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緩やかな坂の住宅街を進んで行くと、大きな門が見えた。お義父さんの家に到着した。敷地内には沢山の木がある。その門から入ると、静まり返った庭が広がっていた。これから3人で暮らす。家同士は離れているけれど、敷地内にいるから、寂しいというお義父さんの気分が違うだろう。
車から降りると、樹木の匂いが鼻をくすぐった。池があり、草花が生えている。生い茂っている感じが好きだ。お義父さんの希望で、完璧には整えていないそうだ。
「うーん、空気がいいなあ~。駅から徒歩10分は便利だね。自転車で行きたいな」
「危ないからやめろ。坂で転ぶに決まっている。大した距離じゃないだろう?」
「気持ち良さそうなのに。アンが歩きたそうだよ。だめかな?」
「……まだ玄関周りにしておこう。家の中は自由に走らせる」
黒崎から促されて庭の中を歩き始めた。すると、大きな建物が見えてきた。お義父さんの家だ。お義父さんの他にはお手伝いさんが2人居て、昼間と夜間で交代するそうだ。それ以外は人がいない。カブトムシも棲んでいないというのは、大袈裟では無さそうだ。
「着いたぞ。玄関を開けてみろ」
「うん。こんにちはーー」
インターフォンを押さなくても構わないそうだ。さっそく玄関を入ると、広間のような場所が広がっていた。大きな花瓶があり、花が活けられている。白い花だった。奥から出てきたのは、お手伝いさんの山崎さんだ。黒崎の大学時代を知っている人だ。母よりも年上で、とても面白い人だそうだ。
「お帰りなさいませ」
「ただいま」
「こんにちはー。お義父さんがいない。出かけているのかな?」
「リビングにいらっしゃいますよ」
このまま待っていると、お義父さんが出て来た。大あくびをしている。寝ていたのだろうか。持っている雑誌が逆さまになっている。
「ああ、来たのか……」
「寝ていたのか?」
「うたた寝だ。夏樹ちゃん、いらっしゃい」
「本当に寝ていたのか?」
「……寝ていた」
「親父。雑誌を読んでいたんだろう?」
「ああ。読んでいて眠気がきた」
「待ちくたびれてか?」
「お前のことは待っていない。待っていたのは夏樹ちゃんだ」
そう言い返して、お義父さんが俺の手を引いた。脇に挟んだ雑誌は見たことがある表紙だった。黒崎のインタビュー記事が載った雑誌のバックナンバーだ。素直になれないことが丸わかりだ。ここで笑うと気の毒だから、気が付かないふりをして、リビングへ入った。
車から降りると、樹木の匂いが鼻をくすぐった。池があり、草花が生えている。生い茂っている感じが好きだ。お義父さんの希望で、完璧には整えていないそうだ。
「うーん、空気がいいなあ~。駅から徒歩10分は便利だね。自転車で行きたいな」
「危ないからやめろ。坂で転ぶに決まっている。大した距離じゃないだろう?」
「気持ち良さそうなのに。アンが歩きたそうだよ。だめかな?」
「……まだ玄関周りにしておこう。家の中は自由に走らせる」
黒崎から促されて庭の中を歩き始めた。すると、大きな建物が見えてきた。お義父さんの家だ。お義父さんの他にはお手伝いさんが2人居て、昼間と夜間で交代するそうだ。それ以外は人がいない。カブトムシも棲んでいないというのは、大袈裟では無さそうだ。
「着いたぞ。玄関を開けてみろ」
「うん。こんにちはーー」
インターフォンを押さなくても構わないそうだ。さっそく玄関を入ると、広間のような場所が広がっていた。大きな花瓶があり、花が活けられている。白い花だった。奥から出てきたのは、お手伝いさんの山崎さんだ。黒崎の大学時代を知っている人だ。母よりも年上で、とても面白い人だそうだ。
「お帰りなさいませ」
「ただいま」
「こんにちはー。お義父さんがいない。出かけているのかな?」
「リビングにいらっしゃいますよ」
このまま待っていると、お義父さんが出て来た。大あくびをしている。寝ていたのだろうか。持っている雑誌が逆さまになっている。
「ああ、来たのか……」
「寝ていたのか?」
「うたた寝だ。夏樹ちゃん、いらっしゃい」
「本当に寝ていたのか?」
「……寝ていた」
「親父。雑誌を読んでいたんだろう?」
「ああ。読んでいて眠気がきた」
「待ちくたびれてか?」
「お前のことは待っていない。待っていたのは夏樹ちゃんだ」
そう言い返して、お義父さんが俺の手を引いた。脇に挟んだ雑誌は見たことがある表紙だった。黒崎のインタビュー記事が載った雑誌のバックナンバーだ。素直になれないことが丸わかりだ。ここで笑うと気の毒だから、気が付かないふりをして、リビングへ入った。
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