57 / 283
8-2
しおりを挟む
午前8時。
マンションを出て車に乗り込んだ。今日が最後の登下校だ。大学入学後は黒崎は送迎ができないから、寂しいような、ホッとしたような心地だ。
スーツ姿の黒崎が運転席にいる光景を見るのは、久しぶりだ。外食に行く時は、スーツ着用が必要ない店を選ぶようになった。どんな心境の変化だろうか。さっそく聞いてみた。
「会食で行くからだ。お前と行くのは、肩の凝らない店がいい」
「……家庭的な料理が好きになったからか。嬉しいな。あんたの越えた舌を満たせるのは。マスタードの量で、文句を言うくせに。それも食べたいって?ふふん」
「……制服姿は今日で見納めか。寂しい気分だ」
「俺も同じだよ。女の子に間違われていたのに、今は間違われることがないし。環境も家族構成も変わったね。制服ともサヨナラして、新しい場所へ移るんだ。でも、黒崎さんは一緒にいるもんね?」
「もちろんだ。病めるときも、健やかなるときもだ」
「うん……」
「18歳だった子が、来月には19歳になるのか。早いものだ」
「子ども扱いするなよ~」
「大人扱いしたら怒るだろうが」
「イヤらしいんだよ、あんたは……」
「オジサンだからな」
「ギックリ腰!」
「……うるさい」
普段通りの他愛ない会話をしながら、開明高校グラウンドへ入った。今日の臨時駐車場だからだ。すでに何台も停まっている。先生達に混ざって、大学生の姿もあった。地元の大学との交流があり、今日のような人手が必要な時には、バイトを頼んでいる。その駐車場の誘導の手伝いをしている学生の中に、二葉が立っていた。彼女が俺達を見て手を振ってくれた。
「お兄ちゃーん。夏樹君も!」
「久しぶりだねー」
「二葉。今日はどうしたんだ?」
「ここのバイトよ。夏樹君、合格おめでとう!」
「ありがとう!」
黒崎と二葉が並んで話し始めた。二人は外見も性格もよく似ていると思う。黒崎の外見は、お義父さんとママの両方に似ていると思う。そういう黒崎と二葉は目元が似ている。二葉はママが倉口さんと再婚した後で生まれたと聞いている。だから二人が似ていることが不思議だ。ママと二葉はあまり似ていない印象だ。お義父さんにも似ていると思う。それに、黒崎の性格はお義父さんと似ているのに、二葉が似ているから不思議だ。
「お兄ちゃん。黒崎製菓のコンテストに応募したの。これで2回目。去年よりもテーマが変わってきたわね?合併が影響しているの?」
「それはあり得る」
「そっか。じゃあ、あのお店って……」
「興味があるのなら、帰った後で資料を添付して送る。レポート作成に使用しても構わないぞ」
「良かった。ありがとう!」
ぼんやり見つめていると、二人から呼ばれて我に返った。その表情が同じに見えたから吹き出して笑うと、黒崎から下唇を引っ張られてしまった。こうしてイチャついていると、周りからの視線を感じた。俺は恥ずかしくなり、顔が赤くなってしまった。そういう俺のことを見て、二葉が微笑んでいた。
マンションを出て車に乗り込んだ。今日が最後の登下校だ。大学入学後は黒崎は送迎ができないから、寂しいような、ホッとしたような心地だ。
スーツ姿の黒崎が運転席にいる光景を見るのは、久しぶりだ。外食に行く時は、スーツ着用が必要ない店を選ぶようになった。どんな心境の変化だろうか。さっそく聞いてみた。
「会食で行くからだ。お前と行くのは、肩の凝らない店がいい」
「……家庭的な料理が好きになったからか。嬉しいな。あんたの越えた舌を満たせるのは。マスタードの量で、文句を言うくせに。それも食べたいって?ふふん」
「……制服姿は今日で見納めか。寂しい気分だ」
「俺も同じだよ。女の子に間違われていたのに、今は間違われることがないし。環境も家族構成も変わったね。制服ともサヨナラして、新しい場所へ移るんだ。でも、黒崎さんは一緒にいるもんね?」
「もちろんだ。病めるときも、健やかなるときもだ」
「うん……」
「18歳だった子が、来月には19歳になるのか。早いものだ」
「子ども扱いするなよ~」
「大人扱いしたら怒るだろうが」
「イヤらしいんだよ、あんたは……」
「オジサンだからな」
「ギックリ腰!」
「……うるさい」
普段通りの他愛ない会話をしながら、開明高校グラウンドへ入った。今日の臨時駐車場だからだ。すでに何台も停まっている。先生達に混ざって、大学生の姿もあった。地元の大学との交流があり、今日のような人手が必要な時には、バイトを頼んでいる。その駐車場の誘導の手伝いをしている学生の中に、二葉が立っていた。彼女が俺達を見て手を振ってくれた。
「お兄ちゃーん。夏樹君も!」
「久しぶりだねー」
「二葉。今日はどうしたんだ?」
「ここのバイトよ。夏樹君、合格おめでとう!」
「ありがとう!」
黒崎と二葉が並んで話し始めた。二人は外見も性格もよく似ていると思う。黒崎の外見は、お義父さんとママの両方に似ていると思う。そういう黒崎と二葉は目元が似ている。二葉はママが倉口さんと再婚した後で生まれたと聞いている。だから二人が似ていることが不思議だ。ママと二葉はあまり似ていない印象だ。お義父さんにも似ていると思う。それに、黒崎の性格はお義父さんと似ているのに、二葉が似ているから不思議だ。
「お兄ちゃん。黒崎製菓のコンテストに応募したの。これで2回目。去年よりもテーマが変わってきたわね?合併が影響しているの?」
「それはあり得る」
「そっか。じゃあ、あのお店って……」
「興味があるのなら、帰った後で資料を添付して送る。レポート作成に使用しても構わないぞ」
「良かった。ありがとう!」
ぼんやり見つめていると、二人から呼ばれて我に返った。その表情が同じに見えたから吹き出して笑うと、黒崎から下唇を引っ張られてしまった。こうしてイチャついていると、周りからの視線を感じた。俺は恥ずかしくなり、顔が赤くなってしまった。そういう俺のことを見て、二葉が微笑んでいた。
0
あなたにおすすめの小説
若頭の溺愛は、今日も平常運転です
なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編!
過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。
ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。
だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。
……俺も、ちゃんと応えたい。
笑って泣けて、めいっぱい甘い!
騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー!
※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。
死ぬほど嫌いな上司と付き合いました【完結】
三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。
皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。
涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥
上司×部下BL
悠と榎本
暁エネル
BL
中学校の入学式で 衝撃を受けた このドキドキは何なのか
そいつの事を 無意識に探してしまう
見ているだけで 良かったものの
2年生になり まさかの同じクラスに 俺は どうしたら・・・
イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話
タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。
瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。
笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
純白のレゾン
雨水林檎
BL
《日常系BL風味義理親子(もしくは兄弟)な物語》
この関係は出会った時からだと、数えてみればもう十年余。
親子のようにもしくは兄弟のようなささいな理由を含めて、少しの雑音を聴きながら今日も二人でただ生きています。
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。
紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※表紙をAI君に描いてもらいました。(2026.2.21)
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる