アイアンエンジェル~あの日の旋律

夏目奈緖

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 14時。

 卒業式典が無事に終了し、生徒達が教室に集まった。それぞれが卒業後の進路が決定している。来年受験を再チャレンジする生徒や、海外にある芸術系の学校へ進むクラスメイトがいる。それぞれに連絡先を交換し合って、烏龍茶で乾杯した。そして、名残惜しい気持ちを持ったままで校舎を出ると、黒崎が待ってくれていた。

「黒崎さーーん。おまたせ!」
「お疲れ様。膝の怪我はどうだ?アザになっているだろう」
「まだ痛いけど、大丈夫。ええ?黒崎さーん。抱っこしなくて構わないってば!」
「俺達のせいだ。お義父さん達にも恥をかかせた」
「伊吹お兄ちゃんが悪いからさ……」

 これから俺達は礼拝堂に寄って帰る。両親は伊吹の首根っこを掴んで帰ったそうだ。のんびり礼拝堂へ行けるから良かった。自然と手を繋ぎ合って桜並木へ向かった。時々、景色の写真を撮っていると、黒崎から肩を抱かれて止められた。そして、写真を撮るのは帰りにしようと言われた。

「黒崎さん。もっとのんびりしようよ。写真を撮ろうよ」
「急ぐぞ。牧師さんが待ってくれている。行くぞ」
「ええ?どうして?」
「……早く来い」

 強引に肩を抱かれて、礼拝堂の鐘が鳴る方角へ向かった。歩いている間、何度も話しかけたのに、黒崎が返事すらしてくれなかった。

 とうとう諦めた頃に、礼拝堂の出入り口に到着した。今日は扉が解放されている。礼拝がないはずなのに、俺達が入ると、パイプオルガンの音色が鳴り響いた。

「黒崎さん。何かあるの?」
「行こう……」
「あ……、牧師さん……」

 手を引かれて進もうとした先には牧師さんがいた。黒崎から、今日は俺達の結婚式だと告げられた。12月の田中先生達の結婚式を見て、羨ましいと思っていた。最愛の思い出として刻むことを俺達もしたいと思っていた。でも、黒崎には言い出せずにいた。それを黒崎は知っていたのだろうか。彼の方を見上げると軽く頷かれた。そして、牧師さんから促されて前へ歩き進み、鼓動が跳ねた。両親と伊吹、万理、ママと二葉と朝陽が居たからだ。彼らが椅子に座り、俺達に笑顔と拍手を贈ってくれていた。
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