アイアンエンジェル~あの日の旋律

夏目奈緖

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 18時。

 もうすぐでパーティーが始まる。室内には出席者が集まり、小さな声で会話をしている。俺たちのいるテーブルも同じだが、黒崎と沙耶さんの組み合わせとあっては、和やかにはならない。軽い言い合いが始まっている。そして、周りの人から沙耶さんが羨望のまなざしのようなものを受け取っていた。黒崎がド迫力だからだ。そういう彼にポンポンと物を言い返す女性に、周りが驚いている。

「あら。黒崎君。私はあなたたちのキューピッドよ。夏樹君が怪我をした時、黒崎君のことを呼ばなかったら、ここにはいないのよ?都合のいい女の人の誰かから刺されて、私のことを雇っていたかもー?」
「分かった。さっきの話の条件を飲んでやる」
「もう一つは?」
「だめだ。そこまで出来ない」
「この間は、無理を聞いたじゃない。夏樹君に暴露するわよ?私をタクシーへ押し込んだ日の……」
「……夏樹に話した」
「あら。じゃあ、タクシーに押し込む前の……」
「条件を飲む。口を閉じてくれ」
「いいわよー?夏樹君が怖いのねー」
「うるさい」

 沙耶さんが勝利した。黒崎に口で勝てる人は、滅多にいない。バシバシ叩ける人もだ。そして、言い合いをするのは沙耶さん以外だと俺ぐらいだと思う。でも、黒崎が拗ねた言い方で言い返す相手は沙耶さんだけだと思う。

「バカ沙耶!」
「まあ、子供ねえ。夏樹君、先月末の面白い話をしましょうか?」
「うん、聞きたい」
「帰るのが遅くなった日があったわよね?黒崎君が忙しくて、伊吹君が送ってくれた日よ」
「うん。覚えているよ。何かあったわけ?」
「遅くなるとは伝えていても、その時間に帰らなかったから心配していたのよ。社長室にいる間、そわそわと落ち着かなかったんだから」
「黒崎さんが先に帰っていたんだ。何も言われなかったけど?」
「ふうん。強がったのね」
「沙耶、いい加減にしてくれ……。どうした?」

 黒崎が話を遮ろうとした時、支配人から呼ばれた。俺たちに断り席を立って、室内の隅で話し始めた。

「いいタイミングだったわね。家の中ではどう?偉そうなの?」
「マシになったよ。それにね。下着一枚で冷蔵庫を開けるようになったんだよ」
「小言が長くて、エロさが増したのね……」
「そうなんだよ~。料理にも口うるさくなったしさ~」

 席を外しているのをいいことに、好き放題に話してやった。そろそろ開始時間だと話すと、黒崎が席に戻って来た。彼のことを目線で追っている招待客も多い。家ではどんなにエロい人なのか想像できないと思う。さっきまで愚痴を言っていた俺なのに、得意満面になり、黒崎の手を握った。
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