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午前10時。
これから黒崎製菓の役員就任式典が開かれる。招待された者は、社内、社外の関係者、取引先という顔ぶれだ。壇上には父が立っている。
「……弊社の定時株主総会、取締役会におきまして役員が選任され、それぞれ就任いたしました。つきましては、この新陣容をもちまして……」
社長挨拶の後、今回交代する新旧の役員が紹介された。新しい執行役員の経歴が紹介された後、マイクの前に立った。就任のあいさつをするためだ。俺の新しいポストは、常務取締役兼営業企画部長だ。壇上に上がり、出席者を前に、挨拶を始めた。
「この度、常務取締役を命じられました、黒崎圭一です。培った経験と知識を生かし……。歴戦の方々ばかりではありますが、怯むことなく、より良いものにしていきたく……。 今後ともよろしくお願い致します」
会場内から拍手が送られた。秘書時代に世話になった、数名の姿を見つけた。見る度に悪態をついていた頃が懐かしい。今では仲間になった。ここに到着した時、ロビーで迎えてもらえた。
(仲間だと認められたのか。俺もそう思っている……)
就任式が終わり、次々と役員達から親しみを持って声を掛けられた。就任披露パーティーの話題を話し、食事の誘いを受けた。穏やかで簡潔な会話の中には、燃えるような視線も感じた。
(3年後だ。親父を海外へ放り出してやる。今夜は唐揚げか。ビールが飲みたい……)
会場内には黒崎製菓グループの企業の者達がいる。その中の一つが、広告業のR&W社だ。晴海兄さんが役員を務めている。今日の式典には出席していないようだ。晴海兄さんはR&W社内での評判が悪いらしい。無理難題を押し付ける役員だと言われている。そう広まっているが、全てが真実ではないだろう。見えないトラップが仕掛けられ、心を許せるものがいない状況ではないだろうか。
自分のことを振り返った。この黒崎製菓で秘書を経験した後、ある海外の会社を任されたことがある。その際には、晴海兄さんと似たような状況があった。晴海兄さんと懐かしい思い出を話し合いたいが、どうやら俺とは向き合うことが無いようだ。子供時代の思い出のなか、笑顔を向け合ったことなど、一度もない。夏樹に向けた言葉を許すことはない。わだかまりが増していく一方だ。しかし、晴海兄さんとは話す必要があると感じている。
するとその時だ。知り合いから声を掛けられた。田所専務だ。彼女は俺が秘書時代に世話になった人で、俺を見て、驚いていた。印象が変わったからだそうだ。
「黒崎常務、お久しぶりです」
「田所専務。お世話になります」
「今日はいい顔をしているわね」
「ありがとうございます」
田所専務に笑顔を返すと、立派になったわねと褒められた。まるで子供扱いだ。自然と笑顔が浮かび、新体制メンバー同士として握手を交わした。そして、この企業での新しいスタートを切った。
これから黒崎製菓の役員就任式典が開かれる。招待された者は、社内、社外の関係者、取引先という顔ぶれだ。壇上には父が立っている。
「……弊社の定時株主総会、取締役会におきまして役員が選任され、それぞれ就任いたしました。つきましては、この新陣容をもちまして……」
社長挨拶の後、今回交代する新旧の役員が紹介された。新しい執行役員の経歴が紹介された後、マイクの前に立った。就任のあいさつをするためだ。俺の新しいポストは、常務取締役兼営業企画部長だ。壇上に上がり、出席者を前に、挨拶を始めた。
「この度、常務取締役を命じられました、黒崎圭一です。培った経験と知識を生かし……。歴戦の方々ばかりではありますが、怯むことなく、より良いものにしていきたく……。 今後ともよろしくお願い致します」
会場内から拍手が送られた。秘書時代に世話になった、数名の姿を見つけた。見る度に悪態をついていた頃が懐かしい。今では仲間になった。ここに到着した時、ロビーで迎えてもらえた。
(仲間だと認められたのか。俺もそう思っている……)
就任式が終わり、次々と役員達から親しみを持って声を掛けられた。就任披露パーティーの話題を話し、食事の誘いを受けた。穏やかで簡潔な会話の中には、燃えるような視線も感じた。
(3年後だ。親父を海外へ放り出してやる。今夜は唐揚げか。ビールが飲みたい……)
会場内には黒崎製菓グループの企業の者達がいる。その中の一つが、広告業のR&W社だ。晴海兄さんが役員を務めている。今日の式典には出席していないようだ。晴海兄さんはR&W社内での評判が悪いらしい。無理難題を押し付ける役員だと言われている。そう広まっているが、全てが真実ではないだろう。見えないトラップが仕掛けられ、心を許せるものがいない状況ではないだろうか。
自分のことを振り返った。この黒崎製菓で秘書を経験した後、ある海外の会社を任されたことがある。その際には、晴海兄さんと似たような状況があった。晴海兄さんと懐かしい思い出を話し合いたいが、どうやら俺とは向き合うことが無いようだ。子供時代の思い出のなか、笑顔を向け合ったことなど、一度もない。夏樹に向けた言葉を許すことはない。わだかまりが増していく一方だ。しかし、晴海兄さんとは話す必要があると感じている。
するとその時だ。知り合いから声を掛けられた。田所専務だ。彼女は俺が秘書時代に世話になった人で、俺を見て、驚いていた。印象が変わったからだそうだ。
「黒崎常務、お久しぶりです」
「田所専務。お世話になります」
「今日はいい顔をしているわね」
「ありがとうございます」
田所専務に笑顔を返すと、立派になったわねと褒められた。まるで子供扱いだ。自然と笑顔が浮かび、新体制メンバー同士として握手を交わした。そして、この企業での新しいスタートを切った。
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