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8-1 卒業式
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3月12日、木曜日。午前6時。
今日は開明高校の卒業式だ。代表として答辞を読むことになった。それはなぜかというと、4年前に卒業した伊吹のせいだった。教頭先生からの話がそう言っていた。伊吹が答辞を読んだとき、その内容が、担任教師の花森先生への嫌味を込められたものであり、今も伝説となって語りづがれている。その弟である俺が壇上に上がることで、ちゃんとしたものに記憶を書き換えたくなったそうだ。校長先生と田中先生は笑っていた。
俺としては教頭先生の意見に賛同した。中山家としても、恥ずかしすぎる。黒崎からどんな答辞だったのかと聞かれるかと思いきや、大体の想像がつくから言わなくて構わないと言われた。
キッチンに立ち、普段よりも品数の多い朝ごはんを用意している。今朝は洋食系にした。作り置きおかずも活用している。
「黒崎さん。おはよう。疲れは取れた?」
「おはよう。だいぶスッキリした。……手の込んだ朝食じゃないか。俺に合わせなくても構わない。引っ越し準備がある」
「スペシャル版にしたかったんだ。しばらくは、テイクアウト頼りだもん。ホテルのレストランの朝食も楽しみだよ~」
「ここの景色を楽しんでおこう。もう帰って来ない」
「うん。帰省した時になるもんね。その時は雨からも知れないし。……平気だよ?いつかは地元を離れるものだよ。俺の場合は結婚したから。帰って来ないのは分かっているよ……っ」
「ほら。泣いた。森本君達がいるじゃないか」
「うん。とうとう次のステップに進むんだなって思って」
優しく抱き寄せられて、頬にキスをされた。唇にしない理由は、押し倒したくなるのを堪えるためだという。そういう軽い冗談で笑わされた。さらに黒崎から意地悪そうに笑われて腰を撫でられた。それに気づかないふりをして、スープを温め始めた。お鍋だけ視線を向けている。
「夏樹」
「なにー?こら!」
イヤらしく耳元を舐められた後、お玉で黒崎の肩を叩いてやった。そして、水で洗い流して別の物に変えた。後で食洗機にセットする。
「夏樹、そこまでするな」
「洗うのは当たり前だからね。手が空いているなら、トーストを焼いてよ。そこに置いてあるから」
今度は足で軽く蹴ってやると、笑いながらパンを手にしていた。黒崎が手慣れた手つきでトーストにセットし、珈琲を注ぎ入れる姿を眺めて確信を得た。やればできることを。甘えてもらえるのは嬉しいから、何も言わないでおこう。
黒崎こそ、これから今まで以上に忙しい毎日が待っていると思う。黒崎は、黒崎製菓の深川副社長の秘書として、3年間の勤務したことがあると言っていた。その彼が黒崎製菓に帰ってくるということで、黒崎を歓迎する人が多いそうだ。伊吹が話していた黒崎グループ内での評判は良いものだった。経営しているレストランでは、スタッフへの態度も優しかった。
「夏樹。襟を直してやる」
「ありがとう」
出かける支度をする間、シャツの襟元を直された。答辞を読む前には袖口を直しておけとアドレスを受けて、一緒に玄関を出た。
今日は開明高校の卒業式だ。代表として答辞を読むことになった。それはなぜかというと、4年前に卒業した伊吹のせいだった。教頭先生からの話がそう言っていた。伊吹が答辞を読んだとき、その内容が、担任教師の花森先生への嫌味を込められたものであり、今も伝説となって語りづがれている。その弟である俺が壇上に上がることで、ちゃんとしたものに記憶を書き換えたくなったそうだ。校長先生と田中先生は笑っていた。
俺としては教頭先生の意見に賛同した。中山家としても、恥ずかしすぎる。黒崎からどんな答辞だったのかと聞かれるかと思いきや、大体の想像がつくから言わなくて構わないと言われた。
キッチンに立ち、普段よりも品数の多い朝ごはんを用意している。今朝は洋食系にした。作り置きおかずも活用している。
「黒崎さん。おはよう。疲れは取れた?」
「おはよう。だいぶスッキリした。……手の込んだ朝食じゃないか。俺に合わせなくても構わない。引っ越し準備がある」
「スペシャル版にしたかったんだ。しばらくは、テイクアウト頼りだもん。ホテルのレストランの朝食も楽しみだよ~」
「ここの景色を楽しんでおこう。もう帰って来ない」
「うん。帰省した時になるもんね。その時は雨からも知れないし。……平気だよ?いつかは地元を離れるものだよ。俺の場合は結婚したから。帰って来ないのは分かっているよ……っ」
「ほら。泣いた。森本君達がいるじゃないか」
「うん。とうとう次のステップに進むんだなって思って」
優しく抱き寄せられて、頬にキスをされた。唇にしない理由は、押し倒したくなるのを堪えるためだという。そういう軽い冗談で笑わされた。さらに黒崎から意地悪そうに笑われて腰を撫でられた。それに気づかないふりをして、スープを温め始めた。お鍋だけ視線を向けている。
「夏樹」
「なにー?こら!」
イヤらしく耳元を舐められた後、お玉で黒崎の肩を叩いてやった。そして、水で洗い流して別の物に変えた。後で食洗機にセットする。
「夏樹、そこまでするな」
「洗うのは当たり前だからね。手が空いているなら、トーストを焼いてよ。そこに置いてあるから」
今度は足で軽く蹴ってやると、笑いながらパンを手にしていた。黒崎が手慣れた手つきでトーストにセットし、珈琲を注ぎ入れる姿を眺めて確信を得た。やればできることを。甘えてもらえるのは嬉しいから、何も言わないでおこう。
黒崎こそ、これから今まで以上に忙しい毎日が待っていると思う。黒崎は、黒崎製菓の深川副社長の秘書として、3年間の勤務したことがあると言っていた。その彼が黒崎製菓に帰ってくるということで、黒崎を歓迎する人が多いそうだ。伊吹が話していた黒崎グループ内での評判は良いものだった。経営しているレストランでは、スタッフへの態度も優しかった。
「夏樹。襟を直してやる」
「ありがとう」
出かける支度をする間、シャツの襟元を直された。答辞を読む前には袖口を直しておけとアドレスを受けて、一緒に玄関を出た。
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