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18-1 夏樹・黒崎家
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4月27日、土曜日。午前10時。
今日はお義父さんの家へ遊びに行く日だ。リフォーム工事中の新居にも入れる。ゴールデンウイーク期間だから工事が休みだ。ちょうどよかったと思った。工事の邪魔にならずに済む。でも、まだ危ないからと黒崎が言うから、一階だけ入らせてもらうことになった。
今日は庭も見られる。ある程度は整えていたものの、人が住んでいない分、うっそうとした森のようになっていたそうだ。それを整えて、歩きやすい庭にすると聞いている。何にかもがありがたい。ここまでしてもらえて驚いた。
早く見たいと思って、わくわくしながら黒崎の車に乗り込んだ。それなのに、公園の脇に車を停めて、黒崎がキスをしてきた。黒崎は連休前で仕事が忙しく、会食が立て続けに入った。俺の方はバンド練習が始まり、学祭の手伝いをやっていた。農学部の分で、鉢植えの整理だ。疲れて帰ったから、イチャついていなかった。たしか5日間ぐらいだ。だから、早くイチャつきたいのだと、黒崎が言った。
「黒崎さん。ここは外だよ……。マンションの人しか来ないけど。んん……」
「最長記録だ。何日も何もしていない」
「今夜まで我慢してよ。キスぐらいはしただろ。俺だって……」
俺の方も寂しかった。さすがに遅くまで起きていられなくて、夜食だけ用意して寝ていた。朝起きたら黒崎がベッドにいるけれど、出勤と通学の支度を始めるから、あまり話ができてなかった。でも、ラインや電話、朝ごはんの時間は話をした。それでも寂しいという気持ちはお互いに同じだと思う。
黒崎の手が熱くない。普段通りの温かさだ。つまりは俺の反応を見て遊んでいるということだ。こっちは翻弄されているのに。軽いキスをして頬を舐めて、首筋へ吸いつかれた。そして、身じろぐたびに笑い声を立てられて、Tシャツの中に手を入れられた。優しい指が肌をたどり、声が漏れてしまった。そういう俺の反応を見て、黒崎が笑った。今から出発するし、途中でスーパーに寄って買い出しもするのに、今から喧嘩をしたくない。
「……誰にも連絡先を聞かれていないだろうな?学祭の準備中だ」
「大丈夫だよ。付き合いが悪い奴って言われているもん。あんたの束縛の強さにドン引きして、納得したよーって言ってくれる子がいたよ。コンパぐらいしか集まっていないみたいだけど。危ない目にも遭わないよ~」
通学だけは電車を使う約束だ。そもそも寄り道をしないし、出かけるのはバンドの練習場所の音楽スタジオぐらいだ。スーパーの買い物は宅配を頼んでいる。まだ森本や悠人達を家に呼べていない。それぞれ忙しいけれど、ゴールデンウイーク明けになれば落ち着くだろう。
「……庭が気に入るといいが。まだ作業途中だ。イメージ程度しか分からない」
「あのCGで分かるよ。すごく素敵な場所だよ。洗濯物干しテラス、煉瓦道、いくつも花壇があるよ。玄関の脇には、何を置こうか?家庭菜園の畑も楽しみだよ~」
「畑づくりを自分でやるのか?」
「それだけはね。悠人が手伝ってくれるんだ。おばあちゃんと住んでいた家が、郊外の方なんだって。田んぼの周りで遊んでいたそうだよ。走り回りたがっているよ」
「そうか。くつろいでもらいたい」
「早瀬さんと食事に行けそう?誘ってくれた?」
「誘ってある。……畑の話をしたら、手伝うと言っていた。興味があるそうだ。その時、手作りの料理を持って来てくれるそうだ。音楽の話もすると良い。楽しみにしていると言っていた」
「俺も楽しみだよ~」
あれから早瀬さんとは、プライベートでの付き合いを始めた。黒崎とは大学時代の先輩後輩という関係で、プライベートでは下の名前で呼び合う仲だ。俺と早瀬さんは音楽の好みも共通するものがある。ハードロックを聴いているし、ギターも弾くことができるそうだ。でも、今やっている楽器はヴァイオリンだけになったそうだ。二つやるのは時間がなくて、という話だった。
「早瀬の話ばかりをするな。妬いていない」
「あのねえ……。あ、お義父さんからだよ。ラインをするようになったんだ。冷やっこが食べたいって。スーパーへ寄ってね」
「そうか……。父がねだっているのか」
「うん。俺は嬉しいよ」
今日は黒崎が実家のダイニングで、10年ぶりにご飯を食べることになった。黒崎の思い出が良いものに変わるといい。そう思いながら、お義父さんの家の近くのスーパーへ向かった。
