アイアンエンジェル~あの日の旋律

夏目奈緖

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 みんなの前で結婚式をするのか。いきなりのことで心の準備ができていない。でも、緊張するかと思ったのに、心の中は静かになった。厳粛なオルガンの音色が響き渡り、ステンドグラス風から太陽の光が差し込み、俺達のことを照らした。そして、牧師さんから語り掛けられた。温かい声だ。初めて礼拝へ参加した時に担当してくれた人で、讃美歌をソロで歌うことを勧めてくれたことがある。その後、先生からも勧められて歌った。あれが人前に出る第一歩になった。いい思い出だ。

「……黒崎圭一さん。あなたは、中山夏樹さんをパートナーとし、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
「……誓います」
「……中山夏樹さん。あなたは黒崎圭一さんをパートナーとし、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
「……はい。誓います」

 誓いの言葉だけでは、この感謝の気持ちを表せない。歌を捧げたいと牧師さんに声をかけると、是非とも歌ってくれと言って微笑まれた。そして、オルガン奏者さんへ声をかけて、演奏を始めてもらった。俺は何を歌おうか考えて、初めてみんなの前でソロで歌った時の楽曲を選んだ。

 一番前に立ち、みんながいる方向を眺めた。何度か深呼吸をした後、オルガンが旋律を奏で始めた。もう一度、浅い呼吸をした後、礼拝堂内に響き渡らせたいと思いながら、歌声をあげた。

「空に……」

 最後の歌詞を歌った後、すっと天井に吸い込まれる感覚があった。そして、その後、午後の日差しが差し込んできて、ステンドグラス越しに目の前の光景に色が生まれた。ステンドグラスの色だ。とても綺麗だと思った。

「あ……。みんな……」

 列席しているのは6人だけだと思っていたのに、いつの間にか観客が増えていた。クラスメイト達だった。彼らから拍手を贈られて、胸の奥が熱くなった。今日の日が最愛の思い出となりますように。その願いを込めて、次の曲を選んだ。心のドアだ。歌い終えた時、沢山の拍手と笑顔をもらい、感極まった気持ちで一礼した。

 3年前のあの日、唇を噛みしめて正門を入った。今日は笑顔で正門を出られるだろう。俺は生涯のパートナーと手を取り合い、しっかりと手を繋いで正門を出た。

 振り返ると下級生から手を振られていた。また遊びにくるよ!と言った。そして、大きく手を振り返すことで、ありがとうという気持ちを伝えた。
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