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バルコニーに出ると、ひんやりした風が吹き込んできた。さすがに夜中は気温が下がっている。ここでも黒崎の過保護ぶりが発揮されて、薄手のコートを羽織らされた。そして、肩を寄せ合い、夜空を見上げた。
「まだ始まってないね。今夜は星がよく見えるよ。春の星座だよ」
「北斗七星か……」
「うん。『おおぐま座』の、シッポの部分だよ。上に浮かんでいるのが『こぐま座』。神話の中では、カリストっていう女性が身ごもったんだけど、熊に変えられてしまったんだ。男の子を産んだけど、熊の姿じゃ育てられなくてね。女性は森で住むようになった。……子供の名前はアルカス。女性が成長したアルカスを見て抱きしめようとしたけど、アルカスは熊に襲われていると勘違いしたんだ。……お母さんだと知らずに槍で突こうとしたところを、神様が阻止したんだよ。……その後、空に上げられて星座になった。夜空では一緒に居られるんだよ」
「成長した息子のことが分かったのか……」
「うん。お母さんが言っていたよ。面影を追いかけているものだってさ」
「そうか……」
「黒崎さーーん」
「どうした?」
「黒崎さーーん」
「どうした?」
「呼んでみただけ」
「だったら呼ぶな」
「用がないと呼んだら駄目なわけ?」
「何かあったのかと心配になるからだ」
真面目な顔を見て、胸がキュンと痛くなった。こういう人だ。俺のことを考えてくれている。意地悪で偉そうであり、優しい人だ。改めて実感して、惚れ直してしまった。
二人で夜空を眺めていると、さらに月が欠けていった。そろそろ最大の欠けの時間だ。
「黒崎さん。月食の最大だよー」
「ああ、きたぞ。4分の1ぐらいの欠けだな」
「今年の9月は、皆既月食があるよ。外へ出かけようよ」
今夜のように、バルコニーで眺めてもいいと思った。一緒に居られるなら楽しいに決まっている。このまま眺めていたかったが、俺がクシャミをしたことで、お開きになった。今度は俺の方が部屋の中に連れて行かれた。寝室の窓から月を眺めようと言いながら。こうして夜が更けていった。
「まだ始まってないね。今夜は星がよく見えるよ。春の星座だよ」
「北斗七星か……」
「うん。『おおぐま座』の、シッポの部分だよ。上に浮かんでいるのが『こぐま座』。神話の中では、カリストっていう女性が身ごもったんだけど、熊に変えられてしまったんだ。男の子を産んだけど、熊の姿じゃ育てられなくてね。女性は森で住むようになった。……子供の名前はアルカス。女性が成長したアルカスを見て抱きしめようとしたけど、アルカスは熊に襲われていると勘違いしたんだ。……お母さんだと知らずに槍で突こうとしたところを、神様が阻止したんだよ。……その後、空に上げられて星座になった。夜空では一緒に居られるんだよ」
「成長した息子のことが分かったのか……」
「うん。お母さんが言っていたよ。面影を追いかけているものだってさ」
「そうか……」
「黒崎さーーん」
「どうした?」
「黒崎さーーん」
「どうした?」
「呼んでみただけ」
「だったら呼ぶな」
「用がないと呼んだら駄目なわけ?」
「何かあったのかと心配になるからだ」
真面目な顔を見て、胸がキュンと痛くなった。こういう人だ。俺のことを考えてくれている。意地悪で偉そうであり、優しい人だ。改めて実感して、惚れ直してしまった。
二人で夜空を眺めていると、さらに月が欠けていった。そろそろ最大の欠けの時間だ。
「黒崎さん。月食の最大だよー」
「ああ、きたぞ。4分の1ぐらいの欠けだな」
「今年の9月は、皆既月食があるよ。外へ出かけようよ」
今夜のように、バルコニーで眺めてもいいと思った。一緒に居られるなら楽しいに決まっている。このまま眺めていたかったが、俺がクシャミをしたことで、お開きになった。今度は俺の方が部屋の中に連れて行かれた。寝室の窓から月を眺めようと言いながら。こうして夜が更けていった。
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