今日はお義父さんの家へ遊びに行く日だ。リフォーム工事中の新居にも入れる。ゴールデンウイーク期間だから工事が休みだ。ちょうどよかったと思った。工事の邪魔にならずに済む。でも、まだ危ないからと黒崎が言うから、一階だけ入らせてもらうことになった。
今日は庭も見られる。ある程度は整えていたものの、人が住んでいない分、うっそうとした森のようになっていたそうだ。それを整えて、歩きやすい庭にすると聞いている。何にかもがありがたい。ここまでしてもらえて驚いた。
早く見たいと思って、わくわくしながら黒崎の車に乗り込んだ。それなのに、公園の脇に車を停めて、黒崎がキスをしてきた。黒崎は連休前で仕事が忙しく、会食が立て続けに入った。俺の方はバンド練習が始まり、学祭の手伝いをやっていた。農学部の分で、鉢植えの整理だ。疲れて帰ったから、イチャついていなかった。たしか5日間ぐらいだ。だから、早くイチャつきたいのだと、黒崎が言った。
「黒崎さん。ここは外だよ……。マンションの人しか来ないけど。んん……」
「最長記録だ。何日も何もしていない」
「今夜まで我慢してよ。キスぐらいはしただろ。俺だって……」
俺の方も寂しかった。さすがに遅くまで起きていられなくて、夜食だけ用意して寝ていた。朝起きたら黒崎がベッドにいるけれど、出勤と通学の支度を始めるから、あまり話ができてなかった。でも、ラインや電話、朝ごはんの時間は話をした。それでも寂しいという気持ちはお互いに同じだと思う。
黒崎の手が熱くない。普段通りの温かさだ。つまりは俺の反応を見て遊んでいるということだ。こっちは翻弄されているのに。軽いキスをして頬を舐めて、首筋へ吸いつかれた。そして、身じろぐたびに笑い声を立てられて、Tシャツの中に手を入れられた。優しい指が肌をたどり、声が漏れてしまった。そういう俺の反応を見て、黒崎が笑った。今から出発するし、途中でスーパーに寄って買い出しもするのに、今から喧嘩をしたくない。
「……誰にも連絡先を聞かれていないだろうな?学祭の準備中だ」
「大丈夫だよ。付き合いが悪い奴って言われているもん。あんたの束縛の強さにドン引きして、納得したよーって言ってくれる子がいたよ。コンパぐらいしか集まっていないみたいだけど。危ない目にも遭わないよ~」
通学だけは電車を使う約束だ。そもそも寄り道をしないし、出かけるのはバンドの練習場所の音楽スタジオぐらいだ。スーパーの買い物は宅配を頼んでいる。まだ森本や悠人達を家に呼べていない。それぞれ忙しいけれど、ゴールデンウイーク明けになれば落ち着くだろう。
「……庭が気に入るといいが。まだ作業途中だ。イメージ程度しか分からない」
「あのCGで分かるよ。すごく素敵な場所だよ。洗濯物干しテラス、煉瓦道、いくつも花壇があるよ。玄関の脇には、何を置こうか?家庭菜園の畑も楽しみだよ~」
「畑づくりを自分でやるのか?」
「それだけはね。悠人が手伝ってくれるんだ。おばあちゃんと住んでいた家が、郊外の方なんだって。田んぼの周りで遊んでいたそうだよ。走り回りたがっているよ」
「そうか。くつろいでもらいたい」
「早瀬さんと食事に行けそう?誘ってくれた?」
「誘ってある。……畑の話をしたら、手伝うと言っていた。興味があるそうだ。その時、手作りの料理を持って来てくれるそうだ。音楽の話もすると良い。楽しみにしていると言っていた」
「俺も楽しみだよ~」
あれから早瀬さんとは、プライベートでの付き合いを始めた。黒崎とは大学時代の先輩後輩という関係で、プライベートでは下の名前で呼び合う仲だ。俺と早瀬さんは音楽の好みも共通するものがある。ハードロックを聴いているし、ギターも弾くことができるそうだ。でも、今やっている楽器はヴァイオリンだけになったそうだ。二つやるのは時間がなくて、という話だった。
「早瀬の話ばかりをするな。妬いていない」
「あのねえ……。あ、お義父さんからだよ。ラインをするようになったんだ。冷やっこが食べたいって。スーパーへ寄ってね」
「そうか……。父がねだっているのか」
「うん。俺は嬉しいよ」
今日は黒崎が実家のダイニングで、10年ぶりにご飯を食べることになった。黒崎の思い出が良いものに変わるといい。そう思いながら、お義父さんの家の近くのスーパーへ向かった。
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