アイアンエンジェル~あの日の旋律

夏目奈緖

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 15分後。

 黒崎の腰に湿布を貼った。二枚目を貼ろうとすると、黒崎が嫌がった。でも、俺は貼ろうと思った。ベッドにうつぶせで寝てもらい、湿布薬の袋を開封した。シートを横へ引いて伸ばした後、腰へ貼り付けた。そして、丁寧にフィルムを剥がして、湿布の上から手を当てて密着させた。

「凝っているところがあるだろうから貼った方がいいよ。カッコ悪いことじゃないよ。匂いだって控えめだしさ。はい、出来たよ」
「使いたくなかった……」
「先週から忙しかったし。ひと段落着いたから、ホッとしたんじゃないの?」
「大人になったな」
「来月から大学生だもん。今週には高校卒業するし」
「卒業式に出られるようにする」
「うん、ありがとう。明日も休みなんだよね?」
「ああ。行きたいところがあるのか?」
「うん。細川さんからお祝いを貰ったんだよ。受け取ったのはお菓子だけにしたけどさ。高坂さんからも。お返しを買いに行こうと思ってる。ランチにも誘ってくれたんだ。お別れになるからってさ……。気を遣ってもらったよ」
「……早く治しておく。お返しを買いに行こう」
「うん、そうしようねー」 

 このマンションで暮らし始めたのは、5か月前だ。そんなに経っていないのに、別れを惜しんでくれる人が出来たことに感謝した。ロビーへ降りるたびに、女性達から黒崎が声を掛けられている。モヤモヤして面白くない気分だが、いい変化だと思っている。

「新しい場所でもモテるだろうね~」
「デートに誘えない。バレた後が恐ろしい」
「なんだよー?バレなきゃ誘うつもりかよ?」
「こっちへおいで。拗ねるな」

 仰向けになっている身体に覆いかぶさるようにして、唇を重ね合わせた。飽きるくらいに長くキスをした後、強引に腕の中に入った。

「もう寝るのか?」
「うん。早いけどね。黒崎さんも寝ろよ……」
「ああ……」

 リモコンのスイッチを押して、部屋の照明を落とした。そして、布団を肩まで掛けて、黒崎の身体を湯たんぽかわりにして目を閉じた。こうして夜が更けていった。
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