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12時半。
これからダイニングで昼ご飯を食べるところだ。ここで作った物は、冷やっこと味噌汁だけだ。これが食べたかったと言って、お義父さんが喜んでくれた。美味しいかつお節をもらってよかったと思った。テーブルには他にも料理が並んでいる。お義父さんがシェフに頼んで作って貰った料理だ。それらを食べながら、美味しさをかみしめた。
「2人が来るから用意した料理だ」
「黒崎さんが大満足のボリュームだね」
お義父さんが用意してくれたのは、蒸した海老と野菜、白身魚を焼いてソースを掛けたもの、スープだ。小鉢も並んでいる。黒崎には、分厚いステーキが用意された。お義父さんも食べている。黒崎の方は、呆れ顔になっている。お義父さんが俺に寄り添っているからだ。
「魚料理が好きだね。あっさりしたメニューにした。どうだい?重くないかな?」
「どれも美味しいよ」
「そうか。これは箸が進んでいないようだね?エビは好きじゃなかったのか?」
「ううん。大好きだよーー」
「夏樹は小食だ。次から次へと詰め込むな」
「そうか……」
お義父さんから料理を進められている。そして、食べているところを見つめられている。噛んで飲み込んだのを確認してから、次の料理を進められている。
(こういう事をしたかったんだな。小さい頃に食べさせてもらった時みたいだ……)
黒崎からは、少々のことは付き合ってやってくれと頼まれている。俺もそうすると決めている。初めて会った時は怖く感じた印象が柔らかくなり、寂しそうだった目が、明るく変化している。
「お腹が張ったのかい?デザートはどうする?無理はしない方がいいぞ」
「ううん。デザートは別腹だよ。フルーツタルトが楽しみだよ」
「他にも美味しそうなものが売っていたよ。今度、一緒に買いに行こう」
「買いに行ってくれたの?」
「そうだよ。朝早くから起きているから退屈だ。カンテールという店だ。お向かいの遠藤さんから聞いた。帰りに紹介する。……20年来の付き合いのご夫婦だ。圭一の小さい時も知っている。……IKUエンタテイメントを知っているかい?」
「うん、知っているよ。好きなバンドがいる、レコード会社だよ。ベテルギウスだよ。心のドアを歌った勅使河原さんも同じ会社だよ」
「遠藤さんのご主人の方が、そのレコード会社の代表を務めている。夏樹ちゃんの歌を聴いてもらったんだよ。とても上手だと褒めていた」
それを聞き、驚いた。開明高校の創立記念日に歌った動画があるけれど、お義父さんには見せていない。さすがに恥ずかしいからだ。黒崎が見せてくれたそうだ。
「黒崎さん。恥ずかしいから、先に言ってよ」
「うっかりしていた。……俺もまだ観ていなかったが」
「そっか、忙しかったもんね」
「圭一。すまない」
「いや、構わない。……デザートに移らないのか?今日は特別だ」
「お言葉に甘えるよ。もう少し食べるよ」
食事に行く店の話をしていると、黒崎とお義父さん言い合いを始めた。もっと話せるようになるといい。邪魔をしないように静かに食べた。でも、またすぐにお義父さんからの世話焼きが始まり、黒崎が眉間に皺を寄せていた。夏樹を独占するなと言いながら。
「夏樹ちゃんとは、60歳差だ。つまりは十二支が同じだ。気が合う」
「まとわりついているだけだろう」
「十二支が同じだ」
「……何度も言うな」
「黒崎さん、俺の十二支って何かな?」
「……知らないのか?」
「うん。何だったかな?家族の分は知っているけどね」
「お前は兎年だ。ウサギエプロンの理由はそれだ」
「親父っぽい冗談だよね~」
まるで実家の父のようだ。呆れた目を向けていると、お義父さんが笑った。こういう表情は、親子そっくりだと思う。
「圭一、年を取ったな?」
「……うるさい」
「黒崎さんの十二支は?トラ?タツ?」
「圭一はイノシシだよ」
「伊吹お兄ちゃんと同じだよ。12歳差だもんね。気が合うんじゃないの?」
「……それはない」
黒崎が言い切った後、お義父さんとの言い合いを始めてしまった。取り合うのが馬鹿らしいから、キッチンへ行った。
デザートのフルーツタルトを運んで戻ると、まだ続いていた。椅子に座って食べ始めてもだ。このままでは食べ始めることが出来ないから、雷を落とすことにした。
「黒崎さんは珈琲とカステラ。お義父さんはお饅頭。食べようよ~」
「だいだいお前はな……」
「なんだと?」
「2人とも!!デザートだよ!!」
目の前の親子が口を閉じた。無事に食べ始めた時に、お義父さんが黒崎に声を掛けた。後で書斎へ来てくれと言っていた。それは真面目な口調だった。何なのかは、俺は聞かないようにした方が良さそうだ。立ち入れない話だってあるはずだ。黙って食べていると、すぐまた言い合いが復活してしまい、もう一度雷を落とした。
