アイアンエンジェル~あの日の旋律

夏目奈緖

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 聡太郎が着替えを済ませて戻って来た後、大学の話題が出た。あのドイツ語クラスのことだ。北添達から喧嘩を売られて、クラスの中がギクシャクしていたけれど、並川さんの話だと、もうすぐで終わりを迎えるだろうということだ。定期試験前の団結が必要になり、この間のような雰囲気ではいられなくなるそうだ。1年生と2年生の間は教養学部に所属し、3年生に上がる前に学部選択をするため、単位の取得が必要だ。試験をクリアするためには、クラスの子同士で予想問題を出し合うなどをするようになり、自然と落ち着くようになるのだと教えてくれた。
 
「3年生の学部選択の単位がかかっている。大変だよ。余裕はないと思う」
「そうだよ。4年生に上がれないなら、企業のインターンシップ参加も無理だ。開明高校の生徒は喧嘩を売られやすいと思う。余裕があると思われがちだ」

 並川さんと聡太郎の話を聞き、俺は思い当たる話を思い出した。田中先生から習ったことだ。

「開明高校の生徒は、先生からこう習うんだ。みんな頑張っているから、校内のテストで上位を狙うのは難しいって。テストの順位では負けたけど、自分はそれだけじゃないっていう発想が大事だって教えてもらったよ。芸術面で頑張ろうって思うようになるとかさ。うちの伊吹お兄ちゃんの場合は、人をおちょくる方法を研究していたんだ」

 大学に入り、今までなら気にもしなかったことに過敏になっている。人からどう見られているのだろう?この言い方で良かったのか?と考えるようになってしまった。でも、このまま沈んでいられない。前向きに進んでいかなければならないと思っている。

(悠人がまだ沈んでいるなあ。何か頼もうかな……)

 さっそく追加オーダーをすることにした。悠人に声をかけると、彼も頼みたいものがあったようで、メニューを見始めた。そして、彼がオーダーの声を上げた。

「ソフトクリームとプリンを下さーーい!」
「おおーー。元気が出たな!」
「よかったーー」
「夏樹。何かあったら俺に言えよ!」

 悠人の元気が出てきた。顔を上げてくれて、笑ってくれた。初日から俺は悠人のことを頼りにしている状態だ。俺も頼りにされたいと思っていると、藤沢が、いいなあと言い出した。そして、俺達と同じ大学が良かったと言った。さらに、俺と悠人がソフトクリームとプリンを食べ始めると、また藤沢から羨ましがられて、メンバーから笑いが起きた。

(なるほど。気にせずに、笑っていればいいのか……)

 俺が笑っていると、悠人がホッとした顔をした。さらに元気が出たそうだ。こんなに喜んでくれるなら、いっぱい笑おう。心からそう思った。
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