アイアンエンジェル~あの日の旋律

夏目奈緖

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 黒崎と2人で新居へ向かっている。木々の木漏れ日と、涼しい風が気持ちいい。お義父さんは、アンと散歩をしている。リビングのテラスや、花壇周辺を探索するそうだ。

「やっと二人きりになれた」
「いつもそうじゃん。黒崎さんっ、こんな場所で……」
「木曜も金曜も会食だった。さすがに限界だ」

 背後から抱きつかれて、首筋へ顔を埋められた。唇も息もすでに熱くなっていた。腕の強さも本気だと感じる。

 どんどん奥へ進んで行った。池のそばを通り過ぎ、花が咲き乱れた場所へやって来た。そして、大きな木の幹に身体を押し付けられた。

「ここは誰も来ない」
「見えるよーー」
「足音で分かる。その時はやめる」
「ん……っ」

 強引なキスに、文句の言葉を飲み込まれてしまった。深く唇を合わせて絡められた舌が熱くて、こういうキスは久しぶりだ。背中が痛くなって息を詰めると、すぐに力が弱くなった。

「すまない。加減ができなかった」
「平気だよ。すごく嬉しい?ここへ帰って来たから」
「閉じめておけるからだ。本気で言っている」
「まだそんなことを言っているのかよ?ばかやろう」
「お前には降参した。……ここへ引っ越して来ることが近所で広まっているそうだ。父が洋菓子店で言い回ったからだ」
「近所付き合いだろ?大丈夫だよ。高塚アイランドで培った経験が生かせるよ。あんた単独は怖いよ~」
「まだ余裕がないだろう。俺の方でしておく。前のマンションで覚えた」
「大丈夫だってば。ん、だめだって……」
「……可愛らしい」
「……ええ?」
「デザートを食べている時が限界だった」
「あ……。お前は冬眠前の動物か?って、嫌味を言ったくせに~」
「リスのようだった。可愛い意味だ」
「ほんとに?」
「本当だ。あの時に食らいつきたかった」
「黒崎さん……」

 今度は優しいキスをされた。手の甲や耳元にしたのは、理性を保つためだと苦笑していた。これから家を見に行こう、そう言いながら、手を引かれた。
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