これからダイニングで昼ご飯を食べるところだ。ここで作った物は、冷やっこと味噌汁だけだ。これが食べたかったと言って、お義父さんが喜んでくれた。美味しいかつお節をもらってよかったと思った。テーブルには他にも料理が並んでいる。お義父さんがシェフに頼んで作って貰った料理だ。それらを食べながら、美味しさをかみしめた。
「2人が来るから用意した料理だ」
「黒崎さんが大満足のボリュームだね」
お義父さんが用意してくれたのは、蒸した海老と野菜、白身魚を焼いてソースを掛けたもの、スープだ。小鉢も並んでいる。黒崎には、分厚いステーキが用意された。お義父さんも食べている。黒崎の方は、呆れ顔になっている。お義父さんが俺に寄り添っているからだ。
「魚料理が好きだね。あっさりしたメニューにした。どうだい?重くないかな?」
「どれも美味しいよ」
「そうか。これは箸が進んでいないようだね?エビは好きじゃなかったのか?」
「ううん。大好きだよーー」
「夏樹は小食だ。次から次へと詰め込むな」
「そうか……」
お義父さんから料理を進められている。そして、食べているところを見つめられている。噛んで飲み込んだのを確認してから、次の料理を進められている。
(こういう事をしたかったんだな。小さい頃に食べさせてもらった時みたいだ……)
黒崎からは、少々のことは付き合ってやってくれと頼まれている。俺もそうすると決めている。初めて会った時は怖く感じた印象が柔らかくなり、寂しそうだった目が、明るく変化している。
「お腹が張ったのかい?デザートはどうする?無理はしない方がいいぞ」
「ううん。デザートは別腹だよ。フルーツタルトが楽しみだよ」
「他にも美味しそうなものが売っていたよ。今度、一緒に買いに行こう」
「買いに行ってくれたの?」
「そうだよ。朝早くから起きているから退屈だ。カンテールという店だ。お向かいの遠藤さんから聞いた。帰りに紹介する。……20年来の付き合いのご夫婦だ。圭一の小さい時も知っている。……IKUエンタテイメントを知っているかい?」
「うん、知っているよ。好きなバンドがいる、レコード会社だよ。ベテルギウスだよ。心のドアを歌った勅使河原さんも同じ会社だよ」
「遠藤さんのご主人の方が、そのレコード会社の代表を務めている。夏樹ちゃんの歌を聴いてもらったんだよ。とても上手だと褒めていた」
それを聞き、驚いた。開明高校の創立記念日に歌った動画があるけれど、お義父さんには見せていない。さすがに恥ずかしいからだ。黒崎が見せてくれたそうだ。
「黒崎さん。恥ずかしいから、先に言ってよ」
「うっかりしていた。……俺もまだ観ていなかったが」
「そっか、忙しかったもんね」
「圭一。すまない」
「いや、構わない。……デザートに移らないのか?今日は特別だ」
「お言葉に甘えるよ。もう少し食べるよ」
食事に行く店の話をしていると、黒崎とお義父さん言い合いを始めた。もっと話せるようになるといい。邪魔をしないように静かに食べた。でも、またすぐにお義父さんからの世話焼きが始まり、黒崎が眉間に皺を寄せていた。夏樹を独占するなと言いながら。
「夏樹ちゃんとは、60歳差だ。つまりは十二支が同じだ。気が合う」
「まとわりついているだけだろう」
「十二支が同じだ」
「……何度も言うな」
「黒崎さん、俺の十二支って何かな?」
「……知らないのか?」
「うん。何だったかな?家族の分は知っているけどね」
「お前は兎年だ。ウサギエプロンの理由はそれだ」
「親父っぽい冗談だよね~」
まるで実家の父のようだ。呆れた目を向けていると、お義父さんが笑った。こういう表情は、親子そっくりだと思う。
「圭一、年を取ったな?」
「……うるさい」
「黒崎さんの十二支は?トラ?タツ?」
「圭一はイノシシだよ」
「伊吹お兄ちゃんと同じだよ。12歳差だもんね。気が合うんじゃないの?」
「……それはない」
黒崎が言い切った後、お義父さんとの言い合いを始めてしまった。取り合うのが馬鹿らしいから、キッチンへ行った。
デザートのフルーツタルトを運んで戻ると、まだ続いていた。椅子に座って食べ始めてもだ。このままでは食べ始めることが出来ないから、雷を落とすことにした。
「黒崎さんは珈琲とカステラ。お義父さんはお饅頭。食べようよ~」
「だいだいお前はな……」
「なんだと?」
「2人とも!!デザートだよ!!」
目の前の親子が口を閉じた。無事に食べ始めた時に、お義父さんが黒崎に声を掛けた。後で書斎へ来てくれと言っていた。それは真面目な口調だった。何なのかは、俺は聞かないようにした方が良さそうだ。立ち入れない話だってあるはずだ。黙って食べていると、すぐまた言い合いが復活してしまい、もう一度雷を落とした。
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