連絡だった。こっちから迎えに降りた方が早い。その役目を黒崎が担った。今後のために関係を築きたい。2人がそう話していたこと自体が引っかかった。そこまで言わないと踏ん切りが付かないのかと思った。
ベッドに入って休んでいろ。黒崎がそう言い残して、伊吹を迎えに行くために玄関を出た。
TAKU南天王寺から届けてもらった昼ご飯を食べながら、リビングのテレビを眺めた。黒崎の方は先に食事を澄ませて、電子新聞を読んでいる。やっとこの時間に読めたのだろう。そう思っていると、気にするなと笑われた。
テレビを観ていると、見慣れた男性が画面に映った。”黒崎ホールディングスの成長”という、テロップが出ている。ニュースの中で特集されているから、驚いて声を上げた。
「黒崎さんが映ってるよ。いつ決まったんだよ?教えてくれたらいいのに」
「忘れていた。この間の取材分だな」
「せっかく会社の宣伝になるのに、嬉しそうじゃないね?」
「レストランをメインで扱う話で引き受けたが、途中で内容が変更されたからだ。……社長就任後から、現在までの話が中心になった。引き受けた以上、やめることはしない」
「人気があるもんね。雑誌の記事に出ると、売り上げが上がるんだってさ」
「ん?どこからの情報だ?」
「沙耶さんから聞いたんだ。知り合いの人が出版社で働いているからって……」
「宮岡のことだな。そうだ。密着取材をしたいというオファーが来ている。テレビ番組だ。プライベートは遠慮してくれと条件を出したが、かなり押されている。構わないか?」
意外な話に驚いた。取材を受けるのは会社の宣伝になるものだけで、プライベートは受け付けなかったのに。
「もちろん構わないよ。どんな心境の変化なの?」
「新婚生活に浮かれているからだ」
「ゴホッ。マジで?」
「そんなに意外か?結婚生活を送っていることに興味を持たれた。今どき珍しい話じゃないとは言っても、公表するケースは少ないようだ。……黒崎ホールディングスと黒崎製菓としては、マイナスには捉えていない。お前が俺のものだと、全国に知らせてやる」
「……ええ?俺もテレビに出るの?」
「……朝の出勤前と、書斎の中を映したいそうだ。受験に響かないようにすると約束している。年の差カップルということにも興味があるそうだ」
「大らかになったね~。テレビに出るのを嫌がりそうなのに。束縛旦那だからさ」
「俺のものだと知らしめたいからだ。返事をしておく」
黒崎がパソコンのキーを叩き始めた。さっそく返事をしているのだろう。いつもながら判断も行動も早い。そして、薬の袋を開けて差し出された。
「この組み合わせだ。もう少し後で、アンを美容院へ迎えに行ってくる。そうだ、来週は検診だぞ。お前の美容院へも連れていく」
「……あれ?黒崎さんの20歳当時だってさ」
テレビを見ていると、20歳当時の黒崎の映像が流れた。お義父さんも映っている。不思議に思ったのは、何処かのキッチンに居たからだ。どこで撮ったのだろう。
「親父が通っている料亭だ。秘書時代の他にもバイトをした。大学の休み期間を利用した。……日本酒を温める仕事をやっていた」
「珍しいバイトだねー?」
「ぬるめ、熱め、好みが分かれている。仲居が部屋へ運んで、客が口にするタイミングを考えて温めていた。客は経営者や重役が多い。接待する側になった時に、相手の好みを知っているのは大きい。……裏方の仕事も学べと命令された」
「黒埼さんのことを考えてくれたんだね。音大の話を聞いた時は嫌だったけど」
「やる事が強引だ。経営者としては尊敬している」
「お義父さんに聞いてみようっと。俺も何かしたいから。黒崎製菓の一階にカフェがあるよね?シャルロットキッチン。バイトをしてみたい」
「どうして俺よりも親父に相談するんだ?」
「隆さんはノリが良いもん。あんたみたいに腰が重くないからさ」
「何だって?夏樹ちゃんと呼んでいることにも腹が立つ」
「もう、妬くなよ~。ごほっ」
軽く言い合いをしたから、咳き込んでしまった。いつもなら言い返してくるのに、違っていた。肩に羽織っていたカーディガンを直してくれたから、胸がキュンとした。たまには風邪を引くのもいいなと、本気で思ってしまった。
「……あ、お兄ちゃんから電話だ。下へ着いたかも」
「……俺が迎えに行く」
寝室へ戻ろうとした時、着信が鳴った。一階のロビーへ到着したという連絡だった。こっちから迎えに降りた方が早い。その役目を黒崎が担った。今後のために関係を築きたい。2人がそう話していたこと自体が引っかかった。そこまで言わないと踏ん切りが付かないのかと思った。
ベッドに入って休んでいろ。黒崎がそう言い残して、伊吹を迎えに行くために玄関を出た。
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