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このまま読むわけにはいかないと思う。どうしようかと思った。
(こう読み替えよう。申し訳ないけど、花森先生への嫌味が入るなあ。黒崎さんのことを守りたい。よーーし)
さっそく読み替えることにした。
「……男性から付きまとわれていても、花森先生だけは何も策を講じませんでした。自由恋愛だとは言っても、大切な生徒のことです。その男性が、男子生徒のことを思って送迎をしているからでしょうか。……いいえ、そうではありません。教頭先生と親しい為、余計な口出しをしたくなかったからでありましょう。……自由恋愛を実践しているくせに、事なかれ主義。この事実に、さらに驚きを禁じ得ません。これもまずい。こほん……」
続きには、こう書かれている。ーー男性は女性関係が乱れていました。しかしながら、男子生徒と出会った直後に身辺整理を行った事実に対しては、こちらは文句が言えません。誠実な行為であります。
ーー数々の女性と食事を共にした結果、男性は、かなりの恋愛上級者になったはずです。ウブな男子生徒を追い込もうと、男性は必死でした。良い返事がもらえなくても機嫌を損ねない彼は誠実だと言えましょう。しかし、その時点で策を講じていれば、男子生徒には別の未来があったはずです。
(自分の正直な気持ちを伝えよう。俺も花森先生には言いたいことがある。でも、言いすぎかな……)
「……何が嬉しくて、男子生徒は、18歳という若さで結婚する羽目になるのでしょうか。恋愛経験も社会経験も豊富な男性に追い立てられて、彼しか選べない状況に追い込まれても、男子生徒は知る由もありません。花森先生の怠慢であります」
(ざわつき始めたなあ。読み替える努力をしているのに。もう少しで終わる。黒崎さん、俺がいるから大丈夫だよ。守ってあげるからね!)
「……男性は、男子生徒のことを、愛という名の下に束縛しています。他の男性との会話は基本的に禁止です。犬の散歩は、30分以内に帰宅すること。……花森先生が策を講じていれば、男子生徒は、このような目に遭いませんでした」
伊吹が黒崎と無言で争い始めた。さらに花森先生とにらみ合っている。読み替えた影響だろう。黒崎のことを守るためだから仕方がない。花森先生には俺も困らされた。そして、俺も花森先生から告白されたことは伏せておこうと思った。
「……男子生徒は、結婚後は幸せに暮らしています。それがせめてもの救いです。花森先生も、少しは人の役に立ったということでありましょう。愛を込めて。中山伊吹。弟、中山夏樹……」
全てを読み上げた後、一礼した。会場内からすすり泣きが聞こえている。俺も泣きたい気分だ。こんなに変な答辞を読み上げたのに、温かい拍手を送られた。涙を拭いている人もいた。
自分の席に清々しく戻ろう。毅然とした態度で背筋を伸ばし、壇上の階段を降りて行こうとした。すると、視線を向けた先には、伊吹と黒崎の争いを止めている両親の姿があった。
それに気を取られて、階段の下のシートが捲れていることに気づかなかった。足元を取られてバランスを崩し、勢いよく手前に転んでしまった。
「わあーーーっ」
「夏樹……、大丈夫?」
「中山君。痛かっただろう。可哀想に。席に戻ろう……」
「俺の肩につかまって。痛むよね?保健の先生に……」
近くにいた、田中先生と藤沢に助け起こされた。どよめきが起きている。そして、伊吹と黒崎が俺の元へ駆け寄って来ようとしたから、大声で静止した。
「こっちに来るなーー!!」
2人の静止に成功したことを確認後、同情の拍手に送られて席に戻った。3年間の学び舎を去るセレモニーが、兄弟の情という名の鎖により、素晴らしい思い出になってしまった。
(こう読み替えよう。申し訳ないけど、花森先生への嫌味が入るなあ。黒崎さんのことを守りたい。よーーし)
さっそく読み替えることにした。
「……男性から付きまとわれていても、花森先生だけは何も策を講じませんでした。自由恋愛だとは言っても、大切な生徒のことです。その男性が、男子生徒のことを思って送迎をしているからでしょうか。……いいえ、そうではありません。教頭先生と親しい為、余計な口出しをしたくなかったからでありましょう。……自由恋愛を実践しているくせに、事なかれ主義。この事実に、さらに驚きを禁じ得ません。これもまずい。こほん……」
続きには、こう書かれている。ーー男性は女性関係が乱れていました。しかしながら、男子生徒と出会った直後に身辺整理を行った事実に対しては、こちらは文句が言えません。誠実な行為であります。
ーー数々の女性と食事を共にした結果、男性は、かなりの恋愛上級者になったはずです。ウブな男子生徒を追い込もうと、男性は必死でした。良い返事がもらえなくても機嫌を損ねない彼は誠実だと言えましょう。しかし、その時点で策を講じていれば、男子生徒には別の未来があったはずです。
(自分の正直な気持ちを伝えよう。俺も花森先生には言いたいことがある。でも、言いすぎかな……)
「……何が嬉しくて、男子生徒は、18歳という若さで結婚する羽目になるのでしょうか。恋愛経験も社会経験も豊富な男性に追い立てられて、彼しか選べない状況に追い込まれても、男子生徒は知る由もありません。花森先生の怠慢であります」
(ざわつき始めたなあ。読み替える努力をしているのに。もう少しで終わる。黒崎さん、俺がいるから大丈夫だよ。守ってあげるからね!)
「……男性は、男子生徒のことを、愛という名の下に束縛しています。他の男性との会話は基本的に禁止です。犬の散歩は、30分以内に帰宅すること。……花森先生が策を講じていれば、男子生徒は、このような目に遭いませんでした」
伊吹が黒崎と無言で争い始めた。さらに花森先生とにらみ合っている。読み替えた影響だろう。黒崎のことを守るためだから仕方がない。花森先生には俺も困らされた。そして、俺も花森先生から告白されたことは伏せておこうと思った。
「……男子生徒は、結婚後は幸せに暮らしています。それがせめてもの救いです。花森先生も、少しは人の役に立ったということでありましょう。愛を込めて。中山伊吹。弟、中山夏樹……」
全てを読み上げた後、一礼した。会場内からすすり泣きが聞こえている。俺も泣きたい気分だ。こんなに変な答辞を読み上げたのに、温かい拍手を送られた。涙を拭いている人もいた。
自分の席に清々しく戻ろう。毅然とした態度で背筋を伸ばし、壇上の階段を降りて行こうとした。すると、視線を向けた先には、伊吹と黒崎の争いを止めている両親の姿があった。
それに気を取られて、階段の下のシートが捲れていることに気づかなかった。足元を取られてバランスを崩し、勢いよく手前に転んでしまった。
「わあーーーっ」
「夏樹……、大丈夫?」
「中山君。痛かっただろう。可哀想に。席に戻ろう……」
「俺の肩につかまって。痛むよね?保健の先生に……」
近くにいた、田中先生と藤沢に助け起こされた。どよめきが起きている。そして、伊吹と黒崎が俺の元へ駆け寄って来ようとしたから、大声で静止した。
「こっちに来るなーー!!」
2人の静止に成功したことを確認後、同情の拍手に送られて席に戻った。3年間の学び舎を去るセレモニーが、兄弟の情という名の鎖により、素晴らしい思い出になってしまった。
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