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午前11時。
卒業式典が滞りなく進んで行くなか、とうとう答辞を読むことになった。緊張している。全校生徒、先生、来賓、保護者が見守る中、名前を呼ばれて椅子から立ち上がった。
答辞の原稿を手にして、壇上へ上がった。一礼した後、軽い深呼吸をした。一つの動作の度に鼓動が跳ねて、まともに前を向けない。ここで臆するわけにはいかない。何よりも、伊吹がやったことの上書きをしたいからだ。実家の両親は笑っているだけだ。
伊吹が答辞を読んだ日にあることが起きたことで、当初予定していた原稿を読まずに、アレンジして、花森先生への嫌みがおり混ざったものになったそうだ。何があったかというと、聡太郎が花森先生から告白されたからだった。その時は伊吹と聡太郎は付き合っていた。聡太郎は花森先生にきちんと断り、大人の対応をしそうだ。伊吹がいますのでと答えたそうだ。でも、本当に彼らの後ろに伊吹がいて、全ての話を聞いていた。その20分後に卒業式が始まり、アドリブで花森先生をコケにしたわけだ。
「卒業生代表、3年A組、中山夏樹!」
「はい!」
もう一度、名前を呼ばれた、原稿を取り出す手の感覚が鈍い。この緊張感のなか、一枚目を広げた。なぜか紙の感触に違和感がある。消しゴムを使ったかのようなヨレもあった。
「……本日は、僕たち卒業生のために、心温まる卒業式を挙行していただき、誠にありがとうございます。ご出席いただきました、ご来賓、保護者の方々には、心からお礼申し上げます。……皆さまからの激励のお言葉を胸に、125名は卒業いたします。よかったことも苦しかったことも、色々なことを経験させて……」
2枚目の原稿をめくった瞬間、ぎょっとした。原稿がすり替わっていたからだ。伊吹の筆跡だった。原稿には、これを読み上げてくれ、4年前の恨みを晴らしてくれと書いてあった。伊吹が書いた原稿には、花森先生への恨みが綴られており、黒崎への嫌味も織り交ぜられていた。わが校の男子生徒が付きまとわれていたのに、何の策も講じなかったと書いてあった。このまま読むのは避けたい内容だから、何とか自分の方で読み替えることにした。こんな事態を迎えて、当初の内容を忘れてしまったからだ。
「……お世話になった先生方や、二年生の学年主任である花森先生には、兄の伊吹が大変お世話になりました。二股の暴露を物ともせず、学校へ居座り続けた勇気と精神力には、驚きを禁じ得ません。そんな花森先生の事ですから……、まずい。こほん……」
原稿にはこう書かれていた。ー-わが校の3年生の男子生徒が、レストランにて怪我を負いました。優しい男性に助けられて、怖い思いをしながらも気持ちが和らぎました。しかし、その男性は、男子生徒の素の笑顔が見たいばかりに、嫌味を言い放ちました。挑発したのです。
ーー酒に酔った男性に問題があるとはいえ、自社の経営するレストランで起きた事であります。その証拠に、経営者である男性は両親へ謝罪しました。その事実があるのにも関わらず、男子生徒は男性に嫌味を向けられた。理不尽な行為であります!さらに、その男性からの送迎が始まりました。
--それを知りながらも、学年主任の一人である花森先生は、何の対策を講じなかった。一年生と三年生の学年主任は男性に事情を聞こうとして、実際に男性と話をしました。しかし、花森先生はそうしなかった。両親から許されているからでしょうか?いいえ。泣かされて車から降りている事実を知りながら、事なかれ主義を貫いたのであります。
卒業式典が滞りなく進んで行くなか、とうとう答辞を読むことになった。緊張している。全校生徒、先生、来賓、保護者が見守る中、名前を呼ばれて椅子から立ち上がった。
答辞の原稿を手にして、壇上へ上がった。一礼した後、軽い深呼吸をした。一つの動作の度に鼓動が跳ねて、まともに前を向けない。ここで臆するわけにはいかない。何よりも、伊吹がやったことの上書きをしたいからだ。実家の両親は笑っているだけだ。
伊吹が答辞を読んだ日にあることが起きたことで、当初予定していた原稿を読まずに、アレンジして、花森先生への嫌みがおり混ざったものになったそうだ。何があったかというと、聡太郎が花森先生から告白されたからだった。その時は伊吹と聡太郎は付き合っていた。聡太郎は花森先生にきちんと断り、大人の対応をしそうだ。伊吹がいますのでと答えたそうだ。でも、本当に彼らの後ろに伊吹がいて、全ての話を聞いていた。その20分後に卒業式が始まり、アドリブで花森先生をコケにしたわけだ。
「卒業生代表、3年A組、中山夏樹!」
「はい!」
もう一度、名前を呼ばれた、原稿を取り出す手の感覚が鈍い。この緊張感のなか、一枚目を広げた。なぜか紙の感触に違和感がある。消しゴムを使ったかのようなヨレもあった。
「……本日は、僕たち卒業生のために、心温まる卒業式を挙行していただき、誠にありがとうございます。ご出席いただきました、ご来賓、保護者の方々には、心からお礼申し上げます。……皆さまからの激励のお言葉を胸に、125名は卒業いたします。よかったことも苦しかったことも、色々なことを経験させて……」
2枚目の原稿をめくった瞬間、ぎょっとした。原稿がすり替わっていたからだ。伊吹の筆跡だった。原稿には、これを読み上げてくれ、4年前の恨みを晴らしてくれと書いてあった。伊吹が書いた原稿には、花森先生への恨みが綴られており、黒崎への嫌味も織り交ぜられていた。わが校の男子生徒が付きまとわれていたのに、何の策も講じなかったと書いてあった。このまま読むのは避けたい内容だから、何とか自分の方で読み替えることにした。こんな事態を迎えて、当初の内容を忘れてしまったからだ。
「……お世話になった先生方や、二年生の学年主任である花森先生には、兄の伊吹が大変お世話になりました。二股の暴露を物ともせず、学校へ居座り続けた勇気と精神力には、驚きを禁じ得ません。そんな花森先生の事ですから……、まずい。こほん……」
原稿にはこう書かれていた。ー-わが校の3年生の男子生徒が、レストランにて怪我を負いました。優しい男性に助けられて、怖い思いをしながらも気持ちが和らぎました。しかし、その男性は、男子生徒の素の笑顔が見たいばかりに、嫌味を言い放ちました。挑発したのです。
ーー酒に酔った男性に問題があるとはいえ、自社の経営するレストランで起きた事であります。その証拠に、経営者である男性は両親へ謝罪しました。その事実があるのにも関わらず、男子生徒は男性に嫌味を向けられた。理不尽な行為であります!さらに、その男性からの送迎が始まりました。
--それを知りながらも、学年主任の一人である花森先生は、何の対策を講じなかった。一年生と三年生の学年主任は男性に事情を聞こうとして、実際に男性と話をしました。しかし、花森先生はそうしなかった。両親から許されているからでしょうか?いいえ。泣かされて車から降りている事実を知りながら、事なかれ主義を貫いたのであります。
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